MBA(経営学修士)とは?
MBAは大学機関が提供する経営学の修士号であり、その課程では経営戦略やマーケティング、組織人事、リーダーシップ、アカウンティング、ファイナンス、オペレーション等、マネジメントに関する理論と実践を幅広く体系的に学びます。
MBAコースは大学院の修士課程にあたるため、研究テーマを持ち論文を執筆することが修了要件として求められるケースが多いです。ただし、専門職課程(専門職大学院)としてのMBAコースにおいては、修士論文の代わりにビジネスプランニングなどのより実務や実践を指向した修了要件科目を用意しているケースがほとんどです。
修士課程と専門職課程の違いは以下の通りです。
修士課程 | 幅広く深い学識の涵養を図り、研究能力又はこれに加えて高度の専門的な職業を担うための卓越した能力を培う。 |
専門職学位課程 | 幅広い分野の学士課程の修了者や社会人を対象として、特定の高度専門職業人の養成に特化して、国際的に通用する高度で専門的な知識・能力を涵養する。 |
※参考:文部科学省
いずれにせよMBAという学位は世界的に認知度が高い学位であり、ビジネスリーダーやマネジメント層を目指す多くの人に支持されています。
中小企業診断士とは?
一方で中小企業診断士とは、日本で唯一の国家資格を持つ経営コンサルタントのことを指しています。MBAの管轄が文部科学省なのに対し、中小企業診断士の管轄は経済産業省となります。その名称の通り、経営全般の幅広い知識を持ち、中小企業が抱えるさまざまな経営課題に対し助言を行うプロフェッショナルが中小企業診断士です。
より具体的には、たとえば以下のような点における経営面のサポートが想定されます。
経営戦略の策定支援 | 企業の強みや弱みを分析し、将来的なビジョンや経営計画の立案を支援 |
マーケティング・販売促進支援 | 商品・サービスの市場調査や販売促進、ブランディング施策を提案 |
財務改善支援 | 財務状況の分析を通じて、資金繰りの改善や利益率向上に向けたアドバイスを実施 |
組織・人材マネジメント支援 | 組織内の人材育成や人事制度、業務改善を支援し、生産性向上や働きやすい環境づくりに貢献 |
IT導入・DX推進支援 | デジタル化やITシステムの導入を助言し、業務効率化や生産性向上を実現 |
それでは、中小企業診断士になるにはどうしたらよいのでしょうか?自身を中小企業診断士として登録するためには、以下の方法があります。
1)中小企業診断士第2次試験に合格した後3年以内に、実務従事要件を満たすか、登録実務補習機関における実務補習(15日間)を受講し修了すること。
2)中小企業診断士第1次試験に合格した年度及びその翌年度に、中小企業大学校又は登録養成機関が開講する中小企業診断士養成課程の受講を開始し、修了すること。
なお中小企業診断士の登録有効期間は5年間であり、登録を更新するためには一定の要件を満たすことが必要です。
※参照:中小企業診断士試験から登録まで
中小企業診断士の年間志願者・合格者数推移(直近10年)
以下図の通り、年々受験者数は増加傾向にあります。また1次試験の合格率は直近で30%弱、2次試験だと19%となっており、一定の難易度の高さが伺えます。人気の国家資格と言えるでしょう。
※参考:過去の試験結果・統計資料
国内MBA入学者数推移(2010〜2017年)
一方、国内MBA入学者数も同じく増加傾向にあり、経営人材やマネジメントキャリアへの志向の高まりを垣間見ることができます。
また、専門職大学院におけるビジネス系以外の課程と比べても、MBAの人気の高さが伺えます。
※参照:文科省 大学院関連参考資料集
では、MBAコースにおいては、また中小企業診断士の資格勉強の過程においてはどのような学びを得られるのでしょうか。
大枠のカテゴリーという意味では、一見大きな差は感じられません。前述した通り幅広くマネジメントを学んでいきます。
MBA課程(修士/専門職) | ・経営戦略 ・マーケティング ・アカウンティング ・ファイナンス ・組織人事 ・リーダーシップ ・IT/デジタル ・統計 ・経済学 ・論理的思考力/批判的思考力 |
中小企業診断士 試験内容(国家資格) | ・経済学/経済政策 ・財務/会計 ・企業経営理論 ・運営管理(オペレーションマネジメント) ・経営法務 ・経営情報システム ・中小企業経営/中小企業政策 |
しかしながら、学習方法や進め方においては大きな違いが見られます。
MBAコースではケーススタディやディスカッションを中心とした授業運営がされています。そこには何らかの絶対的な答えがあるわけではなく、学んだ理論やアプローチを用いながら、自分なりに思考を組み立て、当該テーマにおける答えや示唆を出していくプロセスが多いです。
また、前述の通り修士論文の執筆や、専門職課程であればビジネスプランニングの企画等も進めていきます。これは担当教授による指導を経て実施されていくケースがほとんどです。
一方、中小企業診断士の資格取得過程においてはテキストベースでの学びが中心となります。筆記試験や口述試験をクリアすることを前提とし、独学ならば教科書や参考書、動画コンテンツ等の教材を通じて学習を進めます。
