業界ウォッチ 2025年9月16日

【データから読み解く】世界の移民人口数の推移

今回は「世界の移民人口数の推移」を取り上げてご紹介いたします。

近年、移民・外国人問題が報道で取り上げられることが多くなっています。特に、2025年7月に行われた参議院選挙で、参政党が「日本人ファースト」のキャッチコピーで躍進したのと同時に、マスコミや他の各政党が外国人問題を論点として取り上げることが多くなったことが影響しているものと考えられます。海外では、米国トランプ大統領が不法移民の取り締まりを強化したり、英国でも難民排斥デモが起きたりするなど、移民問題が取り上げられることが多くなっています。

その一方で、移民が人手不足を支える重要な役割として、積極的に受け入れるべきだという意見も数多く取り上げられています。

それでは、現在世界的に見て、移民数はどのくらいの規模で、どのように増えているのでしょうか。世界的に見て、移民は地域に向かって移り住んでいるのでしょうか。移民受け入れ上位国は、どの国で、移民数はどのように推移しているのでしょうか。

また、人口に占める移民の比率の上位国はどのような国があるのでしょうか。移民比率はどのように推移しているのでしょうか。その中で、日本はどの位の位置づけにあるのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。
world immigrant population

 まず、世界の移民人口数(ストック)の推移を見てみます。世界全体で見て、1990は1.54億人でしたが、そこから増加トレンドで2010年に2.21億人と2億人を超え、2024年には3.04億人と3億人を超える規模にまで拡大しています。最も移民人口が多い受け入れ地域(移民が向かった地域)は、欧州・北米が最も多く、2024年で1.55億人となっています。次いで多いのが北アフリカ・西アジア地域で、約5400万人(同2024年)となっています。以降、サブサハラ・アフリカ(約2400万人)、東アジア&東南アジア(約2260万人)、中央アジア&南アジア(約2000万人)、中南米(約1750万人)、オセアニア(約990万人)と続きます。

次に、移民人口数上位国を見てみます。2024年時点で、最も移民人口数が多い国は米国で、5238万人となっています。1位の米国と大きな差がありますが、2番目に移民人口数が多い国はドイツで、1675万にとなっています。以降、サウジアラビア(1368万人)、英国(1185万人)、フランス(919万人)、スペイン(887万人)と続きます。

日本は341万人となっており、マレーシアの381万人よりも少なくなっています。

2005年から2024年の推移を見てみると、ほとんどの国は移民人口数が増加していますが、ロシアだけが移民数が減少しています。ロシアの移民人口数は2005年の1167万人から、2024年の761万人へと減少しています。

次に各国の移民人口比率を見てみます。人口100万人未満の小国を除いたうえで、2024年時点で最も移民人口比率が高いのはカタールで76.7%となっています。次いで高いのはUAEの74.0%となっています。以降、クウェート(67.3%)、バーレーン(52.3%)、シンガポール(48.7%)、ヨルダン(45.7%)、オマーン(43.2%)、香港(41.3%)、サウジアラビア(40.3%)、スイス(31.1%)、オーストラリア(30.4%)と続きます。

その他主な先進国の移民人口比率を見てみると、2024年でカナダが22.2%、ドイツ19.8%、英国17.1%、米国15.2%、フランス13.8%、イタリア11.0%、韓国3.5%、日本2.8%となっています。

こうして見ると、移民人口は世界的に増加しており、米国を中心として、欧州各国で増加していることが分かります。また移民人口比率で見ると、比率の高い国は、中東・産油国・資源国の国が多く、そのほか所得水準が高い小国が上位に来ていることが分かります。

移民人口比率の推移を見ると、中東・産油国で2015年から2024年にかけて落ち込んでいる国が多く、その他の国では概ね比率が上昇していることが分かります。また、日本の移民人口は、欧米主要国と比較すると、絶対数で見ても少ないことが分かります。また移民人口比率で見ても、欧米主要先進国と比較しても低い水準にあることが分かります。

日本の移民政策については、推進派と反対派で考え方が分かれるかもしれません。そのため、まずは移民人口数がどうなっているのか、世界と比較して日本がどうなっているのか、数字で確認したうえで議論することの重要性が高まってきそうですね。

資料:
United Nations “International Migrant Stock 2024”