BBTインサイト 2020年8月6日

イントラプレナーリーダーシップ <第1回>いま日本企業にイントラプレナーが求められている真意がわかる



講師:ピョートル・フェリクス・グジバチ(プロノイア・グループ株式会社 代表取締役社長、モティファイ株式会社 取締役)
編集/構成:mbaSwitch編集部

グローバル化が進む現在、世界ではイノベーションのスピードが速くなり、市場競争は激化の一途をたどっています。取捨選択される業界もある中、本シリーズ「イントラプレナーリーダーシップ」では、日本企業の取るべき道の一つとして、イントラプレナーシップ(企業内で起業すること)の考え方を解説していきます。

講師にお迎えしたのは、プロノイア・グループで主に経営者の戦略サポートとコンサルティングを行っているピョートル・フェリクス・グジバチ氏です。第1回目の今回は、世界で起こっている経済・産業、働き方の変化を見ながら、イントラプレナーシップの真意を深く掘り下げていきましょう。

1.イントラプレナーシップとは

イントラプレナーシップとは大手企業の中で企業内起業をすることであり、イントラプレナーとは自発的に何か0から1までの価値を生み出すような人材を指します。

皆さんはもし“ARE YOU READY TO GET FIRED?”すなわち、「クビになる準備ができているか?」という質問をされたらどうでしょうか。まず英語の質問の意味をわからない方は、英語の能力を開発せねばなりません。また自動化、アウトソーシング、クラウドソーシングが進んでいる中、現在の業務の多くは、おそらく2年後、3年後、そして5年後になくなるという可能性が非常に高いです。

2.経済、産業の変化がイントラプレナーを生み出す源泉に

かつて寒冷地の河川などで氷を切り取り、それを流通させるアイスハーベストという業界がありました。この業界に業界外のエンジニアたちが機械で氷を製造し、参入してきました。次に、冷蔵庫が開発され、現代に至っています。他業界から競争相手が業界そのものを大きく変えていった典型的な事例と言えるでしょう。

Airbnbは部屋を持つ方と部屋を借りたい方のインターネットでつながるマッチングプラットフォームです。同社をホテル業界最大手のハイアットと比較すると、10万人に近い社員数を持つホテル業界で最大規模であるハイアットより、わずか3000人程の社員数のAirbnbの方が、市場価値255億ドル(※17年11月時点)と3倍を数えます。

Airbnbのように、業界の常識を破るようなビジネスモデルを持ち、ユニコーンと称される時価総額10億ドルの規模に育ったスタートアップの共通特徴を述べます。

1)一見愚かなアイディアでビジネスモデルを作る

自分の部屋を観光客に提供し、それでお金を儲けるということは、5年10年前には非常識でした。

2)新しい行動パターン

シェアリングエコノミーのような自分が持っている財産、モノをシェアしていくというような考え方は新しい行動パターンです。

3)競争が激しい飽和マーケットにも参入

Facebooは実際は世界の一番大きいメディアカンパニーであり、広告収入のビジネスモデルで既存マスメディアとの競合になります。

4)最初からはマネタイズしない

まずコミュニティを作ってユーザベースを増やし、フリーミアム(基本的な機能を無料で提供し追加機能を利用するタイミングで課金してもらう)で提供し、ユーザーたちがサービスのことを好きになってからはじめてお金を取ります。

5)経験がない創立者

既述のアイスハーベストの事例同様に、業界経験がない人たちが業界をDisrupt(破壊)していきます。

メガトレンドと呼ばれる大きいトレンドの動きが早まっています。テクノロジーの進化により、デジタル化のビジネスモデルなどマーケットのグローバル化が進んでいます。これは成功の定義や予測ができなくなっていることを示唆しています。これによりビジネスマンの考え方とマインドセット、動き方が変わります。リアルタイムで多くのデータが見られる世界になってきた今、データに直感をプラスして、新しいインサイト、ひらめき、新しい価値を生み出していくということが、これからのホワイトカラーワーカーの仕事の仕方となります。

働き方も変わります。ワーク1.0は生産業、生産産業の経済の考え方であり、上司の指示に服従し、勤勉に生産性高く効率よく仕事をするという働き方でした。

次にワーク2.0はナレッジエコノミーの考え方で、知能、すなわち専門性を使って新しい価値を生み出すという働き方でした。
しかしこうしたものはアウトソーシング、AIによる自動化ができるようになります。そこでワーク3.0、すなわちクリエイティブエコノミーという、0から1までの価値を生み出す、イントラプレナーたちがこれからの新しい未来を作っていくという働き方が必要になります。

変化していく世界の中での日本の立ち位置を見てみましょう。2030年の日本人平均年齢は53歳。それに比べアフリカは25歳よりも若い世代が多くなります。特に人口の多いナイジェリアやケニアを見ると、非常にスタートアップの数が多くなっている。また2009年GDPと2050年のGDP予測を見ると新興国はG7のGDPを2倍上回るという現状になります。

世界の起業家活動率を見ると、世界で一番起業家活動率が高い国というのはウガンダで、3人の中で1人が新しいビジネスを作ったのに対し、日本は下から4番目、100人に1人です。

現代はテクノロジーの進化によりスタートアップなどの組織を作ることは非常に簡単になっています。
6Ds(シックスディー)というデジタル化の進め方のモデルがあります。iPhone、スマホの登場で多くのものが携帯の中に入り、データ化され、データが指数関数的なスピードで増え、そのデータを使いビジネスモデルを作っていく会社が増えてきます。ものづくりに慣れている大手企業より何倍も早いスピードで業界の中に入り込み、業界を破壊します。そして固定資産を持たず、非常に価値のあるデータを持つビジネスが拡大します。例えばフリーミアムのモデルの拡大があります。