独学の他に、中小企業大学校や一般企業が提供している養成課程を受講する選択肢もあります。プロ講師の指導のもと、合格を目的とした効率的かつ合理的なインプットを進めることができます。一人きりの学びではないので、モチベーション維持に繋がることも期待できます。
※参考:中小企業診断士 登録までの過程
前項でも少し触れましたが、ここでMBAの学位と中小企業診断士の資格を取得するまでの流れを見ていきましょう。それぞれ目的や趣旨が異なりますので、学位取得や合格までのプロセスも違う流れとなります。
一概には言えませんが、夜間やパートタイムのMBAコースは2年をかけて修了するケースが多いです。全日制の場合は1年での修了が可能です。
中小企業診断士においては、前述の通り合格率がわずか数%となりますので、繰り返しチャレンジされている志願者も一定存在します。よってばらつきはあるものの、取得までに数年かかったというケースも少なくないでしょう。
MBAの場合 | ・出願/入学試験合格 ・単位取得 ・修了要件科目の合格(論文執筆 / ビジネスプランニング等) ・学位授与 |
中小企業診断士の場合 | ・一次試験合格(マークシート) ・二次試験合格(筆記/口述試験) ・中小企業診断士登録(経済産業大臣登録) |
MBAコースを志願される方においては、たとえばBBT大学院の場合は以下のような志向をお持ちの方が多くいらっしゃっています。
MBA取得後のキャリア例
・大手企業・外資系企業における幹部職(転職ふくむ) ・スタートアップ・ベンチャー企業における幹部職 ・独立起業
また、50代以降にMBAコースにチャレンジされる方においては、これまでのビジネス経験の体系化や棚卸し、セカンドキャリアに向けての準備を目的とされるケースもあります。
一方で中小企業診断士の方はどうでしょうか。中小企業診断士の資格ホルダーにおいては、MBAと同じく特定企業内でのさらなる活躍を目指す方が一定いるものの、独立起業を志される方の方が相対的に多いと捉えられます。
中小企業診断士取得後のキャリア例
・独立コンサルタント(自分の事務所を構える) ・公的機関や商工会議所と連携した経営支援専門家 ・企業向け研修講師
中小企業診断士としての登録が完了すると、公的機関を中心とした様々な案件紹介を受けられるようになります。このネットワークメリットを活用し、自分の個人事務所を持とうとされる方は少なくありません。この点は中小企業診断士ならではのポイントと言えるでしょう。
中小企業診断士が適している方:
中小企業診断士は、その資格の成り立ちや意義が示すよう「中小企業の経営診断の業務」に従事したいと考えている方にこそ最適な資格です。独立希望の方にも比較的適していると言えます。ただし前述の通り合格難易度が高く、また資格の維持コストも発生するため、取得を目指す場合は事前によく確認されることをお勧めします。
将来的に「中小企業の経営診断の業務」に従事したいと考えている方にとっては、中小企業診断士として登録することで、国や地方自治体、商工会議所の実施する中小企業への経営支援の案件を斡旋してもらえる等のメリットがあります。
MBAが適している方:
資格取得というよりも経営の学位取得に関心がある方や経営学を研究したい方、あるいは専門職課程での実践的な学びを通じビジネスの現場でさらなる結果を出したいという方は、MBAが適しているでしょう。
なお、MBAコースを設置している大学機関は複数あり、その教育方針やカリキュラム、学び方、そして受講生の志向性などは様々です。ご自身にフィットした学校を探すためにもウェブサイトのみならずオープンキャンパスや説明会、セミナーなどに参加し、直接的にスタッフや講師、修了生などとコミュニケーションしてみることをお勧めいたします。
BBT大学院MBAコースの受講動機:
・答えのない時代で勝負できる知識やスキル、人脈が必要と感じた(製薬、20代) ・60歳を超えた後も豊かな生活が送れるよう、自分に稼ぐ力をつけたかった(広告、40代) ・世界で戦うことができるグローバル人材になるため、実践的な学びを求めていた(製造、30代) ・IT領域のみならず経営レイヤーのコンサルタントとして活躍の幅を広げたかった(コンサルティング、30代) ・きつくても成長したい。机上の学びを超えた、稼ぐ力をつけたかった(製造、40代)
Q. MBAは国内・海外どちらがおすすめ?
A. 外資系企業を目指すなら海外MBA、国内企業でマネジメント層を目指すなら国内MBAでよいでしょう。
Q. 中小企業診断士の資格維持は大変?
A. 年間の研修義務がありますが、最新情報のキャッチアップになるため、自己研鑽に役立ちます。
Q. 働きながら資格取得は現実的?
A. オンラインMBAや診断士通信講座が普及しており、多くの社会人が両立して取得しています。
芥川梨枝子
中小企業診断士 2012年取得 株式会社Aoba-BBT University事業本部 マーケティング部 部長 大手メーカー EC部門販売責任者を経て現職