大前研一メソッド 2020年9月28日

ホンダとGMの提携は成功するのか



大前研一(BBT大学大学院 学長 / BOND大学教授 / 経営コンサルタント)
編集/構成:mbaSwitch編集部

ホンダとGMの提携は成功するのか
編集/構成:mbaSwitch編集部

ホンダと米ゼネラル・モーターズ(GM)の両社が、北米市場での提携を拡大すると発表しました。


これまで両社は燃料電池システムや自動運転分野など次世代技術の開発で協業してきましたが、今回の提携では本業のコア事業ともいえるエンジンやプラットホーム(車台)の共通化、部品の共同調達などにも協業する範囲を拡大し、新型コロナの感染拡大で事業環境が厳しくなる中、コスト競争力を高めることを狙います。

しかしながら、ホンダとGMの染色体は、自動車業界の中でも対極に位置し、両社の提携がスムーズに進むと見るのは難しいというのが、BBT大学院・大前研一学長の意見です。

【資料】GMとHonda、北米での戦略的アライアンスに向けて合意
https://www.honda.co.jp/news/2020/c200903.html

過去の提携「ホンダ&ローバー」「GM&スズキ」は失敗に終わる

過去の提携「ホンダ&ローバー」「GM&スズキ」は失敗に終わる
ホンダという会社は、1946年に、本田宗一郎氏が前身の本田技術研究所を起業して以来、唯我独尊のところがあって、よその会社と提携してもうまくいかないことが多かった。

例えば1979年にローバーやジャガー、MG、オースチンなどのブランドを持つ英国のブリティッシュ・レイランド(のちにローバー・グループ)と技術資本提携をしたが、1994年に提携関係を解消している。最後には「1円でいいから持ってって」という売却話も出たという。同社はその後、MGローバーに改称したが、2005年に倒産、消滅した。

ホンダという会社は、「ホンダイズム」という独特の染色体を持っていて、M&A(合併・買収)を試みてもうまくいかないことが多かった。

一方、GMも1981年にスズキと資本業務提携したが、GM自身の業績悪化が深刻化し、2008年に保有するスズキ株をすべて売却している。

GMとホンダは、おそらく一番違っている染色体を持っていると思う。だからなのか、資本提携や株式の持ち合いはしない。あくまで「事業上の提携」にとどまっている。協業の範囲も北米に限定されている。

ホンダの四輪事業の低迷は深刻で、追い詰められている

ホンダの四輪事業の低迷は深刻で、追い詰められている
ホンダがこうした提携をした理由の一つは、四輪車の不振にある。2020年4〜6月の販売台数は、二輪事業が前年同期比約62%減の185.5万台、四輪事業が同40%減の79.2万台だった。


ただ、二輪車は112億円の営業黒字を確保しているのに対し、四輪車は1958億円の営業赤字へと大きく悪化した。日米での販売台数の減少が大きかった。

北米市場はホンダの2019年度の四輪事業の売り上げ約10兆円の6割弱を占めている。しかし、新型コロナの影響で、この4月の四輪車の米国販売は前年同月比で半減するなど落ち込んだ。

2017年と2018年のホンダの営業利益は二輪車より四輪車のほうが稼いでいた。それがここにきて逆転した。さすがに世界一のバイク・メーカーとして、二輪は儲かっているが、四輪車は何かやらなくてはいけないとなった。

【図】ホンダの二輪と四輪事業の営業利益
ホンダの二輪と四輪事業の営業利益

両社は車台の共同開発などの具体的な作業を2021年の初めにも始動する予定である。そのくらいホンダの四輪事業の低迷は深刻で、追い詰められているということなのだろう。GMも米国の工場の稼働率低迷に悩んでいた。どちらも北米地域での事業効率化が急務だった。

ただ、ホンダはよその会社とうまくいかないという“伝統”があり、会社の染色体というものを考えると、今後の展開はかなり厳しいものが待っていると思う。

※この記事は、『大前研一のニュース時評』 2020年9月19日を基に編集したものです。

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大前研一

プロフィール マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。スタンフォード大学院ビジネススクール客員教授(1997-98)。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)公共政策大学院総長教授(1997-)。現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長。ビジネス・ブレークスルー大学学長。豪州BOND大学教授。