業界ウォッチ 2020年9月1日

教員のちょっと気になる「世界の監視カメラ設置台数上位都市」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今週は「世界の監視カメラ設置台数上位都市」を取り上げてご紹介いたします。

先日(7月下旬)、英調査会社コンパリテックが、世界の監視カメラ設置台数上位都市に関するレポートを公開しました。同調査によると、設置台数上位20都市の内16都市が中国の都市でした。また人口1000人当たりの設置台数でみると、上位20都市の内18都市が中国の都市でした。

確かに、中国の監視カメラと顔認識AIに関する記事をよく見かけますし、それに関連して取得する画像データ量の多さから、中国がAIで先行するという記事もよく見かけます。人口の多さや、顔認識・検出に関する取り組みからすると、上位に来ることも容易に想像できます。

それでは、具体的にどの都市がどの位の監視カメラを設定しているのでしょうか。中国以外の都市では、どういった都市が上位に上がってくるのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。

まず、監視カメラ設置台数の上位都市を見てみます。最も設置台数が多いのは北京市で115万台となっています。次いで、上海市(100万台)、ロンドン/イギリス(62.8万台)、太原市/山西省(46.5万台)、デリー/インド(43万台)と続きます。

中国以外の国の都市で上位20位にランク入りしているのは、ロンドン/イギリス、デリー/インド、ハイデラバード/インド(30万台)、チェンナイ/インド(28万台)の4都市となっています。ロンドン/イギリスを除く3都市はインドの都市となっています。

ちなみに、米国ではNYが最も多く約2.5万台となっています。日本では東京が最も多く約4万台となっています。

次に人口1000人当たりの監視カメラ設置台数を見てみます。トップは太原市/山西省の119.5台となっており、次いで無錫市/江蘇省(92.1台)、ロンドン/イギリス(67.5台)、長沙市/湖南省(56.8台)と続きます。中国以外の国の都市で上位20位内にランク入りしているのは、ロンドン/イギリスと、ハイデラバード/インド(同)の2都市のみとなっています。ちなみに、米国ではロサンゼルスが最も多く5.65台/1000人となっています。日本では、東京が最も多く1.06台/1000人となっています。

こうしてみると、世界的に、中国の都市での監視カメラ導入が圧倒的に進んでいることが分かります。

監視カメラが多いと、治安面での対策が進んでいると見ることもできますが、そこに生活している人が監視される「監視社会」化していると見ることもできます。監視カメラで取得した画像データに関して、個人情報・プライバシーの取り扱いをどうするのか、政府の介入をどこまで許容するのか、各国によって変わります。

中国の場合は、個人情報・プライバシー保護の度合いが低く、政府のかかわりが強いという指摘・報道があります。その一方で、画像認識・顔認識AIが発達すると、スマートシティ化などの次の展開へと移行しやすくなる側面もありそうです。

日本は、個人情報・プライバシーを重視するのか、画像認識AI活用の為に監視カメラ設置を増やしていくのか、よく考えていく必要がありそうですね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)