【データから読み解く】世界の軍事支出と防衛売上上位企業

今回は「世界の軍事支出と防衛売上上位企業」を取り上げてご紹介いたします。

近年、ロシアのウクライナ侵攻をはじめとして、直近ではイスラエルとハマスの衝突などの紛争が問題となっています。日本を取り巻く環境で見ても、台湾有事、北朝鮮のミサイル、中国の軍備拡大、ロシアとの関係など、地政学的な問題から、安全保障・防衛問題に関する議論も増えています。日本では、防衛費の大幅拡大などが取りざたされています。

確かに、近年の地政学的な緊張から、軍備・防衛等に関する必要性が迫られている傾向が強くなっているものと考えられます。

それでは、世界の軍事支出はどのように推移しているのでしょうか。地域別にみるとどのような変化が見られるのでしょうか。国別の軍事支出を見ると、どの国の軍事支出が大きいのでしょうか。それらの国の軍事支出はどのように変化しているのでしょうか。

また、世界的の防衛売上の大きい企業はどこでしょうか。どの国の企業が上位にはいいているのでしょうか。日本企業はどの位に位置しているのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。

まず、世界の軍事支出の推移を見てみます。地域別にみると、北米は1992年は6452億ドルで、98年に4979億ドルへと落ち込みますが、以降増加トレンドとなり2010年に9364億ドルとピークに達します。以降再び減少トレンドとなり、2017年（7400億ドル）以降再度増加トレンドに転じ、2022年時点で8377億ドルとなっています。

欧州は1992年（3569億ドル）から1998年（2924億ドル）まで落ち込みますが、以降は微増トレンドに転じます。2017年以降増加傾向が加速し、21年（4207億ドル）から22年（4770億ドル）にかけて急増しています。

東アジアは、1992年の1064億ドルからほぼ一貫して増加トレンドとなっており、2022年には4146億ドルとなっています。中東は1992年で826億ドルでしたが、以降緩やかな増加トレンドとなり2015年に2088億ドルとピークに達し、以降は横ばい傾向が続き、2018年以降減少トレンドとなっています。

次に、国別軍事支出を見てみます。2022時点で最も大きいのは米国で8116億ドルとなっています。次いで大きい国のが中国の2980億ドルとなっており、以降、インド（810億ドル）、サウジアラビア（730億ドル）、ロシア（720億ドル）と続きます。日本は、539億ドルと世界9位の規模となっています。2012年～2022年の10年の変化を見ると、米国は減少していますが、その他はほとんどの国で増加しています。特にウクライナは、2012年の24億ドルから22年の440億ドルへと急増していることが分かります。

また、世界の防衛売上高上位企業（2022年）を見ると、トップがロッキード・マーチン（米）で633億ドルとなっています。次いで、RTX（米、396億円）、ノースロップ・グラマン（米、324億ドル）、中国航空工業集団（中国、310億ドル）、ボーイング（米、308億ドル）と続きます。上位10社中、6社が米国企業で、3社が中国企業、1社が英国企業となっています。日本企業は、これらの上位企業とは大きく差があるものの、上位100社中3社がランクインしています。三菱グループが33億ドル（35位）、川崎重工が11億ドル（72位）、富士通が5億ドル（98位）となっています。

こうしてみると、世界的に軍事支出が伸びていますが、主に中国をはじめとした東アジアや、ウクライナ情勢を含めて欧州の伸びが多いくなっていることが分かります。2023年に入り、中東情勢の変化も有り、更にこれらの支出が伸びていくことが予想されます。
国別では、中国や、直近でのウクライナの伸びが目につきますが、2023年に日本の防衛費も大幅増額となるため、これらのランキングでどの位の位置になるかを見ておく必要があります。

防衛売上高の上位企業を見ると、米国企業と中国企業が圧倒的に大きく、日本企業はこの領域ではかなりの回グループに位置していることが分かります。日本の防衛費増額となっても、日本国内企業から調達できるわけではなく、米国からの調達が大きくなっています。

今後日本の防衛をどうするのか、その場合の防衛装備品の調達を海外に依存するのか、国内企業からの調達を増やすべきか、などの論点が多くありそうです。

戦争・軍事衝突が起きることは望ましいことではありませんが、防衛は必要なことでもあり、そのための準備として日本企業がどう関わるか、検討していくことが必要になっていきそうですね。

出典：
SIPRI（ストックホルム国際平和研究所）
https://www.sipri.org/sites/default/files/2023-04/2304_fs_milex_2022.pdf

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