BBT MBA Alumni

修了生対談企画 第三弾!

2019年3月にBBT大学院を修了した藤森恵子さんにお話をお伺いします。藤森さんは2018年8月にASIMOV ROBOTICS(アシモフ ロボティクス)株式会社を設立、RPA導入コンサルティングサービスを提供しています。今回の対談ではBBT大学院に入学したきっかけや在学時のエピソード、起業の経緯やRPA導入コンサルティングについて等、幅広くお話をお伺いしています。インタビュアーは株式会社Aoba-BBT代表取締役の柴田巌が務めます。

※こちらの記事はYouTube「BBT ビジネスチャンネル」にて公開中の対談を特別に記事化したものです。

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大学史上初のW受賞でMBAを卒業した後、学びを活かして起業

柴田:藤森さんはBBT大学院のMBA課程を修了後、RPAロボットを使って業務改善DXを遂行するアシモフ ロボティクス株式会社で代表取締役CEOを務めていらっしゃいます。卒業時には学長賞という卒業研究で一番最高位の賞と、成績優秀賞を受賞。史上初のダブル受賞という快挙を成し遂げ、その学びをもって卒業研究のビジネスプランの内容で起業されました。まず、御社の事業概要についてお聞かせいただけますか。

藤森:アシモフ ロボティクス株式会社は、RPAというソフトウェアを活用して、中堅・中小企業の業務効率化とDX推進コンサルティングを行っている会社です。RPAを扱っている会社の多くはRPAというツールの販売にフォーカスしていますが、私たちはRPAを活用して業務効率化をコンサルティングするサービスを提供しています。更に、RPAだけでなく、 現在はBIやウェブアプリ、AI-OCR等、様々なテクノロジーを活用しながら、お客様のニーズに合わせたDX推進のコンサルティングを行っています。

RPA

卒業研究で、それまでの自分の経験をすべて活かしたビジネスモデルを構築

柴田:そもそも、どのようなきっかけで起業しようと思われたのですか?

藤森:まず、経歴のところから少しお話させていただきますと、私はもともと大学が理工学部。そこでシステム工学を学んでいました。大学卒業後は戦略系コンサルティング会社に勤務して経営コンサルタントを目指していたのですが、何か専門性が欲しいと思い、公認会計士資格を取得。公認会計士として仕事をする中で、決算書をチェックするよりも、その前段階で会社の方にヒアリングしながら業務フローを構築することが非常に好きだったので、その仕事で独立しました。ところが、独立とほぼ同時に子供ができまして。育休産休のブランクが結構長かったので、復職してからも自分に自信が持てず、コンサルタントとして今後もやっていくために、一度きちんと知識を整理しておきたいと考え、MBAでビジネスのフレームワークをもう一回学び直して、お客様のために活かして行こうと考えて、BBTの門を叩いたのです。

ビジネスのヒントを得たのは、卒業研究でした。BBT大学院では卒業研究が必須で、起業するにしないにもかかわらず、ビジネスプランを考えなければなりません。あれこれビジネスプランを考えていくうちにRPAにたどり着き、プランを練っているうちに「これは本当にビジネスになるかもしれない」と思ったんです。RPAコンサルティングはITの知識と業務フローの知識の両方が求められる特殊な領域で、大学でシステム工学を学び、公認会計士として業務フローコンサルティングをやっていた私の経験とドンピシャ。「これは私がやるべき仕事だ」と思いました。

当初は一人で、コンサルタントとしてやっていこうと思っていましたが、BBT大学院の仲間たちが「一緒にやりたい」と集まってきてくれたので、会社としてやっていけるかもしれないと思ったのが起業のスタートです。

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柴田:その卒業研究で学長賞を受賞され、さらに成績優秀賞も受賞されたわけですね。BBT大学院では、先生の多くが企業経営の経験者だったり、起業家だったりするので、優秀な成績を取るのは難しく、子育てしながらの勉強は非常に大変だったと思います。いま振り返って、プライベートと学びの両立でご苦労された思い出はありますか?

藤森:私自身はあまり大変だった記憶はありません。夢中になってしまうと、のめり込んでしまうタイプなので。ただ、あるとき同級生と「こんなイベントに参加している、こんな授業に出ている」という話になり、「そんな時間ないですよね?」と聞かれて「え?寝なきゃいいじゃない」と答えたらしいです。全く覚えていないのですが、どうも睡眠時間を削ってやっていたようです。

柴田:自分をドライブできる方だからこそ、いま経営者としてもドライブしていらっしゃるのでしょうね。起業して5年目に入られたそうですが、そのうち3年が企業経営上は不透明性、不確実性の高いwithコロナの時代。DXが進み、会社に集まって仕事をするというスタイルから、リモートでシステムを使って仕事をするというスタイルに大きく変化しました。いま振り返って、 起業家経営者として、どのような5年でしたか?

