業界ウォッチ 2023年11月7日

【データから読み解く】国内防衛産業

今回は「国内防衛産業」を取り上げてご紹介いたします。

前回は「世界の軍事支出と防衛売上上位企業」について取り上げました。

近年の地政学的な緊張から、日本でも、防衛強化や防衛費の大幅拡大など議論が取りざたされています。

日本の防衛力強化のために、米国からトマホークミサイルの購入などが話題となっていますが、外国から防衛装備品を購入するだけでなく、国内の防衛産業の強化・支援の取組についても注目が集まっています。

それでは、日本の防衛費、防衛装備品の購入予算はどのように推移しているのでしょうか。また、国内の防衛産業・企業で防衛関連の売上金額の大きい企業はどこで、上位企業でどのくらいの割合を占めているのでしょうか。また上位企業のランキングはどのように変化しているのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。
domestic defense

まず、国内の防衛関係費(当初予算)、防衛装備品の調達金額の推移を見てみます。防衛関係費は、2000年度は4.94兆円で、そこから緩やかに減少トレンドとなり2012年年度4.65兆円となっています。以降、微増トレンドとなり、2022年度には5.18兆円となっています。2023年度は、防衛力強化のために予算を大幅に強化したため、6.6兆円へと急増しています。この急増トレンドから、さらに2027年度には関連経費も含めて11兆円へと防衛費を拡大させる予定となっています。

防衛装備品の調達金額の推移を見ると、2000年度は1.26兆円で、2010年度ごろまで概ね横這いトレンドで推移しています。2011年度に1.47兆円へと増加し、以降1.4兆円~1・8兆円台を緩やかな増減を繰返しながら推移し、2022年度は1.72兆円となっています。

防衛費全体の予算の動向を鑑みると、2023年以降の防衛装備品の調達額が、大幅に上昇することが予想されます。

次に防衛装備品契約額上位企業を見てみます。トップは三菱重工の3652億円となっています。次いで金額が大きいのは川崎重工で1692億円となっており、以降、日本電気(944億円)、三菱電機(752億円)、富士通(652億円)東芝インフラシステムズ(363億円)と続きます。

2022年度の全調達額(1.72兆円)に占めるシェアを見ると、三菱重工が21.2%を占めており、以降川崎重工9.8%、日本電気(5.5%)、三菱電機(4.4%)と続きます。上位5社で全体の44.7%を占めています。

また、防衛装備品契約額ランキングを2017年度~2022年度の推移を見てみます。

三菱重工は、常に1位をキープしています。川崎重工は、2019年度以外は2位のポジションをキープしていることが分かります。日本電気は、2017年度に3位でしたが、以降ランキングを落とし、2020年度に5位となりますが、以降ランキングをあげて2022年度には再び3位となっています。三菱電機は、2017年度は4位で、2019年度に一度2位にランクインしますが、以降順位を下げ2022年度は4位となっています。

こうしてみると、2023年度以降日本の防衛費のが大きく伸びる計画となっており、それに合わせて防衛装備品調達金額も大きく拡大することが予想できます。また、防衛装備品の上位企業も、防衛費の伸びに合わせて契約金額が拡大していくことが予想されます。防衛費の伸びの規模から考えると、上位企業だけではなく新たに防衛産業に参入する企業が増えることも予想されます。また、国内産業だけではなく、国内スタートアップや、外国企業なども国内防衛産業に参入することが想定されます。国内の防衛関連スタートアップなどは、最近「防衛テック」としてメディアにも取り上げられるようになっています。

ただし、国内の防衛予算が拡大するからと言って、単に参入するのではなく、しっかりと国の防衛に貢献する製品を納入することが必須となります。三菱重工などは、航空機開発の撤退や、H3ロケットの失敗などのケースがあり、防衛装備品でこのような事態となると、国を防衛することが出来なくなってしまいます。

防衛産業は、国の防衛に対して真摯に向き合った上で取り組むことが求められると言えそうですね。

出典:
防衛省「防衛白書」令和5年版
防衛装備庁「中央調達の概況」令和4年
防衛装備庁「中央調達における令和4年度調達実績及び令和5年度調達見込」