MBAダイジェスト 2019年6月11日

戦略的人材マネジメント1(1)心理学から学ぶ人材政策の中身とは?

『MBAダイジェス』シリーズでは、国内初・最大級のオンラインMBAである「BBT大学院」、ならびに2つの国際認証を持つ「BOND-BBT MBAプログラム」の修了生が、両校で学ぶMBA科目のエッセンスをまとめ、わかりやすく紹介していきます。将来的にMBAの取得を検討している方や、MBAの基礎知識をインプットしたい方はご活用ください。


 
執筆:佐藤祐樹(BBT大学院MBA本科修了、三丸化学株式会社 取締役)
対象科目:戦略的人材マネジメント(川上真史 教授)

「何のために働いているのか?」 今、この問いに対し、出世や高収入ではなく、自分の人生やキャリアにとっての意味を求めるなど、企業で働く人材の意識が大きく変化しています。

一方で、働き方改革による就業時間の上限設定や生産性向上など、政治・社会からの変革の要請も強くなってきています。

そのため、企業の人事担当者のみならず部下を持つ立場にある方々は、人材の意識の変化をマネージしながら、従業員がいかに能動的に働き、成果を上げるのかを考えていかなければならなくなりました。

では何をどうやって? 『戦略的人材マネジメント』では、このような状況に直面した我々が、いかに考え行動すべきかを、心理学的な側面も含め学んでいきます。それでは、BBT大学院の修了生と一緒に、実際の講義内容の一部を見ていきましょう。

なぜ 『戦略的人材マネジメント』 が人気科目なのか?

なぜ、『戦略的人材マネジメント』 がBBTのMBAコースで特に人気のある科目なのでしょうか? 理由は3つあります。

ひとつは、経営には人的資源管理の知識が不可欠であること。もうひとつは、心理学から組織人事論を学ぶという、納得感のあるアプローチであること。最後に、心理学者の川上教授の語り口が面白すぎる、という単純な理由からです。

経営における人的資源管理の重要性とは?

経営における重要な3つの要素は、本業、資本政策、人材政策と言われています。 これを経営3要素と呼びます。

経営者は本業のことを考えているだけでは不充分です。本業を円滑に行うためには、お金の管理と人材の管理が必要で、この3つの要素をバランスよくマネジメントすることが求められます。

資本政策はアカウンティングやコーポレート・ファイナンスなどで学びます。これらは、乱暴な言い方をすれば、ある程度のルールがある中で意思決定を行うものです。

資本政策の学び方にはおおまかな順番があります。例えば、財務諸表の読み方、作り方を学んだあとに最適な資本構成を考える、などです。

一方で、人材政策はどうでしょう?

組織人事の問題は全てが応用問題です。労働基準法などの法規制はあるにせよ、自由度が桁違いに高く、正解なんてどこにもありません。

しかも、なんとか答えを出すことができても、それが正しかったかを検証するのはとても困難です。

そのような難しい課題に対して、乏しい経験に頼ったり、他社事例をなんとなく真似したりするというアプローチでは危険です。科学的な方法だとは言い難いからです。

心理学は心の学問ではない

心理学は科学です。科学とは再現性があるという意味であり、占いや思いつきとは対極の概念です。

1+1は2ですが、時代や地域によってたまに3なる、というようなことはありません。数学は科学だからです。科学は、インプットが同じであればアウトプットも同じです。

心理学を「心理の学問」だと思っている人が多いと思います。心理学を駆使すれば、ある一部分を観察しただけで、その人の性格や行動を全て知ることができる、という誤解が根強いようですが、これは誤りです。

心理学とは「心の理学」です。徹底的に人間を観察し、統計を駆使することで、心の動きを解明する学問が心理学です。

非科学的に人材マネジメントを行うのは不安です。答えのない応用問題だからこそ、心理学という科学的手法を使って問題解決したい、というニーズがあります。これが 『戦略的人材マネジメント』 の人気の理由だと言えるでしょう。

講義の構成

この科目は講義の構成もロジカルです。どの回も、冒頭に受講者への問題提起や問いが投げかけられます。その後、心理学を使ってそれを紐解く解説がロジカルに展開されます。

使われるスライドは、ネガティブな要素は教授が嫌いな野球チームのチームカラー、ポジティブな要素は同じような理由の黄色で提出され、明確に(明快に?)表現されています。

最後にその回の簡潔なまとめを3つ程度の箇条書きで提示されます。どの回でも、明日からでも使える実践的な知識が学べます。

このシリーズでは、本科目そのものからの他、教授が行った別の講義の内容も紹介します。本講義を受講済みの方も是非お楽しみください。

佐藤祐樹

BBT大学院MBA本科 修了 三丸化学株式会社 取締役事業部長
1974年生、宮城県仙台市出身。
大学でデザイン(専門はシルクスクリーン)を学んだ後、写真業界、出版社勤務を経て現企業に転職。営業・マーケティング部門で活躍中、2011年3月に出張先で被災。
その後2年間、企業勤めの傍らボランティアセンターの運営に携わる。
2013年にBBT大学院に入学、2015年MBA取得、同年取締役事業部長に就任。事業活動の責任者としてマーケティングから人事まで幅広く担当している。
また、2015年10月に友人とコーヒーの焙煎販売を行う株式会社リュミヌー珈琲を設立。
その他、コピーライターや事業計画作成支援、大学の補助教員などのフリーランス業務も行う。
「世の中の幸福の総量を力強く増やす仕事人」を目指す愛犬家。愛犬を連れてよく遊びにも行く。
趣味は手作りスモークチーズなどの燻製を作ること。

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