藤森:人もお金も全てが無く、IT企業なのに私自身はエンジニアではないという本当にゼロからのスタートでした。 まずは、ビジネスモデルを成立させるための特殊なライセンスを取得する交渉を一人で行いましたが、半年ぐらいかかりました。そのため、起業は2018年の8月ですが営業がスタートできたのが、 2019年の4月。そして、最初に売り上げが上がったのが、10月。そこまでは本当にきつかったですね。

「いいですね」とは言っても契約はしてくれない。そもそもサービスを提供するためのサーバーすら、アカウントを開いてもらえず、立ててもらえない状態で。それでもRPAツールのベンダーが開催するユーザー会やパートナー会でバンバン名刺を配って「私はこういうことをやりたいんです」と伝え続けたところ、ビジネスの特殊性に興味を持ってくれた競合会社の方が「それが実現するところを見てみたい」と言ってくださって、ほぼボランティアでサーバーをたててくれて、ようやくサービスがスタートしました。ようやくビジネスができるようになり、2019年10月に初めての契約。喜びも束の間、やっと営業がうまくいきかけた翌年にいきなりコロナ禍となり、企業のIT投資がピタッと止まることに。「これはもう終わったな」と正直思いました。一方で、「環境が大きく変化するときには既存のビジネスに絶対に隙間が生まれる。だから、必ずどこかに私たちが入り込むチャンスがあるはずだ」とも思いました。 そこで、ターゲットである中堅・中小企業に向けて、ビジネスにならなくてもいいから、何か私たちが提供できるものがないかと必死で考えました。で、きっと資金調達とリモートワークのやり方に悩んでいると考えて、4月のロックダウン後のわずか1ヶ月後の5月にセミナーをスピード開催し、ものすごい集客ができました。

コロナ禍で変わったのは、地方企業にリーチできるようになったことです。地方でのITサービスへのニーズの高さはわかっていたのですが、リソースが限られるベンチャーにとって、営業段階で現地まで行くことは難しく、諦めていました。ですが、コロナ禍を経てウェブミーティングが浸透したことで、一気に営業を拡大することができたのです。

私たちは地方創生を謳っていますが、地方の企業の方と話をすればするほど、提案力のあるIT企業が少ないと実感します。ツールのみであれば全国レベルで販売しているメーカーがたくさんあるのでいくらでも買えます。ですが、何が自社の課題であるかわからず、必要なツールにたどり着けないというのが地方中堅・中小企業の現状で、それに応えられるIT企業がいないのです。私たちはそうしたお客様に課題の抽出からツールの導入、活用支援まで一気通貫のサービスをウェブミーティングと現地への訪問を組み合わせて提供しています。ハイブリッドスタイルにすることで、低価格でのサービス提供が実現しました。コロナ禍は、弊社のビジネスにおける一つの分岐点だったと思います。

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柴田:早稲田大学の理工学部を卒業されて、コンサルティング会社の勤務経験もあり、公認会計士の資格もお持ちであれば、外資問わず大企業でキャリアアップして行くことも比較的容易だと思うのですが、なぜ起業の道を選ばれたのですか?

藤森:公認会計士時代の顧客は大企業が中心でしたが、あるきっかけで税理士法人にて中小企業向けコンサルティングサービスを始めた際に、大企業と中小企業のデジタル推進にものすごく大きなギャップあるということに驚いたんです。

中堅・中小企業にコンサルティングをしたくても、デジタル化が遅れていて、判断材料となる数字が適切に取れないのです。私は財務も会計はもちろん、経営もわかるし、システム工学をやっていたからITにも土地勘がある。私のキャリアを中堅・中小企業のIT推進に活かすことができるのではないかと使命感を持ちました

柴田:藤森さんのもう1つ素晴らしい魅力だなと思うところは、一匹狼で行くのではなく、ちゃんと仲間を巻き込んで、経営チームを作りながら、会社を大きくしていく、そういうことに汗をかく事を惜しまない、そういう人柄でいらっしゃることです。いまどのようなチームで経営をしてらっしゃるのですか?

