MBAダイジェスト 2020年3月19日

Business Model Design(3)あなたもファーストペンギンになろう ~センスメーキング理論とリーダーシップ~

『MBAダイジェスト』シリーズでは、国内初・最大級のオンラインMBAである「BBT大学院」、ならびに2つの国際認証を持つ「BOND-BBT MBAプログラム」の修了生が、両校で学ぶMBA科目のエッセンスをまとめ、わかりやすく紹介していきます。将来的にMBAの取得を検討している方や、MBAの基礎知識をインプットしたい方はご活用ください。


 
執筆:安達佳彦(外資系製薬会社勤務 BOND-BBTアルムナイ「豪研会」会長)
対象科目:Business Model Design(講師:中川 功一)

前回の寄稿ではサイエンスとアートの重要性について、創造性を養うためのアート、そして相手と議論するための武器としてのアートについてご紹介致しました。さて、今回は中川功一先生の授業を取られていれば必ず耳にすると思われる「センスメーキング」について学びましょう。今回も中川功一先生の書籍からご紹介致します。

ファーストペンギンから学ぶ!状況を意味づけ、それを他者に伝える「センスメーキング」

『戦略硬直化のスパイラル』(著者:中川功一、有斐閣)によると、センスメーキングという言葉を直訳すると、センス(sense)=意味を、メーキング(making)=つくる、となります。ここでいうセンスは状況解釈を指します。状況解釈とはつまり、自分たちを取り巻いている世界がどういうものなのか、現在の状況に意味づけをする作業になります。そしてその状況解釈を、他人に働きかけて、その人の心理の中にも同じ状況解釈を「つくり出す」ことから、センスメーキングと呼ばれます。



つまり、センスメーキング理論とは、誰かが他の誰かに納得的な状況解釈を提供することを指します。

分かりやすい例としては、表題にもある「ファーストペンギン」です。
海の中にはペンギンにとって天敵である、シャチやトドなどが存在しておりますが、ペンギンたちも生きるためには食料が必要です。そんな中、自分の危険も顧みず1匹のペンギンが海に飛び込んだ時、それを起点に次々にペンギンたちは食料を確保するために、海に飛び込みます。つまり、ファーストペンギンがとった行動は他のペンギンたちにとっては“海の中の安全”を意味することになります。このようにして、ファーストペンギンの行動は、今がチャンスだという“状況解釈”を生み出すことができるのです。

ここで少し話は逸れてしまうかもしれませんが、“これからの時代を生き抜く”を合言葉に、『BMD』で獲得したスキルを活かす、「リーダーシップ」についても少し触れていくことにします。

これからのリーダーに必要な3つの要素

さて、先ほどの「センスメーキング」というとカリスマ的なリーダーにしかできないと思っていませんか? 孫正義やジョブズ、サッカーの本田圭佑などを優れたリーダーとして想像されるかもしれません。

これらのリーダーはどのようにしてリーダーに成っていったのでしょうか。
リーダーに必要な要素として、以下の3つが大切だと考えています。

Lead the self=一人称による語らい
Lead the people=フォロワーによるリーダーによる帰属
Lead the society=社会による公認



※『リーダーシップの旅?見えないものを見る』(野田智義・金井壽宏、光文社新書)より引用

誰もが悩む、もやもやするリーダーシップ論

私自身もチームを持ち始めた頃はリーダーシップに関し、相当もやもやとした気持ちがありました。教科書的には理解できるものの、どのようにしてミッション・ビジョンを伝え、権限委譲し、対話を通じたオープンな雰囲気を作り、働きがいを醸成するのか。やろうとすればするほど、ドツボにハマっていきます。率先垂範だけではダメなのです。

私の中の結論:優れたリーダーは結果として優れたリーダーになる

そこで一つの結論に至ったのが、優れたリーダーは結果的に優れたリーダーになったということ。狙って優れたリーダーになったわけではないということです。カリスマ的リーダーになることばかり考えていると、ついフォロワーの存在が気になり、どのようにして社会(集団)から認められているのかを考えてしまいます。ここで「もやもや」としてしまう原因は、その前に考えるべきものがあるからなのです。

