今回は「国別VC投資・ユニコーン企業の動向」を取り上げてご紹介いたします。
近年、世界経済の成長エンジンとしてスタートアップ企業への注目が高まっています。その中でも、企業価値10億ドル以上の未上場企業、いわゆる「ユニコーン企業」は、イノベーションや新産業の創出、雇用拡大の象徴として各国が育成に力を入れています。ユニコーン企業の数やベンチャーキャピタル(VC)投資額は、その国のスタートアップ・エコシステムの成熟度や競争力を示す指標となっており、経済政策や産業戦略の重要なテーマとなっています。
その中で、日本のスタートアップ企業は、世界のスタートアップと比べて小粒だという指摘も見られます。
それでは、世界主要国のVC投資はどのように推移し、日本と比較してどのように違っているのでしょうか。ユニコーン企業の数・金額ベースでみると、世界と比べて日本はどのくらいの位置にあるのでしょうか。日本のユニコーン企業は世界のユニコーン企業と比べてどのくらいの違いがあるのでしょうか。
実際に数字を見て確認したいと思います。
まず、国別VC投資の推移を見てみます。世界的にみて最もVC投資額の規模が大きいのは米国で、その推移を見てみます。2000年は453億ドルでそこから一旦2003年の114億ドルまで落ち込みますが、以降は増加トレンドとなっています。2021年にはピークの3640億ドルに達しますが、以降急減し2023年に1526億ドルとなり、2024年に1916億ドルに回復しています。
米国の次に大きい中国は、2000年は1.7億ドルで以降2013年まで10億から50億ドル台で推移しています。2014年から163億ドルと急増し以降増加トレンドで2018年に1034億ドルに達しますが、以降急減し、2021年に849億ドルと回復するものの移行は減少トレンドで2024年は381億ドルとなっています。中国の次にVC投資が大きい英国の動向をみると、2000年は8.2億ドルで、しばらく横ばい傾向ですが、2005年(5.2億ドル)以降緩やかに増加トレンドとなっています。2021年に急増しピークの381億ドルとなりましたが、以降減少トレンドとなり2024年は164億ドルとなっています。
日本は2000年に1.2億ドルで以降ほぼ横ばいとなっており、2012年いこう微増トレンドとなり2021年に70億ドルとピークに達した以降は微減トレンドで2024年は40億ドルとなっています。
次に国別のユニコーン企業の評価額の合計を見てみます。トップは米国で2兆5654億ドル(ユニコーン企業数687社)となっています。次いで中国(7025億ドル、同162社)、英国(1904億ドル、同55社)、インド(1718億ドル、同68社)、シンガポール(921億ドル、同16社)と続きます。日本は、108億ドル(同8社)と21番目の順位になっています。
次に国別のユニコーン企業の1社平均評価額(評価額総計÷ユニコーン企業数)を見てみます。最も高いのはシンガポールで、57.5億ドルとなっています。次いで豪州(54.3億ドル)、スウェーデン(49億ドル)、中国(43.4億ドル)、ベルギー(39.8億ドル)、米国(37.3億ドル)と続きます。日本は13.5億ドルと、ランキングでも下位に位置付けられています。
こうして見ると、日本のVC投資自体が、国の経済規模の割には小さい状況で、低空飛行を続けていることが分かります。またユニコーン企業を見ても、ユニコーン企業数も少なく、評価額総額でみても、香港、アイルランドといった小国と同レベルとなっており、1社あたりの評価額で見ても、世界的に評価額が低水準になっていることが分かります。
国別VC投資・ユニコーン企業の動向は、各国の経済戦略・イノベーション政策の成否を映す鏡であると考えられます。その観点から、日本はスタートアップ投資・ユニコーン創出で大きな後れを取っていると言えるでしょう。
なぜ、日本のスタートアップ企業が小粒なのか、資金調達額の小ささ、大型調達案件の少なさ、海外展開の限定的な成功、そして個々の企業規模の小ささなど、さまざまな背景が考えられます。日本としては、今後こうした要因を、スタートアップエコシスセム全体を含めて、それぞれ改革していくことが必要になると言えるでしょう。この方向性自体は、目新しいことではないので、地道に積み重ねていくことに加え、何か強い後押しとなる施策が欲しい所ですね。
資料:
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