藤森:起業当初は一人でしたが、2019年7月にBBT大学院の同級生である中村がCMO(営業の責任者)として参画してくれました。彼が、「BBTで学んだことで、今までは楽しかった会社の飲み会がつまらなく思えてきた。愚痴ではなく前向きな仕事の話がしたい」とこぼしたのを聞き、「一緒やろうよ!」と説得し続けて仲間になってもらいました。

CTOの齊藤は、エンジニアを紹介して欲しいと頼んだのですが、あちこちに「こんなに良い会社があるよ」と宣伝しているうちに「そんなに良い会社だったら自分が入ったほうがいい」となり、仲間に入ってくれました。彼は転職したばかりで、まさか本人が来てくれるとは思っていませんでした。

2人とも大学院の同級生なので共通言語があるといいますか、経営陣として相談しやすいですし、ビジネスではなく、同級生としてスタートした信頼関係がそのまま残っているので非常にやりやすいと感じます。

自分がやる意味を徹底的に考え抜き、一次情報をきちんと集める姿勢を学んだ

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柴田:BBT大学院のMBAコースは実践的な学びということを特徴にし、強みにしようという願望と目標を持って運営していますが、起業・事業経営してきた5年間で、当時の学びで役に立っていることはありますか?

藤森:たくさんありますが、一番は現在のビジネスのベースを創った卒業研究ですね。指導教官の余語先生がすごく厳しい方で、個別指導のたびにバッサリ切られ、「今日も満身創痍」と友達に言いながらがんばっていました。

特に、強く言われたことは「なぜ私がやるべきか?」「なぜ私でなければできないのかを考えなさいということ。とにかく考えて考えて考えて、歯を食いしばりすぎて差し歯が折れました(笑)。そのくらい考え抜いて確立したビジネスモデルなので、創業から5年経った今も、根幹は全く変わっていません私たちはやはりこれでやっていくべき、という確固たるビジネスモデルとして出来上がっています。

また、「とにかく一次情報をちゃんと掴んで来なさい」とも言われました。そこで、BBTや前職など、あらゆる人脈をかき集めて、何十件もインタビューに行きましたね。今、事業の幅を拡大するために、様々なサービスを検討していますが、BBTでの教えに従い、まず、きちんと一次情報を取ってくるところから始めています。メンバーにも「ネット情報はやめなさいと。必ずお客様の声を聞いて考えなきゃダメだよ」と伝えています。そのうえで、なぜ自分達がやる必要があるのかという点を検討しています。

柴田:そもそもBBT大学院でMBAを学ぼうと思われたきっかけは何だったのですか?

藤森:産休育休でブランクが長かったこともあり、一旦、知識を整理したいと思ったからです。経営コンサルティング会社の先輩方は皆さんMBAを取っていましたので相談したところ、「知識が欲しいだけなら本で充分。せっかく大学院に行くなら、必ず同級生や教授との人脈をしっかり築いてくるんだよ」と背中を押してもらって、決心しました。

数ある大学院の中からBBTを選んだのは、若い方から役員クラスの学生までいて、教授陣も実務家が中心で、さまざまな経験をお持ちの方がいらっしゃり、幅広い人脈を築けると思ったからです。お金がかかることなので迷いもありましたが、BBT大学院なら大前先生のマッキンゼーのメソッドを少しかじれるんじゃないか、それなら充分価値はあるなと納得ができたのでBBTで学ぼうと心を決めました。

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柴田:いま振り返ってみて、どんな価値を得ることができましたか?

藤森:人脈という面では卒業後も実際にビジネスでプラスになっています。現在の経営メンバーもそうですが、同級生がお客様になってくださったり、先生が知っている会社をご紹介くださったり。資金調達の際には、先生から夜中にメールで指導をしていただいたこともありました。実は授業を受けてない先生にも関わらずです。本当にいろいろな方と繋がることができたと思います。

柴田:MBAを取ろうかどうしようか、どの大学院にしようか悩んでいた頃の自分にいまタイムマシンに乗って戻るとすれば、どういったお声をかけますか?

藤森:迷うこと無いから行けばいいんじゃないですか?そんな感じですね。

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地方企業にIT活用人材を育成し、地方創生を支援し続けたい

柴田:ここから未来のことをお聞きしたいと思います。プロフェッショナルとしてのご自身の未来像、あるいは御社の未来の構想やビジョンについて簡単にお聞かせいただけますか?

