MBAダイジェスト 2019年8月1日

サプライチェーン経営論(3)サプライ市場を正しく理解する

『MBAダイジェス』シリーズでは、国内初・最大級のオンラインMBAである「BBT大学院」、ならびに2つの国際認証を持つ「BOND-BBT MBAプログラム」の修了生が、両校で学ぶMBA科目のエッセンスをまとめ、わかりやすく紹介していきます。将来的にMBAの取得を検討している方や、MBAの基礎知識をインプットしたい方はご活用ください。



執筆:村上昌也(BBT大学院MBA本科修了)
対象科目:サプライチェーン経営論(上原 修 ビジネス・ブレークスルー大学大学院 客員教授、米サプライマネジメント協会(ISM)日本代表理事)

サプライ市場を理解するための4ステップ

前回まではサプライチェーン経営論の概要を見てきました。今回から、より具体的な内容に入っていきましょう。

サプライチェーン経営論を理解するために、まずは、サプライ市場を正しく理解することが重要なポイントになります。サプライ市場の理解は、次の4ステップで行います。

1.サプライ市場で取り扱う商品を理解する
2.国内、海外の市場構造を理解する
3.大手サプライヤーを理解する
4.産業構造を理解する

1〜4のステップを通して、取り扱い商品の知識が深まり、市場構造を知り、サプライヤーがどういった活動をしているのか、また、制約条件となりえる産業構造は何かが理解できるようになります。

サプライ市場の規模や構造からサプライヤーの強みや動向を理解する

それではどういった事を調べるか、具体的に見ていきましょう。

まずは市場規模です。
当該商品は国内、国外でどれぐらいの市場規模があるのかを調べます。例えば、商品の市場規模が5千億円と分かったとします。当該商品だけでなく、そこから一歩進んで、より大きな産業全体でどれぐらいの市場規模があるのかを理解しておきましょう。そうすることで、市場をより深く理解することができます。

次は市場構造です。
ここでは、市場占有率から独占市場か寡占市場かを理解します。

独占市場とは、一社でほとんどの市場シェアを占めている状態を言います。独占企業は、他企業との競争がほとんどありません。電気、水道などの公共事業をイメージして頂くと理解しやすいでしょう。

一方、寡占市場とは小数の企業で大半の市場シェアを占めている状態を言います。一般に参入障壁が高く、プライスリーダーシップを持つ企業の管理・指導により価格の安定が図られています。

市場構造からサプライヤーの強みや動向を理解することで、バイヤーとして価値ある仕事ができるようになります。

サプライヤーの生産工程・構造を理解する

次はサプライヤーの生産工程・生産構造を理解します。
例えば、自動車の生産工程は、大まかに以下のようになっています。

材料切断
 ↓
プレス加工
 ↓
ボディ工程(溶接作業)
 ↓
塗装工程
 ↓
組立工程
 ↓
検査工程

他にもカップ麺にはカップ麺の生産工程が、ビールにはビールの生産工程があります。それぞれの商品の生産工程の特色をしっかりと理解しておくことが大切です。

また、上記の生産工程がどういった構造になっているかも、併せて理解しておきましょう。
例えば、生産が自社ですべて完結しているのか、外部に委託しているのか、または、下請け構造になっているのか、特徴を理解しておきます。

日本の場合、メーカーを頂点とし、元請企業、一次請け企業、二次請け企業と続く下請け構造が多く見られます。

グローバル視点、新規・代替商品市場を理解する

ここまで理解が進むと、サプライ市場の特徴が浮かび上がってくるでしょう。
最後に忘れてはいけないのが、グローバル視点と新規・代替品市場です。

例えば、海外の主要な供給源の動向を調べてみましょう。そうすると、EUのメジャー会社がアジアに進出するなどの動向をキャッチできるかもしれません。その動向が、サプライ市場にどういう影響を及ぼすか、分析してみましょう。

また、新規・代替品については、新規スタートアップ企業がないのか、小規模でも潜在性の高い中小企業の動向などにも着目してみましょう。

ここまで分析が進むと、業界の動向や各プレイヤーの力関係がはっきりと理解できるようになります。サプライ市場の正しい理解は、効果的な購買調達戦略に繋がります。

これまでのステップを通して、サプライ市場を正しく理解するスキルを身につけていきましょう。

村上昌也

BBT大学院本科 修了生
1975年生、和歌山県東牟婁郡出身。
高校卒業後、IT業界でキャリアをスタート。
コンサルティング会社勤務時代、開発プロジェクトのテクニカルリーダーを務め、顧客企業の業績向上に寄与。
その後、複数の企業に勤務し、企業向けシステムの企画・開発・導入支援、自社のIT企画等、様々な立場から企業の課題解決に関わる。
2013年にBBT大学院に入学、2015年MBA取得。
MBA取得後に転職し、事業部長として事業活動推進のみならず、中堅・若手の育成にも情熱を持って取り組んでいる。
趣味はキーボード・ピアノ演奏。ロックバンドコンテストでの受賞歴を持つ。最近はジャズピアノに傾倒し、休日は仲間とセッションを楽しむ。

※BBT大学院MBAプログラムの受講体験談はこちら