何かが抜け落ちています。
そうです、集団や社会ではなく、まずは「個人」です。

つい抜け落ちてしまう存在。それは自分

これらの優れたリーダーについて考える上で重要なのは、集団や社会を考える前に自分としっかりと向き合うことが大切です。自分が何者か主観的、客観的に解釈することで、集団、社会に対しどのように貢献していくのか、どのように見えない壁に立ち向かって行くのかがイメージすることができます。

Lead the selfのスタートは自らを知り、自らが変わることからスタートします。

自らを知る2つの方法

自らを知る方法は2つあります。一つは自分で知る=「内省」です。二つ目は他人から教えてもらうことです。

内省の方法も様々ありますが、私がオススメするのは禅です。永平寺別院 長谷寺(麻布)では、毎週月曜日に月曜参禅会というのが開催されています( http://chokokuji.jiin.com/zazen-monday/ )。ここでは、坐禅を組み意識的に「無」を作ります。すると最初は雑念により色々と気になることが頭の中に残りますが、次第に消えていきます。個人的なことですが、その時に頭の中に最後の方まで残っていた感情がどこから来るものなのかを見つめ、自分の思考の癖をここで見つけることもできるでしょう。

二つ目の他者からのフィードバックはOne80(ワンエイティ)や360度フィードバックを通じて、自分の悪い癖を直すという方法です。これは他人からの意見を真摯に受け止めなければなりません。そしてここで一つヒントをご紹介したいのですが、自ら変わるという時に、何か新しいことを始めなければならないとつい思ってしまいがちですが、何かを止めるということも一つの方法で、この方法は案外簡単です。

自分がもし、「会議中余計な一言を言ってしまう」「相手の話を否定してしまう」「腹を立てている時に話す」「自分がいかに賢いかを話す」などに該当するのであれば、それらの行動は“止めればいいだけ”なのです。

番外編【アートから学ぶアート】

さて、ここで一人、本物のアーティストをご紹介致します。彼の名はKENDY。現代アート(ヴィジュアルロックペイント)を専門としている日本とロシアのクォーターです。実は中川功一先生の元教え子であり、中川先生にとっての最初の“卒業生”です。KENDYとはとあるセミナーで出会い、彼が提唱する「No Border In The World」という考え方に共感し、大変有難いことに絵を描いてもらいました。

私はこれまで様々な自己分析の結果、共感力が低いことがわかっており、自分でもそれは認識していました。私はKENDYと本物のアートとの出会いから、人に対する共感を意識するようになり、本物のアートを通じて自分の共感力を見直すことにしました。まだ道半ばですが、彼が世界的なアーティストになるまで見守り、支援していきたいと考えています。

KENDYは情熱的であると同時に論理と倫理も併せ持っており、KENDYはきっとアートという既成概念を壊し、アート界のみならず、世界で活躍する人物となるでしょう。私はKENDYのためにできる限りの支援をしていきたいと思っています。

次回は『BMD』で使われるフレームワークを実践的にご紹介します。

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安達佳彦

Bond-BBT Global Leadership MBA 修了生
1981年生まれ。東京都出身。妻と息子3人の5人家族。
高校卒業後は北里大学薬学部に進学し、2004年に外資系製薬会社にMR(営業)として就職。入社後は九州の宮崎に配属となり4年勤務、その後は福岡に2年、沖縄に4年間在籍。沖縄在籍中、チームと個人で「優秀課表彰」「Best Performer賞」「欧州研修賞」の3つのAwardを同時に受賞。その後、営業以外の仕事にもチャレンジしたいという思いから、2014年9月にBond-BBT Global Leadership MBA入学、2017年2月修了。在学中にデジタルマーケティングの部署に異動となり、その後は営業のラインマネジャー、現在(2020年3月)はプロダクトマネジャーと営業のラインマネジャーを兼任している。

2019年にはビジネスコーチの資格も取得し、チームメンバーの成長支援だけではなく、講演活動や勉強会などを企画し、リーダーシップ、コーチングの普及活動を行っている。

また、Bond-BBT Global Leadership MBAのAlumni組織である「豪研会」の会長として、Alumniのネットワークを広げる活動や、「Bond製薬の会」の共同代表として、勉強会の企画や懇親の場を作ることにも従事している。
※豪研会について詳しくはこちら