旬の数字 2019年1月30日

横綱稀勢の里引退在位、12場所勝率わずか5割



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

横綱稀勢の里は、自身の進退を懸けて臨んだ2019年初場所で、初日から3連敗を喫し、4日目(1月16日)にそのまま引退表明することとなりました。横綱在位12場所の短命で、横綱として8場所連続休場(昭和以降最多)、休場率8割1分8厘(今年初場所前まで)、8連敗(過去単独最長)という不名誉な記録となってしまいました。横綱在位中の勝率は5割で年6場所制定着後の最低となります。

稀勢の里は、2017年1月の初場所後に、1998年の若乃花以来19年ぶりの日本出身の横綱となりました。2003年の貴乃花引退以降、日本人横綱が不在であったために相撲ファンは大いに盛り上がりました。横綱昇進を決めた初場所と、新横綱としての春場所と連覇をし、稀勢の里の時代が来たと思わせるような戦いぶりでした。連覇を果たした‘17年の春場所13日目の日馬富士戦で負傷しましたが、翌日から強行出場し逆転優勝したのは感動を呼びました。しかし、この怪我との戦いが稀勢の里の横綱人生となってしまいました。

怪我を完治させ再度土俵に登るという選択ではなく、横綱としての役割を全うするということを強く考えていたのでしょう。

ただ、横綱ならば、土俵に上がれば勝って当然で、ファンはそれを期待しています。それが勝率5割というのは、怪我が理由だとしても褒められるものではないでしょう。

稀勢の里の引退により、再び日本人横綱が不在という場所が続きます。大相撲を日本の国技として輝きを取り戻すために、競技人口を増やす、ジュニア世代の育成など、角界全体で活動を見直す、モンゴル相撲の研究などの取組をしていく必要がありそうです。

ビジネス界では、世界の動きや、競合の動きなどの研究、ベンチマークが普通となっています。他のスポーツ競技でもこうした取り組みが行われています。相撲界も、相撲の世界に閉じこもるのではなく、こうした外から学び取り入れていく姿勢が必要になるのではないでしょうか。

稀勢の里はこれから荒磯親方として後進の指導に当たります。稽古熱心であり、勉強熱心であったといわれる新親方ですから、今後は指導者として大相撲を盛り上げてくれると信じたいですね。いずれ大鵬、北の海、貴乃花のような、日本人の大横綱が輩出されることを期待したいですね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)