旬の数字 2019年3月20日

京都離れ日本人観光客21か月連続減少



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

京都市内の主要ホテルで、日本人宿泊客の減少に歯止めがかからない状況となっているそうです。京都市観光協会と京都文化交流コンベンションビューローが2014年から市内主要ホテル(※1)を対象に行っている「外国人客宿泊状況調査」によると、京都を訪れる日本人観光客が、2017年4月~2018年12月で21か月連続前年同月比マイナスとなっています。(※2)

2018年年間ベースで見ても日本人宿泊客数は前年比9.4%減と、4年連続のマイナスとなりました。外国人宿泊客数は4年連続増加となっていますが、実は、外国人宿泊客数も含めた「総宿泊客数」は3年連続減少となっています。それだけ、日本人宿泊客数減少の影響が大きいということが分かります。

日本人観光客の減少要因として、「訪日外国人客の増加で京都の観光地や交通機関の混雑により、敬遠されている」「『京都のホテルはいつも満室』という先入観が強い」、さらに「客室価格上昇などで出張のビジネスマンが泊まりにくくなった」ことなどを指摘する声が関係者から上がっているようです。また、京都出張の際に滋賀県等に宿泊するという方も多いようです。

日本の人口が減少しているとはいえ、ここ数年の好景気、3連休の増加、働き方改革で長期休暇が取りやすくなったこと、などを考えると日本人の京都観光客が減少しているとは驚きでした。日本人の海外旅行も増えていますし、もしかすると国内でも京都以外の観光地に足が向いているのかも知れません。

一方、外国人観光客は増えているものの、インバウンド頼みは、経済情勢、外交問題、災害などの不測の事態によって一気に減少するリスクを抱えることになります。現在は、ラグビーW杯、東京オリンピック、大阪万博などのビックイベントで、日本が注目されていますが、その後もインバウンドが増え続けるという保証はありません。

そう考えると、国内観光地は、日本人観光客を確保することも重要なのではないでしょうか。京都も交通整備やルール徹底等に取り組み、日本人観光客を再び増やすような施策が必要となりそうです。

日本人観光客確保については、京都に限らず他地域にも同じことがいえます。現在、多くの自治体がインバウンドへの取り組みを積極化しています。その一方、日本人観光客の減少となると、将来的にインバウンドが減少した場合のリスクを抱えることになるものと再認識しておく必要がありそうですね。

※1 2018年12月時点で52施設対象
※2 平成 30 年(2018 年)外国人客宿泊状況調査(年間集計)について

出所:公益社団法人 京都市観光協会 ※最終アクセス 2019年3月26日
https://www.kyokanko.or.jp/kaiin/wp/wp-content/uploads/2019/03/kyoto_hotel_survey_2018_cmp_v2.pdf


執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)