藤森:先ほども少し触れましたが、地方創生がキーワードかなと思います。本当に仕事をやればやるほど、地方ではDXどころかデジタル化が進んでない会社さんがまだたくさんあるなと実感します。コロナ禍を通して築き上げたリアル+リモートのハイブリッド形式であれば、低価格かつハイクオリティのサービスを届けられると確信しているので、(RPAだけでなく)新しいテクノロジーも取り入れつつ、このスタイルでの事業拡大を目指します

また、経営者目線での課題の抽出からITソリューションの導入、導入後の活用支援までワンストップで提供できるのが弊社の強みなのですが、特に活用支援が今後は非常に重要になると考えます。その活用支援として、私たちがやりたいのが地方の中堅・中小企業で『IT活用人材』を育てること。IT活用人材とは、ITの良さが分かっていて、何に使えば効果が出るのかがわかり、抵抗なく使いこなせる人と私は定義していますが、このIT活用人材が沢山いる企業が今後強い会社になると思っています。そういった人材であれば、社内で比較的短期間で育てられますが、育成にはノウハウが必要となりますので、私たちがご支援できればと考えています。

柴田:サービスの提供を通じて、クライアント企業の中でITを活用できる人材を育成して行くという効果も大いに期待できるということですね。

藤森:実はこれはお客様から教えていただいた弊社の付加価値の一つなんです。意図してはいなかったのですが、月1回のミーティングの際のやり取りでIT活用について自然と教えていたんです。2年前まではRPAは何かについてはもちろん、エクセルとcsvファイルの区別もつかなかった方が、いつの間にか後輩に「RPA化する時は、こういう風に業務整理しなきゃだめだ」と言えるまでになっていました。専門家と話しながら日常的にITツールを使うだけでこんなにも効果が出るんだとそのとき気づきました。 eラーニングなどのIT人材育成ツールよりも、やはり自分の会社で自分の仕事を題材にして学ぶほうが学習効果は大きいようです。私たちが伴走しながらプロジェクトを推進することで、地方の中堅・中小企業にIT活用人材が育っていく。一人がインフルエンサー的な存在としてどんどん社内に広げることで、たくさんの方にIT活用人材になっていただきたいと思っています。

柴田:地方の企業から御社にご相談が来るときの第一声は、どのようなものですか?

藤森:「DXが大事なのはわかっているが何をどこから始めていいかわからない」という質問が一番多いですね。また、DXが進まない理由の言い訳として「うちは特殊なんです」という方も多いのですが、特殊でない企業なんてないですよね。どこか他と差別化できるところがなければ儲りませんから。ですから、特殊だということを言い訳にせず、どこまでがIT化できて、どこからは人がやるべきことかという業務棚卸しがまず必要なんです。そこはノウハウが必要なので、「一緒にやっていきましょう」といった感じになります。

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結び・メッセージ

柴田:最後に、いまから自分を磨くために学ぼうかなと思ってらっしゃる方や、同じBBTのプログラムを修了されて、学んだことを社会に活用していこうと思っていらっしゃるアルムナイの方などに向けて、藤森さんから一言頂けますでしょうか。

藤森:まず、これからどういった形で、どこで学ぼうかと悩まれている方にとって、大きな判断基準の一つに金額としてのコストや時間的コストがあると思います。ですが、価値は与えられるものではなく自分で決めるもの授業料をどのくらいの価値に変えるのかは自分次第です。しっかり目標を決めて、その目標と今の自分の立ち位置とのギャップを埋めるためにすべきことは何か、という意識を常に持っていれば、どんな場所でもしっかりと学び(価値)を得られると思います。

これは在校生の方も同じで、今、自分が学んでいることをどこで活かすかということをしっかりと見据えながら進んでいただきたいと思います。もちろんうまくいかないこともあると思いますが、そういう時は声をあげて「助けて欲しい」「私はこれができない」「私にはこのスキルが無い」と、どんどん言っていいと思います。

私も起業直後に、たった一人でパートナー会に出たときには、そこらじゅうに名刺を配って「こういったことできるんですか? こういったことを知っている人はいませんか?」と必死で言って歩きました。そうすると、必ず助けてくれる人が出てくるものです。ですから、困ったときは外にアピールすることが大事それが普通にできるのが大学院という集団の中で学ぶメリットではないかと思います。

柴田:本日はアシモフ ロボティクス株式会社代表取締役CEOの藤森恵子さんをお招きしてお話をお聞きいたしました。藤森さん、どうもありがとうございました。

藤森:ありがとうございました。

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藤森恵子さんプロフィール

早稲田大学理工学部電気工学科システム工学専攻を卒業後、戦略系経営コンサルティング会社を経て、有限責任監査法人トーマツ入所。独立後、株式会社ビジネスナビゲーションにてJ-sox対応の内部統制構築に関するコンサルティングに携わる。また、公認会計士田中宏征事務所にて金融機関の会計監査を実施。2014年より税理士法人にて、ITを用いた中小企業の業務効率化コンサルテイングに携わる。

2018年8月ASIMOV ROBOTICS株式会社設立。2019年3月ビジネス・ブレークスルー大学大学院 修了。ASIMOVのビジネスモデルをベースとした新規事業計画は「大前研一学長特別賞」と「卒業研究優秀賞」を大学院史上初となるW受賞。

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修了生対談企画 第三弾!

