業界ウォッチ 2018年10月22日

教員のちょっと気になる「企業ブランド価値ランキング」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今回は、「 企業ブランド価値ランキング 」を取り上げてご紹介いたします。

先日、米インターブランド社が、グローバル企業のブラン価値ランキング2018年版を公表しました(※)。2018年版の首位は、米アップル(Apple)で約24兆円(2144億ドル)と、6年連続の首位となりました。

最近の企業の勢いや消費者からのブランド支持のトレンドを知る指標としても、興味深い指標だと思います。今年は、Appleが首位となりましたが、現在どのような企業が上位に挙がっているのか、どのような企業のブランド価値が高まっているのか、実際の数字を見て確認してみたいと思います。

まず、企業ブランド価値ランキングの上位を見ると、トップが前述のAppleで2144億ドル、次いでGoogle(1555億ドル)、Amazon(1008億ドル)、Microsoft(927億ドル)、Coca-Cola(663億ドル)となっています。企業時価総額GAFAやFランキングなどでANGと言われるIT企業がトップ3を占める中、Coca-Colaといった消費財・飲料企業が上位に食い込んでいる点が興味深い点です。Coca-Colaは以前からブランド価値ランキング上位の常連企業ではありましたが、近年のテクノロジー企業ブランド全盛の時代にあって、いかにしてこの企業ブランド価値を維持しているのか、注目したいところです。

次に、ランキング上位40社の対前年比の伸び率をみてみます。

伸び率トップはAmazonで56%、次いでGucci(30%)、Loui’s Vuitton(23%)、Apple(16%)、Microsoft(16%)、Hermès(15%)と続いています。また、Chanelが今回初ランクインとなっています。一方、対前年比マイナスとなったのは、マイナス幅の大きい順に、GE(-26%)、H&M(-18%)、IBM(-8%)、Gillette(-7%)、Facebook(-6%)となっています。

このようにみると、企業ブランド価値ランキングは、最近の企業業績や株価トレンドなどが反映されている点も多く見られることが分かります。

IT大手のほかラグジュアリーブランドの企業価値が伸びていることが分かります。一方、GEやIBMなどの老舗巨大企業がデジタル社会のトレンドをとらえきれずにマイナスになっているのと、Facebookが情報流出問題といったデジタル社会の負の部分を反映している企業がマイナスとなっているのが特徴的に思います。

時代を捉えたテクノロジー企業が大きく成長し、その一方で人間の感性を捉えたラグジュアリーブランドが伸びる傾向があるといえるのではないでしょうか。そして、それに対抗しきれなかった企業・ブランドが落ち込むなど、大きな時代の流れを感じることが出来そうです。

※同調査は、海外売上比率30%超の企業対象に、財務分析、ブランドが消費者の購買意欲に与える影響などをもとに、ブランド価値を金額換算してランキング化

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)