業界ウォッチ 2025年10月7日

【データから読み解く】主要国の人口増減率

今回は「主要国の人口増減率」を取り上げてご紹介いたします。

前回、世界の移民人口数を取り上げました。移民の人口は、その国の人口にもカウントされるので、人口増減率に影響してきます。人口増減率には、自然増減率(出生数-死亡数)でカウントされるものと、社会増減率(国の場合は移民・移住者)でカウントされるものの合計で算出されます。計算式で表すと「人口増減率」=「自然増減率」+「社会増減率」となります。日本の場合、少子高齢化・人口減少が課題として取り上げられることも多く、最近では外国人問題・移民についても取り上げられることが多くなりました。日本の人口減少を、移民(外国人)の増加で補っているという報道もされています。

それでは、移民人口が国の人口増減にどのくらい影響しているのでしょうか。日本の場合、外国人の増加(社会増)が、どのくらい人口減少(自然減)を補っているのでしょうか。また、日本以外の主要国では、人口の増減率がどのように推移し、自然増減率、社会増減率はどのように推移しているのでしょうか。移民の増減を示す社会増減率は、人口増減にどの程度影響があるのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。

Population growth rate

まず、日本の人口増減率の推移を見てみます。1960年は0.81%で、そこから上昇トレンドで1973年には1.28%と1960年以降のピークに達します。以降下降トレンドとなり、2010年には-0.03%とマイナスに転じます。以降、人口増減率マイナスが続いており、2025年には-0.61%となっています。自然増減率を見ると、1960年は0.97%で、以降上昇トレンドとなり1973年にピークの1.31%となります。以降は下降トレンドとなり、2005年に-0.03%とマイナスに転じます。以降は自然増減マイナスが続き、2025年には-0.65%となっています。社会増減率は、1960年代から1980年代半ばまではマイナスでしたが、以降はプラスに転じ、2016~2019年は0.2%台の増加となっています。コロナ禍のマイナスを経て、2022年以降は0.1%台の増加が継続しています。

フランスの人口増減率を見ると、1960年~1970年半ばまで1%弱の増加でしたが、1975年以子は0.5%前後の増加が継続しています。1999年から2013年にかけて0.5-07%前後で推移しますが、2014年以降は下降トレンドなり2025年は0.15%となっています。自然増減率は1960年代から2000年代にかけて、0.6%台から0.4%台へと緩やかに下降していますが、2010年以降は下降トレンドが強くなり、2025年は0.01%となっています。社会増減を見ると、1999-2006年に0.2%台の増加となっており、2016年から2025年にかけても0.15~0.2%台の増加が続いています。

ドイツは、人口増減率の変動が大きくなっており、2025年は-0.8%となっています。自然増減は1972年以降マイナスが続いています。社会増減でみると、1960年代にプラスとなっており、冷戦終結前後に1%近くのプラスが続いています。また、2009年~2023年も社会増減プラスが続いています。

イタリアはの人口増減は、1960~1980年頃までは自然増減プラスが大きく人口増が続いていましたが、1980~2000年頃までは微増となっています。2000年代に入り、社会増プラスが続き、人口増加が続いています。2007年頃からの自然減の影響が強くなり、人口増減率は2014年にマイナスに転じ。2025年は人口増減率-0.35%となっています。

英国の人口増減率は、1960年代は0.6%程度でしたが、1970年代にマイナスに転じています。1980年代半ば以降は、人口増減率が上昇トレンドなっています。特に。1990年代半ば以降は、社会増の影響が大きくなっており、人口増加率の大半を社会増加率が締めるようになっています。

米国はの人口増減率は、1960年は1.74%でそたが、1973年に0.96%にまで低下しました。以降は1%前後でほぼ横ばいで推移し、コロナ禍で2020年に0.17%に落ち込みますが、以降は0.5%前後で推移しています。自然増減率は、1960年の1.5%から下降トレンドが続いており、2025年は0.16%となっています。社会増減率は1960-1980年代は0.2%前後でしたが、1990年代以降は0.4~0.5%台で推移しています。コロナかを経て2022年以降は0.3%台後半で推移しています。

こうしてみると、人口減少に明確に転じているのは、日本とイタリアですが、どの国も人口増加率自体は、近年下降トレンドとなっていることが分かります。また、日本でも2000年代以降、人口の社会増(移民増)となってきましたが、日本以外の国では、さらに、移民増加による社会増の影響が大きくなっていることが分かります。

今後、海外の人口増減の動向を見たうえで、日本の人口をどう考えるのか、移民をどう考えるのか、よく吟味して検討する必要が高くなっていると言えそうですね。

資料:
Our World Data, Population growth rate, 1950 to 2100
Our World Data, Natural population growth