執筆者:PEGL事務局清水
人は褒められると嬉しいですし、仕事で褒められればやる気が出るものです。機会があったら人を褒めてあげることができるよう、いろいろなバリエーションで使えるようにしたいものです。そうすることによって周りとの人間関係がうまくいって、仕事もスムーズに回ることでしょう。
今回のコラムは、実践ビジネス英語講座でも初級・中級コースで科目を担当している、関谷英里子先生の『その英語 こう言いかえればササるのに!』(青春出版社)から英語で褒めるときの表現を解説します。
みなさんは話をしている相手の人や、誰かを「~するのが上手い」とほめる時、どのような英語表現を使うでしょうか。学校では「~が得意である」という英語表現の決まり文句として、「be good at ~ing」を習ったので、条件反射的にその表現を使いたくなってしまいます。
例えば、(1)~(3)のようなことを言いたいと仮定します。
(1)あなたは聞き上手ですね。
(2)彼はテニスが上手いですね。
(3)彼女は料理が上手ですね。
「be good at」を使うと、それぞれどのような英語になるでしょうか。以下のようになります。
(1)You are good at listening.
(2)He is good at playing tennis.
(3)She is good at cooking.
『その英語 こう言いかえればササるのに!』によると(1)~(3)とも末尾を人を表す名詞にするのが自然な英語表現です。
(1)You are a good listener.
(2)He is a good tennis player.
(3)She is a good cook.
では、次のことを言いたい時は英語で何と表現したら良いでしょうか。
(4)あなたは褒め上手ですね。
「be good at」を使うと、以下のような英語になります。
(4)You are good at praising.
これは「褒め上手ですね」という肯定的な意味として相手に伝わらないことがあるので注意が必要です。こう言われた相手の人は「ちょっと胡散臭く思われているのかな」と受け取ってしまう可能性があります。日本語だと「おだて上手ですね」と言われると「ちょっと胡散臭く思われているのかな」と受け取ることがありますが、それに近い感じです。
(4)も末尾を名詞にしたほうがいいのですが、「You are a good praiser」とは言わずに「褒め上手」=「人を褒めて、モチベーションを高めるのが上手」と解釈して「You’re a good motivator」と言います。
あるいは「That’s+形容詞」を使って相手の言葉に対してどう思ったかを伝えてもいいのです。この場合は、「人に褒められて、自分が勇気づけられた」「励まされた」ということを伝えればいいので、次のように言います。
(4)That’s very encouraging.
(あなたの言葉には)とても励まされます。
相手の“センス”を褒めたいことがあります。この時、「センスがいいですね」と日本語では言うものですから、英語でも次のように言いたくなってしまいます。これは和製英語なので、「You have good sense」と言っても相手には何を言いたいのかが全くと言っていいほど伝わりません。
senseとは五感のような具体的な感覚を伴わなければなりません。五感以外なら「sense of humor」(ユーモアのセンス)とか「sense of direction」(方向感覚)という使い方をします。
(5)You have great taste.
「好み、嗜好、趣味」そして「審美眼、風流心」のような漠然としたものを全般的に褒めたい時には、上記の「have great taste」で言い表します。
「格が違いますね」という褒め表現が日本語にはあります。直訳すると以下のような英語になってしまいます。
(6)You are different ranking.
人がランキングになると言う発想は英語にはありません。修飾語のdifferentを取り去ると、「You are ranking」となりますが、英語ではこのような言い方はしません。ランキングという単語が使えないとすると、「格が違う」ことを英語ではどのように表現するのでしょうか。
(7)I am not in the same league as you.
英語では「格が違う」の代わりに「リーグが違う」という言い方をします。サッカーのJリーグを思い浮かべてもらうと1部リーグは1部リーグ内で、2部リーグは2部リーグ内で試合します。1部リーグに所属するチームと、2部リーグに所属するチームは「格が違う」というわけです。
良い仕事をしたと思う時はとても自信になります。自分でも出来栄えの良い仕事をした時には周囲の人間の雰囲気から分かるものですが、周囲の人から声に出して一言でも直接言ってもらうと、とても嬉しいものです。英語で褒めるのは慣れなくて少し照れくさいような気持ちになるかもしれませんが、思い切って声に出すことを試して下さい。
プレゼンテーションを終えた同僚には以下のように声をかけると喜んでもらえるでしょう。
(8)You did great!
すごく良かったよ。
(9)That was great.
素晴らしかったよ。
(10)Keep it up.
その調子で頑張って。
(11)Keep up the great work.
素晴らしい仕事ぶりを続けて頑張って。
『その英語 こう言いかえればササるのに!』の著者である関谷先生は、通訳の仕事をしたときに、以下のように言ってもらったときのことを良く覚えていると言います。
(12)You are fantastic.
あなたは素晴らしかったですよ。
(13)The translation was really amazing.
通訳が本当に素晴らしかった。
いかがでしたでしょうか。
人を褒めるのはタイミングが大事です。人を褒めたいタイミングで、すっと英語表現が出て来ないと、もどかしいものですね。後で褒めるというのも何だか間が抜けてしまいます。その場のタイミングで褒めてあげるのが相手の心にも一番響くはず。いざというときにすっと英語が出てくるように、皆さんも「褒める英語」のバリエーションを増やしてみてはいかがでしょうか?
【参考】その英語 こう言いかえればササるのに!(最終アクセス:2019年9月19日)
http://www.amazon.co.jp/dp/4413044053
pp.86‐96