旬の数字 2018年10月17日

築地市場営業終了。83年の歴史に幕



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 専任講師)

1935年(昭和10年)に開設された築地市場が10月6日の営業を最後に83年の歴史に幕を下ろしました。

築地市場は世界でも珍しいオープン型の市場で、場外には一般の人も利用が出来る店舗が立ち並び、何しろ日本一の繁華街である銀座にも近いというアクセスのよさで、日本人だけでなく、海外からの旅行者にも大人気のスポットでした。年末などに訪れると、歩くのも大変なくらいの大混雑というのを経験した人も多いと思います。

かつては、市場に集まる生鮮食料品は、旧汐留駅から引き込み線を通して貨物で、また、隅田川岸壁の桟橋から船で運ばれていました。それが車社会へと移行し、輸送トラックによる渋滞、ターレー(小型運搬車)の接触事故多発、老朽化による安全性・衛生面の問題など、数々の課題が取り沙汰され、実は昭和40年代から移転の議論がなされてきました。

そんな人気スポットの築地市場は、築地市場が抱える渋滞や衛生面の問題の他に、水産物卸売市場としての取扱数量が減ってきたということも、移転推進派を後押ししました。

いずれにせよ、すでに半世紀前から検討されていた移転が実現するのにここまでかかったのは、築地市場の人気ゆえに、なかなか移転論議がまとまらなかったからだと言えるのではないでしょうか。

ちなみに、元々東京の卸売市場は、築地移転前は日本橋に存在していました。日本橋市場は関東大震災で崩壊したのを契機に築地に移転が決まりましたが、この移転も反対派の存在で10数年の期間が必要となったとの歴史があったそうです。

今後、築地市場跡地は、当面は東京オリンピック、パラリンピックの臨時駐車場として活用が予定されていますが、それ以降についてはこれから検討されます。銀座からのアクセスも考えて商業施設やオフィスビル等が検討されているようです。

今回の卸売市場移転が、結果として経済効果を生み、さらには将来のビジネスにも効果があるように期待したいですね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)