業界ウォッチ 2025年9月2日

【データから読み解く】ASEAN5各国の経済規模

今回は「ASEAN5各国の経済規模」を取り上げてご紹介いたします。

前回、前々回と中国の動向を取り上げましたが、今回は東南アジアのうち主要国である5ヵ国(ASEAN5、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)の経済規模を取り上げます。

中国が国内バブルの崩壊の影響や、米中対立の影響などから中国を回避してインドや東南アジアに拠点を移す企業が増えてきています。東南アジアは、以前から中国リスクを想定した製造拠点としても注目されていました。また、東南アジア自体は、人口や経済の伸びも順調であり、中国の存在感の大きさに埋もれていますが、東南アジア自体の経済規模も見逃すことはできません。

それでは、ASEAN5各国の人口規模はどのくらいで、どのように推移しているのでしょうか。経済規模はどのくらいで、どのように推移しているのでしょうか。一人当たりGDPはどのくらいの水準で、どのように推移しているのでしょうか。

基礎的な数字ではありますが、実際に数字を見て確認したいと思います。
asean5 economic

ASEAN5各国の数字を、IMFの統計から確認してみます。IMFは2030年までの推計を行っていますが、推計時が2025年4月公表のものなので、トランプ関税の影響が反映されていないものと考えられます。そのため、ここでは2000年から2025年までの推移を見ることとします。

まず、ASEAN5各国の人口規模を見てみます。最も人口規模が大きいのはインドネシアで、2000年は2.06億人でしたが、そこから増加トレンドで2025年は2.84億人となっています。次いで大きいのはフィリピンで、2000年は約7700万人でしたが、以降増加トレンドで2015年に1.01億人と1億人を超え、2025年は1.14億人となっています。次いで大きいのはベトナムで2000年は約7900万人でしたが、以降増加トレンドで、2023年に1億人に達し、2025年は1.02億人となっています。タイ、マレーシアは2000年から2025年にかけて微増トレンドとなっており、2025時点でタイは約7000万人、マレーシアは約3300万人となっています。

次に、GDP規模の推移を見てみます。2025年時点で最も大きいのはインドネシアで1.43兆ドルとなっています。次いで大きいのはタイ(約5500億ドル)で、以降フィリピン(約5000億ドル)、ベトナム(4900億ドル)、マレーシア(約4400億ドル)と続きます。

インドネシアは2000年時点は約1800億ドルでしたので、約8倍の規模に成長したことが分かります。成長度合いで見ると、ベトナムは2000年時点が約400億ドルでしたので、2025年の4900億ドルまで約12倍の規模にまで成長しています。同様に2000年と2025年を比較するとフィリピンは約6倍、マレーシアは4.35倍、タイは4.32倍に成長しています。

次に、一人当たりGDPの水準を見てみます。2025年時点で最も高いのはマレーシアで1.3万ドルとなっています。次いで高いのはタイの約7800ドルで、以降インドネシア(約5000ドル)、ベトナム(約4800ドル)、フィリピン(約4300ドル)と続きます。

 マレーシアは2000年時点では約4300ドルでしたが、以降上昇トレンドで、途中上下するもの2011年に1万ドルを超えています。2015~2017年にかけて一旦1万ドルを下回る期間がありましたが、2018年に再度1万ドルを超え、以降は概ね上昇トレンドなっています。マレーシアは2000年から2025年にかけて約5.7倍に成長しています。成長度合いで見ると、ベトナムは2000年時点が約500ドルでしたので、2025年の4800ドルまで約9.6倍の水準にまで成長しています。同様に2000年と2025年の水準を比較すると、インドネシアは約5.8倍、フィリピンは約4倍、タイは約3.8倍の成長となっています。

こうして見ると、人口規模・経済規模という観点で見ると、インドネシアがASEAN5の中で突出して大きいことが分かります。人口規模が大きいにもかかわらず、人口増加の伸び率が高いため、経済規模の伸び率も高いことが分かります。1人当たりGDPでみるとマレーシアが1万ドルを超えるなど、突出していることが分かります。タイも比較的高いですが、マレーシアに差をつけられている状況です。ベトナムは一人当たりGDPの伸び率が高く、GDPの伸びも高くなっています。

今後どのくらいトランプ関税の影響があるのか見通しきれない点もありますが、経済規模、所得水準の伸び、人口の伸びなどを見てもいずれも有望な地域だと言えそうです。

資料:
IMF, World Economic Outlook Database, April 2025