今回は『日本の税収・国民負担率』を取り上げます。
昨今、政府の有識者会議において給付付き税額控除の制度設計や、消費税に関する新たな議論など、社会保障と税のあり方を巡る動きが活発化しています。少子高齢化がこれまでにないスピードで進行し、生産年齢人口が減少に転じている日本において、社会保障費の膨張とそれに伴う国民負担率の上昇は、避けては通れない構造的な課題です。日々の報道では、個別の増税案や社会保険料の引き上げといったトピックが注目されがちですが、これらはすべて国家の巨大な財政構造の歯車の一部に過ぎません。
それでは、長期的なデータは、日本の財政と国民負担の構造について何を示しているのでしょうか。税収や歳出の構造的変化は、私たちのビジネスや生活にどのような影響を与えているのでしょうか。財務省が公表している客観的な一次データをもとに、プレゼンテーション資料で示された「一般会計の収支」「税収の内訳」「国民負担率」という3つの観点から、実際に数字を見て確認したいと思います。

まず全体像です。添付データで一般会計税収の長期推移を見ると、1975年度の13.8兆円は、バブル期の1990年度に60.1兆円まで増え、その後は90年代後半から2000年代にかけて伸び悩みました。2009年度には38.7兆円まで落ち込みますが、その後は回復基調に入り、2024年度75.2兆円、2025年度80.7兆円、2026年度83.7兆円へと拡大しています。長い目で見れば、税収は確かに増えています。1975年度比では約6倍です。
ただし、税収だけを見て「財政に余裕が出た」と判断するのは早計です。同じ期間に一般歳出も20.9兆円から2024年度123.0兆円、2026年度122.3兆円へと大きく膨らんでいます。実際、2026年度予算では租税及び印紙収入が83.7兆円ある一方、公債金は29.6兆円計上され、歳入総額の24.2%を占めています。さらに歳出側では国債費が31.3兆円と、一般会計歳出総額の4分の1超を占めています。つまり、日本財政の実態は「税収増=財政余力増」ではなく、「税収増の局面でもなお大きな歳出と債務コストを抱えている」というものです。
次に、税収の中身を見ます。添付データからは、税目ごとの主役交代が読み取れます。所得税収は1991年度に26.7兆円でピークを付けた後、2024年度は21.2兆円と、バブル期の水準をなお下回っています。法人税収も1989年度の19.0兆円がピークで、2009年度には6.4兆円まで落ち込みましたが、2024年度には17.9兆円まで戻しています。一方で、消費税収は1989年度の3.3兆円から2024年度25.0兆円へと拡大しました。いまや消費税は、所得税や法人税と並ぶどころか、年度によっては最大級の基幹税収です。要するに、日本の税収増は、景気循環に左右されやすい法人税だけで説明できず、消費課税の比重上昇を伴っているのです。
ここに国民負担率の推移を重ねると、もう一段構造が見えてきます。財務省資料では、国民負担率は1975年度25.7%、1989年度37.9%、2020年度47.3%、2022年度47.3%と上昇し、2024年度46.7%、2025年度46.1%、2026年度45.7%となる見通しです。直近はやや低下しているものの、水準自体はなお高いままです。しかも2026年度見通しの内訳は、租税負担28.0%、社会保障負担17.6%です。ここで重要なのは、「負担」の中心が税だけではないことです。税制論議では消費税や所得税に注目が集まりがちですが、家計や企業が感じる圧迫感には、社会保険料の継続的な上昇が強く影響しています。
こうしてみると、日本の負担論で本当に問うべきは、消費税率の一時的な上下よりも、社会保障負担の伸びをどう制御するかです。食品の消費税率を2年間だけ0%にする政策は、物価高対策として一定の即効性を持ちますが、国民負担率全体から見れば、負担構造の中心を大きく動かす施策とは言いにくいです。財務省の2026年度見通しでは、国民負担率45.7%のうち17.6%は社会保障負担であり、家計や現役世代の可処分所得を圧迫している本体が、税だけでなく社会保険料にもあることが示されています。
この意味で、チームみらいが「消費減税ではなく社会保険料の引き下げ」を訴えたことには、政策論として一定の筋があります。実際、同党は衆院選で11議席を獲得し、無党派層での浸透も確認されました。ただし、その伸長は単純なSNS現象というより、ネット時代における分かりやすい論点設定と、無党派層・比較的若い層への伝達力が作用した結果とみる方が適切だと考えられます。日本の税収・国民負担率のデータが示しているのは、「減税の見栄え」よりも、「負担構造の本体」を見極める必要があるということだと言えそうです。
資料:
・財務省「国債IR基礎資料」
・昭和54年度(1979年度)以降の税収の推移
・財務省「国民負担率(対国民所得比)の推移」