業界ウォッチ 2025年6月10日

【データから読み解く】国内スタートアップ投資動向

今回は「国内スタートアップ投資動向」を取り上げてご紹介いたします。

前々回は「国別VC投資・ユニコーン企業の動向」取り上げ、前回は、「世界のCVC投資動向」を取り上げてみました。世界・日本のVC・CVC投資動向や、CVC投資割合などを見てみました。

今回は、日本国内のスタートアップ投資動向を見てみたいと思います。これまでで、世界的にVC投資を見ると、世界と日本では投資の規模感が大きく異なっていることが分かったので、特に投資主体別に国内の投資家(VC、事業会社、金融機関等)と、海外の投資家(海外VC、海外法人)の投資動向を見てみます。

それでは、日本のスタートアップ投資がどのくらいの規模でどのように推移しているのか、海外の投資家の割合はどのくらいで推移いるのでしょうか。また、投資件数はどのように推移し、国内投資家と海外投資家でどのような違いがみられるのでしょうか。また投資先1案件あたりの投資規模は、国内投資家と、海外投資家でどのような違いがあるのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。
Startup investment trends

スピーダ「2024年 Japan Startup Finance」に国内スタートアップ投資動向がまとめられていますので、同資料から、国内すアートアップ投資の推移を見てみます。

国内投資家・海外投資家合わせた投資額合計の推移を見ると、2014年は1,810億円でしたが、そこから概ね増加トレンドで推移し、2021年には1兆2,472億円のピークに達します。以降は減少トレンドとなり、2024年は8,622億円となっています。このうち海外投資家による投資は、2014年は86億円でしたが、以降は微増トレンドで推移し2020年は507億円となっています。しかし、翌年2021年に4541億へと激増しています。その翌年は大きく落ち込み、444億円となり、以降は微減トレンドで推移し、2024年には112億円となっています。

次に投資家タイプ別の国内スタートアップ投資先件数の推移を見てみます。最も投資件数が多いのが、国内VCとなっています。2014年は702件でしたが、そこから増加トレンドで2022年には2812件とピークに達します。翌年以降は減少トレンドとなり、2024年は2433件となっています。次いで投資先件数が多いのが(国内)事業法人です。概ね国内VCと同様な動きを示しています。2014年は513件でしたが、そこから増加トレンドで2022年には1801件とピークに達します。以降は減少トレンドとなり2024年には1576件となっています。また、海外投資家によるスタートアップ投資件数を見てみると、2014年は61件でしたが、そこから微増トレンドで、2022年に269件とピークに達します。以降は微減トレンドで、2024年は165件となっています。

次に投資家タイプ別投資額中央値を見てみます。投資案件の額の大きさがどのように変化しているのか、見てみます。2024年時点で最も大きいのは海外VCで、次いで海外法人、金融機関、事業法人、国内VCと続きます。

海外VCは2014年は1.2億円でしたが、2019年まで増減しながら概ね横ばいで、2020年以降は増加トレンドとなり、2021年に2.42億円とピークに達します。以降は減少トレンドで2023年に1.54億円に落ち込みますが、2024年には2億円に回復しています。海外法人の投資推移を見ると、2014年は0.6億円でしたが、以降増減を繰り返しています。2019年に急増し5.6億円となっています。翌年2020年に1億円へと急減しますが、また翌年2021年には5.21円へと急増します。以降は1億円台にまで落ち込み。2024年は1.5億円となっています。一方、国内VC、事業会社は概ね1億円未満、0.5億円前後で概ね横ばいとなっていることが分かります。

こうして見ると、全体的に国内スタートアップへの投資額、投資件数が伸びているように見えますが、その中身を見ると、国内投資家中心に、0.5億円程度の小規模投資案件を数多く手がけてきたということが分かります。一方、海外投資家は、投資件数自体は少ないものの、1回あたりの投資額が大型であることが分かります。

今後、国内スタートアップ投資を増加させていくには、海外投資家(海外VC、海外法人)からの大型投資案件を増やしていくよう、海外投資家に魅力のある投資案件を提示していくこと、国内投資家向けには、より大きな投資が行えるような環境を構築していくことがっ必要になると言えそうです。

資料:
スピーダ「2024年 Japan Startup Finance」