業界ウォッチ 2024年1月16日

【データから読み解く】国内出版・書籍EC・書店市場

今回は「国内出版・書籍EC・書店市場」を取り上げてご紹介いたします。

国内の出版・書籍市場は、活字離れ、出版不況と呼ばれるようになって久しく、紙の書籍を中心とした出版部数が減少し続けています。また、書籍を販売する書店数も減少し続けており、大型書店の閉館などの報道も見かけるようになりました。

確かに、ネット通販や電子書籍の普及などもあり、書店での本の購入や、紙の本自体の購入機会が減っているように思います。かつては小さな町の本屋などが存在していましたが、そうした店舗は見かける機会が大幅に減り、手に取って購入するには大型書店に足を運ぶ必要があるようになりました。また、2020年以降のコロナ禍で書店に立ち寄って、本や雑誌を手に取ってみて購入する機会も大幅に減ったように思います。

それでは、国内の出版市場規模はどのように推移しているのでしょうか。電子出版がどのくらい存在感が高まっているのでしょうか。また、書籍のEC・ネット通販市場はどのように推移しているのでしょうか。そして、書店の店舗数はどのように推移しているのでしょうか。店舗・売り場面積規模はどのように変化しているのでしょうか。

実際に数字や事例を見て確認したいと思います。
e-books

まず、国内出版市場規模の推移(1990-2022年)を見てみます。出版市場規模全体でみると、1990年は2.13兆円でしたが、そこから増加トレンドで1996年に2.66兆円とピークに達します。以降は減少トレンドで2018年に1.54兆円と最低値となりますが、以降は微増し2022年は1.63兆円となっています。このうち、書籍・雑誌を含めた紙媒体書籍の出版は、1996年以降減少し続けており、2022年に書籍・雑誌合計1.12兆円の最低値となっています。一方、電子出版は2014年が1144億円で、以降増加トレンドで2022年には5013億円と過去最高値となっています。特に、2020年のコロナ禍の影響以降は、電子書籍が出版市場全体の中でもウェイトを高めていることが分かります。出版市場全体に占める電子出版の割合を見てみると、2014年は6.6%でしたが以降増加トレンドで、2019年で19.9%となっています。2020年には24.3%と一気に5ポイント増加し、2022年には30.7%に達しています。

次に、書籍のEC・ネット通販市場規模の推移(2013-2022年度)を見てみます。書籍ECだけの統計数値を取るのが難しかったため、ここでは経済産業省『電子商取引実態調査』から、物販系の書籍・映像・音楽ソフトのBtoC-EC市場規模を抽出して、推移を見てみます。2013年は、7850億円でしたが、以降増加トレンドとなっています。2020年のコロナ禍で同市場が2019年(1.3兆円)から2020年(1.6兆円)へと約3000億円増加と急増しています。コロナ禍以降も、増加トレンドが継続しており、2022年には1.8兆円となっています。

日本の書店数の推移(2003-2022年)を見てみると、2003年は約2.1万店でしたが、以降減少トレンドで、2022年には1.15万店となっており、20年間でほぼ半数の規模にまで縮小していることが分かります。書店の平均坪数を見てみると、2003年は80.3坪でしたが、以降増加トレンドとなっています。2011年(116.3坪)から2012年(107.9坪)で、一旦落ち込みます。これは、おそらく東日本大震災の影響があるものと感がられます。以降は再び増加トレンドとなっており、2022年には132.7坪となっています。

こうしてみると、国内出版市場は、紙ベースの書籍・雑誌の減少は止まらず、電子書籍が出版市場をさえていることが分かります。特に、2020年のコロナ禍以降、電子書籍の存在感が大きくなっていることも分かります。また、物販系書籍EC・ネット通販で見ると、ECへの流れは継続しており、こちらも2020年のコロナ禍以降その傾向が強くなっていることが分かります。

リアル書店の店舗数が減少傾向の継続は、するのこうした、出版・書籍電子化の流れ、ECの台頭・定着の影響を大きく受けていることが分かります。また、平均坪数を見てみると、小規模店舗が閉鎖し、書店が大型化していることが分かります。

書店経営は、従来の紙の書籍を販売しているだけでは厳しいため、書籍以外の物販やサービス提供など複合化していく流れは必須と言えそうですね。

出典:
全国出版協会・出版科学研究所「出版指標 年報」
全国出版協会・出版科学研究所「出版指標 年報」

経済産業省「電子商取引実態調査」
出版科学研究所「日本の書店数」