業界ウォッチ 2020年2月10日

教員のちょっと気になる「欧州の在宅勤務率」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今週は「欧州の在宅勤務率」を取り上げてご紹介いたします。

先日、欧州統計局ユーロスタットが、欧州各国の自宅で働く人の割合に関するデータを公開しました。15~64歳の雇用者で、「常に(Usual)」自宅で働く人の割合は、EU27カ国平均で5.2%(2018年)となり、10年前の4.9%(2008年)から0.3ポイント増と、微増という結果となりました。

ワークスタイルの研究対象として、日本がよく参考にしている欧州各国ではどのくらいの割合で在宅勤務をしているのでしょうか。また、どの国が最も在宅勤務の割合が高くなっているのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。

まず、2018年のEU各国の「常に」自宅で働いている人の割合、在宅勤務率を見てみます。最も比率が高かったのはオランダの14%で、次いでフィンランド(13.3%)、ルクセンブルク(11%)、オーストリア(10%)と続きます。一方、最も比率が低いのはブルガリアの0.3%で、次いでルーマニア(0.4%)、キプロス(1.2%)、クロアチア(1.4%)と続きます。EU27カ国以外の欧州の国では、アイスランドが最も高く6.5%、最も低いのはスイスの4.1%となっています。

次に10年前の2008年からの変化を見てみます。18年の在宅勤務比率が高かった上位国オランダ、フィンランド、ルクセンブルクは、10年前と比べて在宅勤務率が高くなっていることが分かります。最も伸びが高かったのはエストニアで、2.6%(08年)から7.6%(18年)へと上昇しています。

一方、在宅勤務率が10年前よりも低くなっている国もあります。主な国としては、デンマークが10.4%(08年)から7.8%(18年)へ、ベルギーが8.8%(08年)から6.6%(18年)へ、フランスが9.8%(08年)から6.6%へと落ち込んでいます。

また、地理的分布をみると、オランダ、フィンランド、ルクセンブルク、オーストリア、デンマークなど西欧・北欧諸国の在宅勤務率が高く、ブルガリア、ルーマニア、キプロス、クロアチア、ギリシャなど東欧・南欧諸国の在宅勤務率が低いことが分かります。

こうしてみると、在宅勤務は経済的に豊かで、働き方など先進的な取り組みが行われている国での導入が進んでいることが分かります。

在宅勤務は、日本がでも大手企業などを中心に取り組みを始めています。今年のような新型コロナウイルスの拡散懸念、夏の東京オリンピック・パラリンピックでの交通混雑懸念があると、更に在宅勤務の実践が必要になる可能性が高そうです。

欧州の在宅勤務比率の高い国、オランダ、フィンランドや、在宅勤務比率が急上昇したエストニアなどを研究すると、在宅勤務導入のヒントが得られるかもしれませんね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)