そして最終的にdemocratization、すなわち誰でも新しい価値を生み出せるという民主化が起きています。

このような状況下、企業の市場価値が10億ドルになる迄にどれくらいの時間がかかるかという分析があります。トヨタ、ユニリーバ等のグローバル企業が20年間程かかったのに対し、Googleは8年間、Facebookは5年、Teslaは4年で、Uber、WhatsApp、Snapchat、Oculus Lyftなどは、わずか2年以下で10億ドルに辿り着きました。

新しい価値を全世界で広げるようなビジネスモデルを持つ企業はこれまでにない指数関数的スピードで市場価値を高くしているのです。日本にイントラプレナーシップが必要なことが、これらのことから理解できると思います。

3.日本はまだ旧態依然。働き方の変化がイントラプレナーシップのカギに

では我々の日常業務や働き方は、今後どのように変わるでしょうか。経営するカタチが、ものづくりの世界からプラットフォーム作りの世界に移ります。仕事の性質は、強欲、すなわちお金を作るというものから、利他主義で世界のために何かを提供していくものに変わります。仕事のあり方は、クローズドの自前主義からオープンイノベーションのようにスタートアップと一緒にプロジェクトを組んで仕事をしていくものに変わります。

目標管理の方法は、トップダウンで経営者がゴールを決めて、KPIを設定する考え方は古くなり、GoogleのOKR(オブジェクティブ・キー・リザルト)のように、まず会社の大きなミッションがあり、それに向かい自分の達成したい目標を自分で考え、マネージャーとすり合わせて仕事をするというものに変わります。

会社と従業員との関係性も変わります。ピラミッド型会社が日本にはまだ多い一方、GEはエンプロイーエクスペリエンスに非常に力を入れています。それができない会社はグローバルでは残念ながら優秀な人材が採れません。

マネジメントのスタイルは、計画主義から学習主義に変わります。何ができるかわからない中でプロトタイプを作る、短期間で新しいファンクションを出す……、ということが大切な考え方になります。

マネージャーの役割もプレイングマネージャーから、社外リソースを使いスタートアップと一緒に新しい価値を出していくポートフォリオマネージャーに変わります。部下との関係は鵜飼のような関係性ではなく、チームの方々がそのポテンシャルを発揮しながら仕事していく場作り、というマネジメントに変わります。

ここで日本および日本企業を見てみましょう。従来の日本企業のピラミッド型マネジメントスタイルは世界ではもう通用しません。にもかかわらず、トップダウンマネジメントによる情報の交換、その透明度が低い会社が多いのが実態です。

ある働きがいに関する調査によると、日本人の働きがいは非常に低いという結果が出ています。世界の平均で、働きがいがあると答えた人63パーセントであるのに対し、日本は38パーセント、つまり日本人10人に6人が「会社に行きたくない」という状況なのです。これにより生産性も低くなり、日本人の平均生産性は1時間平均で41ドルとG7の中で一番低く、ノルウェー人の半分くらいになってしまっています。

この問題を解決するには3つのレベルでの取り組みが必要です。パフォーマンス、生産性、働き方は、個人とチームのパフォーマンスという横軸と、時間という縦軸からなるマトリクスが示す取り組みがそれぞれ必要になります。

そして日本ではイントラプラナーシップ、すなわち0から1までの価値を出すという考え方が必要不可欠になります。
そのためには、まずは下の図の4つの枠の中で昔ながらの「インパクトの低い、学びが少ない仕事」を無くすことが大事です。

「インパクトがそれほどないが学びが多い」というのは、受け入れるべきです。自分の持ってないスキルを伸ばすために、例えばプログラミングを学ぶ、英語を学ぶことで自分の市場価値が高まるような仕事です。/br>

「インパクトがあるが学びの少ない仕事」は、自分の専門性の高いところなので、先生、先輩の立場になり、それを広げていくのが大事です。
これらができれば4番目の「インパクトが大きく学びが高い仕事」に集中します。これこそがイントラプレナーの日常業務です。0から1までの価値を作るために、自分のビジョン、ミッション、自分のそのラーニングアジリティ、学習意欲、成長意欲を高める必要があるのです。/br>

第2回では、イントラプレナーに必要不可欠な「マインドセット」についてお話します。/br>

※この記事は、ビジネス・ブレークスルーのコンテンツライブラリ「AirSearch」において、2017年11月22日に配信された『イントラプレナーリーダーシップ <第1回>』を編集したものです。

講師: ピョートル・フェリクス・グジバチ
プロノイア・グループ株式会社 代表取締役社長、モティファイ株式会社 取締役
2000年に来日。ベルリッツ、モルガン・スタンレーを経て、2011年Googleに入社。アジアパシフィックにおけるピープルディベロップメント、2014年からグローバルでのラーニング・ストラテジーに携わり、人材育成と組織開発、リーダーシップ開発などの分野で活躍。2015年に独立してプロノイア・グループを設立。

  • <著書>
  • 『0秒リーダーシップ』(すばる舎)/li>
  • 『世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのかグーグルの個人・チームで成果を上げる方法』(SBクリエイティブ)/li>
  • 『NEW ELITE』(大和書房)/li>
  • 『Google流疲れない働き方』(SBクリエイティブ)/li>
  • 『日本人の知らない会議の鉄則』(ダイヤモンド社)など