2019年3月にBBT大学院を修了した藤森恵子さんにお話をお伺いします。藤森さんは2018年8月にASIMOV ROBOTICS(アシモフ ロボティクス)株式会社を設立、RPA導入コンサルティングサービスを提供しています。今回の対談ではBBT大学院に入学したきっかけや在学時のエピソード、起業の経緯やRPA導入コンサルティングについて等、幅広くお話をお伺いしています。インタビュアーは株式会社Aoba-BBT代表取締役の柴田巌が務めます。

※こちらの記事はYouTube「BBT ビジネスチャンネル」にて公開中の対談を特別に記事化したものです。

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大学史上初のW受賞でMBAを卒業した後、学びを活かして起業

柴田:藤森さんはBBT大学院のMBA課程を修了後、RPAロボットを使って業務改善DXを遂行するアシモフ ロボティクス株式会社で代表取締役CEOを務めていらっしゃいます。卒業時には学長賞という卒業研究で一番最高位の賞と、成績優秀賞を受賞。史上初のダブル受賞という快挙を成し遂げ、その学びをもって卒業研究のビジネスプランの内容で起業されました。まず、御社の事業概要についてお聞かせいただけますか。

藤森:アシモフ ロボティクス株式会社は、RPAというソフトウェアを活用して、中堅・中小企業の業務効率化とDX推進コンサルティングを行っている会社です。RPAを扱っている会社の多くはRPAというツールの販売にフォーカスしていますが、私たちはRPAを活用して業務効率化をコンサルティングするサービスを提供しています。更に、RPAだけでなく、 現在はBIやウェブアプリ、AI-OCR等、様々なテクノロジーを活用しながら、お客様のニーズに合わせたDX推進のコンサルティングを行っています。

RPA

卒業研究で、それまでの自分の経験をすべて活かしたビジネスモデルを構築

柴田:そもそも、どのようなきっかけで起業しようと思われたのですか?

藤森:まず、経歴のところから少しお話させていただきますと、私はもともと大学が理工学部。そこでシステム工学を学んでいました。大学卒業後は戦略系コンサルティング会社に勤務して経営コンサルタントを目指していたのですが、何か専門性が欲しいと思い、公認会計士資格を取得。公認会計士として仕事をする中で、決算書をチェックするよりも、その前段階で会社の方にヒアリングしながら業務フローを構築することが非常に好きだったので、その仕事で独立しました。ところが、独立とほぼ同時に子供ができまして。育休産休のブランクが結構長かったので、復職してからも自分に自信が持てず、コンサルタントとして今後もやっていくために、一度きちんと知識を整理しておきたいと考え、MBAでビジネスのフレームワークをもう一回学び直して、お客様のために活かして行こうと考えて、BBTの門を叩いたのです。

ビジネスのヒントを得たのは、卒業研究でした。BBT大学院では卒業研究が必須で、起業するにしないにもかかわらず、ビジネスプランを考えなければなりません。あれこれビジネスプランを考えていくうちにRPAにたどり着き、プランを練っているうちに「これは本当にビジネスになるかもしれない」と思ったんです。RPAコンサルティングはITの知識と業務フローの知識の両方が求められる特殊な領域で、大学でシステム工学を学び、公認会計士として業務フローコンサルティングをやっていた私の経験とドンピシャ。「これは私がやるべき仕事だ」と思いました。

当初は一人で、コンサルタントとしてやっていこうと思っていましたが、BBT大学院の仲間たちが「一緒にやりたい」と集まってきてくれたので、会社としてやっていけるかもしれないと思ったのが起業のスタートです。

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柴田:その卒業研究で学長賞を受賞され、さらに成績優秀賞も受賞されたわけですね。BBT大学院では、先生の多くが企業経営の経験者だったり、起業家だったりするので、優秀な成績を取るのは難しく、子育てしながらの勉強は非常に大変だったと思います。いま振り返って、プライベートと学びの両立でご苦労された思い出はありますか?

藤森:私自身はあまり大変だった記憶はありません。夢中になってしまうと、のめり込んでしまうタイプなので。ただ、あるとき同級生と「こんなイベントに参加している、こんな授業に出ている」という話になり、「そんな時間ないですよね?」と聞かれて「え?寝なきゃいいじゃない」と答えたらしいです。全く覚えていないのですが、どうも睡眠時間を削ってやっていたようです。

柴田:自分をドライブできる方だからこそ、いま経営者としてもドライブしていらっしゃるのでしょうね。起業して5年目に入られたそうですが、そのうち3年が企業経営上は不透明性、不確実性の高いwithコロナの時代。DXが進み、会社に集まって仕事をするというスタイルから、リモートでシステムを使って仕事をするというスタイルに大きく変化しました。いま振り返って、 起業家経営者として、どのような5年でしたか?

