業界ウォッチ 2023年8月1日

【データから読み解く】国内冷凍食品市場

今回は「国内冷凍食品市場」を取り上げてご紹介いたします。

手軽に食べられることから冷凍食品市場の拡大が続いています。以前にも、このシリーズで冷凍食品市場(※1)を取り上げたことがありましたが、コロナ禍前でも市場が拡大している状況でした。その後は、特に新型コロナの影響で、一時的に落ち込んだものの、徐々に外食需要の代替として家庭に定着しているようで、2022年の国内消費量は過去最高を記録しています。

最近では、物価高の中でも、大手冷凍食品メーカーの高付加価値商品投入、百貨店や飲食店が高級冷凍食品の販売を始めるなど、冷凍食品市場に参入する動きが活発化しているようです。

それでは、国内冷凍食品市場で伸びている分野はどの分野で、どの位伸びているのでしょうか。用途別(家庭用、業務用)でどのような違い・変化が見られるのでしょうか。コロナ禍前後でどのような違いがあるのでしょうか。また、主要な冷凍食品で特に伸びている商品はどのような商品なのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。
frozen food

まず、冷凍食品の国産品・輸入品の内訳の推移を見てみます。

「国内生産調理冷凍食品(フライ類)」は、1980年から90年代半ばまで増加トレンドでしたが、以降緩やかに縮小トレンドとなっています。「国内生産調理冷凍食品(フライ類以外)」を見ると、80年以降2000年代半ばまで急増トレンドとなっています。08年のリーマンショックで一度落ち込みますが、以降増加トレンドで2020年のコロナ禍の影響は軽微で22年に過去最高(112万トン)となっています。「国内生産その他冷凍食品」を見ると、80年以降の緩やかな増加トレンドから90年代半ば以降に緩やかな減少トレンドとなっており、2022年は16万トンとなっています。

国産品と輸入品の内訳をみると、国産品は増加トレンドできましたが、‘90年代後半から横ばい傾向となっています。輸入冷凍食品では冷凍野菜が90年以降が増加しており、’18年には105万トンにまで拡大しています。「輸入冷凍野菜」を見ると、80年以降急増しており、90年代半ば以降は増減を繰り返しながらも概ね増加トレンドで2022年は過去最高の115万トンとなっています。「輸入調理冷凍食品」は統計を取り始めた97年以降急増しましたが、2007年の32万トンをピークに、増減を繰返しながら減少トレンドとなっています。

次に用途別(業務用・家庭用)の推移を見てみます。「業務用」をみると、2002年以降概ね減少トレンドでしたが、20年のコロナ下で大幅に落ち込み、以降ほぼ横ばいとなっています。「家庭用」は02年以降概ね増加トレンドでしたが、20年のコロナ下で急増し、以降増加トレンドとなっています。21年以降は「家庭用」が「業務用」を上回っています。

国内生産調理品の中で、フライ類を除く主要品目別の調理品の生産量を見てみます。2022で最も大きいのは「うどん」(19.9万トン)で、次いで「ギョウザ」(10.2万トン)、「炒飯」(9.8万トン)、「パスタ」(6.6万トン)と続きます。2012年からの伸びで見ると、「うどん」、「ギョウザ」、「炒飯」、「パスタ」、「ラーメン類」が伸びていることが分かります。

このように見てみると、冷凍食品市場の伸びは、国内生産のフライ類以外の調理冷凍食品と、輸入冷凍野菜が中心に伸びていることが分かります。

また、コロナ禍で業務用が大きく落込んだのに対し、家庭用はコロナ禍で大きく伸びたことが分かります。家庭用はコロナ禍以降も着実に伸びています。商品別でみると、「うどん」「パスタ」「ラーメン類」といった麺類や、「ギョウザ」、「炒飯」、「シュウマイ」などの中華系の食品が伸びていることが分かります。

冷凍食品が家庭用で広がるには、消費者のニーズがあることはもちろんですが、食品を冷凍する技術、冷凍保管、冷凍配送・物流、家庭内での冷凍食品の保管、冷凍食品の解凍といった様々なプロセスが必要となります。それぞれのプロセスでの技術・ノウハウ等の水準が向上したことで、これまで一部の専門メーカーなどの事業者でなければ提供できなかった冷凍食品が、そうでない事業者も参入できるようになっているものと考えられます。

こうしたエコシステム・経済圏を「冷食エコノミー」(※2)や「フローズンエコノミー」(※3)と称する動きもみられるようになりました。冷凍食品市場の伸びは、食品需要だけでなく、その周りの仕組みも含めたエコシステムで考えると、新たな事業機会を見出すことが出来そうですね。

※1(2019年7月8日)教員のちょっと気になる「国内冷凍食品市場」
※2 「冷食エコノミーで消費沸く 買いだめで冷凍庫も人気」
※3 フローズンエコノミー協会

出典:一般社団法人日本冷凍食品協会 統計資料