旬の数字 2019年1月20日

恵方巻き今年の売れ残り廃棄は10億円分と推定



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 専任講師)


皆さんは節分に恵方巻は食べましたか?
今年もスーパーやコンビニが恵方巻キャンペーンを積極的に行ったため、食べた方も多かったのではないでしょうか。

恵方巻の起源については諸説あり、関西地方で存在していた「まるかぶり寿司」を恵方巻として大手コンビニが広めたという説などさまざまで、実は定説が存在しないイベントなのです。

そして、この恵方巻の季節になると、食糧廃棄問題が毎年クローズアップされます。今年も約10億円の恵方巻が廃棄されたとTVニュースやネットで話題となりました。この廃棄問題は、かなり前から問題視されています。SNSの普及により、販売現場の人が廃棄の現状、販売員への販売目標設定等が情報として拡散されたために、注目度が高まったのでしょう。

農林水産省も今年は、「需要に合った販売を」という要請をメーカーや流通業者に行いました。またコンビニでも、サイズ縮小、予約強化などの対策を講じましたが、残念ながら食糧廃棄が改善されたとは言えない状況です。

ちなみに、日本の食糧廃棄は、「政府広報オンライン」の「暮らしに役立つ情報」によると、年間約2,800万トン。このうち、売れ残り・期限越えの食品・食べ残しなど、いわゆる「食品ロス」は約632万トンとなり、毎日国民一人当たり”お茶碗約1杯分(約136g)の食べ物”を捨てていることとなります。(※)

これらは、食品メーカー、流通業者だけの責任とは言い切れない側面もあります。家庭においても、賞味期限切れ等の理由で食品を廃棄することもあると思います。年末年始の忘年会や新年会等で出された料理を残さなかったという人はどれだけいるでしょうか。消費者一人ひとりが意識することも大切ですね。

一方、メーカーや流通会社などもITなどを駆使して需要予測をするなどのマーケティング施策を講じ、廃棄ロスを減らす取り組みを進めています。とはいえ、恵方巻きなどは、店舗現場で調理製造する場合は売れ行きを見て調整出来ますが、大手コンビニなどは工場で大量生産し店舗販売するため、生産・販売数量の需要予測にも限界があります。

コンビニは、これまで欠品率・販売機会損失を減らし、在庫回転率など効率経営を目指してきましたが、チェーンストア型流通モデルも、時代に合わせて見直す時期にあるといえそうですね。

出所:
政府広報オンライン ※最終アクセス 2019年3月19日
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201303/4.html


執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)