藤森:人もお金も全てが無く、IT企業なのに私自身はエンジニアではないという本当にゼロからのスタートでした。 まずは、ビジネスモデルを成立させるための特殊なライセンスを取得する交渉を一人で行いましたが、半年ぐらいかかりました。そのため、起業は2018年の8月ですが営業がスタートできたのが、 2019年の4月。そして、最初に売り上げが上がったのが、10月。そこまでは本当にきつかったですね。

「いいですね」とは言っても契約はしてくれない。そもそもサービスを提供するためのサーバーすら、アカウントを開いてもらえず、立ててもらえない状態で。それでもRPAツールのベンダーが開催するユーザー会やパートナー会でバンバン名刺を配って「私はこういうことをやりたいんです」と伝え続けたところ、ビジネスの特殊性に興味を持ってくれた競合会社の方が「それが実現するところを見てみたい」と言ってくださって、ほぼボランティアでサーバーをたててくれて、ようやくサービスがスタートしました。ようやくビジネスができるようになり、2019年10月に初めての契約。喜びも束の間、やっと営業がうまくいきかけた翌年にいきなりコロナ禍となり、企業のIT投資がピタッと止まることに。「これはもう終わったな」と正直思いました。一方で、「環境が大きく変化するときには既存のビジネスに絶対に隙間が生まれる。だから、必ずどこかに私たちが入り込むチャンスがあるはずだ」とも思いました。 そこで、ターゲットである中堅・中小企業に向けて、ビジネスにならなくてもいいから、何か私たちが提供できるものがないかと必死で考えました。で、きっと資金調達とリモートワークのやり方に悩んでいると考えて、4月のロックダウン後のわずか1ヶ月後の5月にセミナーをスピード開催し、ものすごい集客ができました。

コロナ禍で変わったのは、地方企業にリーチできるようになったことです。地方でのITサービスへのニーズの高さはわかっていたのですが、リソースが限られるベンチャーにとって、営業段階で現地まで行くことは難しく、諦めていました。ですが、コロナ禍を経てウェブミーティングが浸透したことで、一気に営業を拡大することができたのです。

私たちは地方創生を謳っていますが、地方の企業の方と話をすればするほど、提案力のあるIT企業が少ないと実感します。ツールのみであれば全国レベルで販売しているメーカーがたくさんあるのでいくらでも買えます。ですが、何が自社の課題であるかわからず、必要なツールにたどり着けないというのが地方中堅・中小企業の現状で、それに応えられるIT企業がいないのです。私たちはそうしたお客様に課題の抽出からツールの導入、活用支援まで一気通貫のサービスをウェブミーティングと現地への訪問を組み合わせて提供しています。ハイブリッドスタイルにすることで、低価格でのサービス提供が実現しました。コロナ禍は、弊社のビジネスにおける一つの分岐点だったと思います。

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柴田:早稲田大学の理工学部を卒業されて、コンサルティング会社の勤務経験もあり、公認会計士の資格もお持ちであれば、外資問わず大企業でキャリアアップして行くことも比較的容易だと思うのですが、なぜ起業の道を選ばれたのですか?

藤森:公認会計士時代の顧客は大企業が中心でしたが、あるきっかけで税理士法人にて中小企業向けコンサルティングサービスを始めた際に、大企業と中小企業のデジタル推進にものすごく大きなギャップあるということに驚いたんです。

中堅・中小企業にコンサルティングをしたくても、デジタル化が遅れていて、判断材料となる数字が適切に取れないのです。私は財務も会計はもちろん、経営もわかるし、システム工学をやっていたからITにも土地勘がある。私のキャリアを中堅・中小企業のIT推進に活かすことができるのではないかと使命感を持ちました

柴田:藤森さんのもう1つ素晴らしい魅力だなと思うところは、一匹狼で行くのではなく、ちゃんと仲間を巻き込んで、経営チームを作りながら、会社を大きくしていく、そういうことに汗をかく事を惜しまない、そういう人柄でいらっしゃることです。いまどのようなチームで経営をしてらっしゃるのですか?

藤森:起業当初は一人でしたが、2019年7月にBBT大学院の同級生である中村がCMO(営業の責任者)として参画してくれました。彼が、「BBTで学んだことで、今までは楽しかった会社の飲み会がつまらなく思えてきた。愚痴ではなく前向きな仕事の話がしたい」とこぼしたのを聞き、「一緒やろうよ!」と説得し続けて仲間になってもらいました。

CTOの齊藤は、エンジニアを紹介して欲しいと頼んだのですが、あちこちに「こんなに良い会社があるよ」と宣伝しているうちに「そんなに良い会社だったら自分が入ったほうがいい」となり、仲間に入ってくれました。彼は転職したばかりで、まさか本人が来てくれるとは思っていませんでした。

2人とも大学院の同級生なので共通言語があるといいますか、経営陣として相談しやすいですし、ビジネスではなく、同級生としてスタートした信頼関係がそのまま残っているので非常にやりやすいと感じます。

自分がやる意味を徹底的に考え抜き、一次情報をきちんと集める姿勢を学んだ

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柴田:BBT大学院のMBAコースは実践的な学びということを特徴にし、強みにしようという願望と目標を持って運営していますが、起業・事業経営してきた5年間で、当時の学びで役に立っていることはありますか?

藤森:たくさんありますが、一番は現在のビジネスのベースを創った卒業研究ですね。指導教官の余語先生がすごく厳しい方で、個別指導のたびにバッサリ切られ、「今日も満身創痍」と友達に言いながらがんばっていました。

特に、強く言われたことは「なぜ私がやるべきか?」「なぜ私でなければできないのかを考えなさいということ。とにかく考えて考えて考えて、歯を食いしばりすぎて差し歯が折れました(笑)。そのくらい考え抜いて確立したビジネスモデルなので、創業から5年経った今も、根幹は全く変わっていません私たちはやはりこれでやっていくべき、という確固たるビジネスモデルとして出来上がっています。

また、「とにかく一次情報をちゃんと掴んで来なさい」とも言われました。そこで、BBTや前職など、あらゆる人脈をかき集めて、何十件もインタビューに行きましたね。今、事業の幅を拡大するために、様々なサービスを検討していますが、BBTでの教えに従い、まず、きちんと一次情報を取ってくるところから始めています。メンバーにも「ネット情報はやめなさいと。必ずお客様の声を聞いて考えなきゃダメだよ」と伝えています。そのうえで、なぜ自分達がやる必要があるのかという点を検討しています。

柴田:そもそもBBT大学院でMBAを学ぼうと思われたきっかけは何だったのですか?

藤森:産休育休でブランクが長かったこともあり、一旦、知識を整理したいと思ったからです。経営コンサルティング会社の先輩方は皆さんMBAを取っていましたので相談したところ、「知識が欲しいだけなら本で充分。せっかく大学院に行くなら、必ず同級生や教授との人脈をしっかり築いてくるんだよ」と背中を押してもらって、決心しました。

数ある大学院の中からBBTを選んだのは、若い方から役員クラスの学生までいて、教授陣も実務家が中心で、さまざまな経験をお持ちの方がいらっしゃり、幅広い人脈を築けると思ったからです。お金がかかることなので迷いもありましたが、BBT大学院なら大前先生のマッキンゼーのメソッドを少しかじれるんじゃないか、それなら充分価値はあるなと納得ができたのでBBTで学ぼうと心を決めました。

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柴田:いま振り返ってみて、どんな価値を得ることができましたか?

藤森:人脈という面では卒業後も実際にビジネスでプラスになっています。現在の経営メンバーもそうですが、同級生がお客様になってくださったり、先生が知っている会社をご紹介くださったり。資金調達の際には、先生から夜中にメールで指導をしていただいたこともありました。実は授業を受けてない先生にも関わらずです。本当にいろいろな方と繋がることができたと思います。

柴田:MBAを取ろうかどうしようか、どの大学院にしようか悩んでいた頃の自分にいまタイムマシンに乗って戻るとすれば、どういったお声をかけますか?

藤森:迷うこと無いから行けばいいんじゃないですか?そんな感じですね。

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地方企業にIT活用人材を育成し、地方創生を支援し続けたい

柴田:ここから未来のことをお聞きしたいと思います。プロフェッショナルとしてのご自身の未来像、あるいは御社の未来の構想やビジョンについて簡単にお聞かせいただけますか?

藤森:先ほども少し触れましたが、地方創生がキーワードかなと思います。本当に仕事をやればやるほど、地方ではDXどころかデジタル化が進んでない会社さんがまだたくさんあるなと実感します。コロナ禍を通して築き上げたリアル+リモートのハイブリッド形式であれば、低価格かつハイクオリティのサービスを届けられると確信しているので、(RPAだけでなく)新しいテクノロジーも取り入れつつ、このスタイルでの事業拡大を目指します

また、経営者目線での課題の抽出からITソリューションの導入、導入後の活用支援までワンストップで提供できるのが弊社の強みなのですが、特に活用支援が今後は非常に重要になると考えます。その活用支援として、私たちがやりたいのが地方の中堅・中小企業で『IT活用人材』を育てること。IT活用人材とは、ITの良さが分かっていて、何に使えば効果が出るのかがわかり、抵抗なく使いこなせる人と私は定義していますが、このIT活用人材が沢山いる企業が今後強い会社になると思っています。そういった人材であれば、社内で比較的短期間で育てられますが、育成にはノウハウが必要となりますので、私たちがご支援できればと考えています。

柴田:サービスの提供を通じて、クライアント企業の中でITを活用できる人材を育成して行くという効果も大いに期待できるということですね。

藤森:実はこれはお客様から教えていただいた弊社の付加価値の一つなんです。意図してはいなかったのですが、月1回のミーティングの際のやり取りでIT活用について自然と教えていたんです。2年前まではRPAは何かについてはもちろん、エクセルとcsvファイルの区別もつかなかった方が、いつの間にか後輩に「RPA化する時は、こういう風に業務整理しなきゃだめだ」と言えるまでになっていました。専門家と話しながら日常的にITツールを使うだけでこんなにも効果が出るんだとそのとき気づきました。 eラーニングなどのIT人材育成ツールよりも、やはり自分の会社で自分の仕事を題材にして学ぶほうが学習効果は大きいようです。私たちが伴走しながらプロジェクトを推進することで、地方の中堅・中小企業にIT活用人材が育っていく。一人がインフルエンサー的な存在としてどんどん社内に広げることで、たくさんの方にIT活用人材になっていただきたいと思っています。

柴田:地方の企業から御社にご相談が来るときの第一声は、どのようなものですか?

藤森:「DXが大事なのはわかっているが何をどこから始めていいかわからない」という質問が一番多いですね。また、DXが進まない理由の言い訳として「うちは特殊なんです」という方も多いのですが、特殊でない企業なんてないですよね。どこか他と差別化できるところがなければ儲りませんから。ですから、特殊だということを言い訳にせず、どこまでがIT化できて、どこからは人がやるべきことかという業務棚卸しがまず必要なんです。そこはノウハウが必要なので、「一緒にやっていきましょう」といった感じになります。

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結び・メッセージ

柴田:最後に、いまから自分を磨くために学ぼうかなと思ってらっしゃる方や、同じBBTのプログラムを修了されて、学んだことを社会に活用していこうと思っていらっしゃるアルムナイの方などに向けて、藤森さんから一言頂けますでしょうか。

藤森:まず、これからどういった形で、どこで学ぼうかと悩まれている方にとって、大きな判断基準の一つに金額としてのコストや時間的コストがあると思います。ですが、価値は与えられるものではなく自分で決めるもの授業料をどのくらいの価値に変えるのかは自分次第です。しっかり目標を決めて、その目標と今の自分の立ち位置とのギャップを埋めるためにすべきことは何か、という意識を常に持っていれば、どんな場所でもしっかりと学び(価値)を得られると思います。

これは在校生の方も同じで、今、自分が学んでいることをどこで活かすかということをしっかりと見据えながら進んでいただきたいと思います。もちろんうまくいかないこともあると思いますが、そういう時は声をあげて「助けて欲しい」「私はこれができない」「私にはこのスキルが無い」と、どんどん言っていいと思います。

私も起業直後に、たった一人でパートナー会に出たときには、そこらじゅうに名刺を配って「こういったことできるんですか? こういったことを知っている人はいませんか?」と必死で言って歩きました。そうすると、必ず助けてくれる人が出てくるものです。ですから、困ったときは外にアピールすることが大事それが普通にできるのが大学院という集団の中で学ぶメリットではないかと思います。

柴田:本日はアシモフ ロボティクス株式会社代表取締役CEOの藤森恵子さんをお招きしてお話をお聞きいたしました。藤森さん、どうもありがとうございました。

藤森:ありがとうございました。

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藤森恵子さんプロフィール

早稲田大学理工学部電気工学科システム工学専攻を卒業後、戦略系経営コンサルティング会社を経て、有限責任監査法人トーマツ入所。独立後、株式会社ビジネスナビゲーションにてJ-sox対応の内部統制構築に関するコンサルティングに携わる。また、公認会計士田中宏征事務所にて金融機関の会計監査を実施。2014年より税理士法人にて、ITを用いた中小企業の業務効率化コンサルテイングに携わる。

2018年8月ASIMOV ROBOTICS株式会社設立。2019年3月ビジネス・ブレークスルー大学大学院 修了。ASIMOVのビジネスモデルをベースとした新規事業計画は「大前研一学長特別賞」と「卒業研究優秀賞」を大学院史上初となるW受賞。