執筆者:PEGL事務局清水
ハーバード大学経営大学院でMBAを習得した青野仲達氏によると、同ビジネススクールには、英語を母国語としない「非ネイティブ」の学生に対して「英語で生き抜く技術」を教えるプログラムが存在するのだと言います。
同プログラムの狙いは「非ネイティブ」の学生が言葉の壁を越えて、円滑に授業に溶け込めるようにすることです。その最重要項目が「エッセイの書き方」です。ここで言う「エッセイ」とは、相手に対して伝えることを前提に「自分の考えを整理して書いたもの」を指します。
本当に使える英語を学ぶための最も効率的で、最も有効な方法は「エッセイの書き方」を習得することだと、青野氏は同プログラムを受講して確信したと言います。
今回は青野氏の著書『グローバル時代を生き抜くためのハーバード式英語学習法』(秀和システム)から、エッセイの書き方を紹介します。
ハーバード大学でも通用する「英語のエッセイ」といっても難しいことは何もなく、下のようにたった5行で軸を構成します。
5行エッセイを書くためには「3つのルール」というものが存在します。以下の(ルール1~ルール3)の通りです。
結論とは「要は何が言いたいか」です。「夏が好きだ」は明確に「自分の考え」を述べています。それに対して例えば「夏は暑い」はどうでしょう?一見すると結論のように見えますが、「自分の考え」を主張しているわけではありませんので、結論にはなりません。「状況を描写している」だけに過ぎません。状況を描写するのではなく、意見を主張するのが結論のコツだと青野氏は述べています。
結論を述べた後は次に、理由を挙げます。理由は結論を支える柱となるものです。誰かの意見を聞くと、人は「なぜ、そういう意見なのか?」と理由を知りたくなります。会話でもそうですし、文章を読む場合でも同じです。理由を挙げるときの数は3つが多すぎず、少なすぎずちょうどいいです。
このときのコツは、考える段階では3つと言わず思いつく限りの理由をなるべくたくさんリストアップしてみることです。その中から、最も説得力を持ちそうな理由を3つ厳選してください。同時に、それらの理由がお互いに「似ていない」ことが大切です。なるべく多面的な視点を提示することによって、エッセイの説得力が増します。
上で挙げた理由は
【理由1】:日が長い。
【理由2】:楽な服装ができる。
【理由3】:家族と一緒に旅行ができる。
――と毛色が異なるものです。
そのほかにも、
・ビールがうまい。
・野球観戦ができる。
・虫捕りができる。
といった毛色が異なる理由が思い浮かびます。
次の作業は「結論を繰り返す」ことです。結論を繰り返す目的は「念を押すこと」です。結論を伝えることが最重要ですので、「話は聞いたが、結論は忘れた」ということになっては意味がありません。最初に述べた結論を「もう一度伝える」ことで万全を期しましょう。
結論を繰り返す方法は二つあります。
一つは反復です。最初の結論を文字通り、そのまま反復します。1行目が「I like summer best.」なら終わりも「I like summer best.」で締めくくります。これが最も簡単に結論を繰り返す方法です。
もう1つの方法は「言い換え」です。結論は同じなのですが(変えてはいけません)、言い方を換えます。「夏が一番好きだ」は「好きな季節は夏だ」と同じ意味です。最初の結論は次の文のように言い換えることができます。
「My favorite season is summer.(私の好きな季節は夏だ。)」
反復にするか言い換えにするかはどちらでも構いません。「最初は無理をせずに反復し、慣れてきたら言い換える」ことを青野氏は推奨します。
これで、このたった5行のセンテンスでエッセイの骨格が完成しました。
5行エッセイを書く事に慣れてきたら、少し内容を膨らませてみましょう。5行エッセイで挙げた理由に証拠を付け加えます。理由は結論を支える柱でした。証拠はその理由を支える具体的な情報です。動かし難い事実や数字は絶好の補強材料となります。「なるほど、確かにそうか」と相手に対して納得させやすくなります。証拠の数は1つの理由について2つか3つくらいが適当です。最も説得力がある証拠を2つか3つ選んで下さい。証拠が1つしかないという状況は避けましょう。「理由の根拠はたったそれだけ?」と相手に思われてしまいます。
【理由1】~【理由3】を補強する証拠を考えてみましょう。
《証拠1》:The sun rises before 6am.(日の出は朝6時前だ。)
《証拠2》:The sun sets after 7pm.(日没は夜7時過ぎだ。)
日の出と日没の時刻という具体的な定量情報を提示することによって、「日が長い」という理由を裏付ける証拠になります。
《証拠1》:We have a loose dress code at work.(会社ではクールビズの制度がある。)
《証拠2》:We need neither coats nor jackets at home.(家ではコートも上着もいらない。)
クールビズという制度やコートも上着が不要という具体例を挙げて「楽な服装ができる」という理由を補強しています。
《証拠1》:Our firm encourages us to take two weeks off in summer.(会社は2週間の休暇を夏に取ることを奨励している。)
《証拠2》:My children have no school in August.(子供たちの学校が8月は休みになる。)
理由が「家族と一緒に」ですから、家族の構成員である「自分」と「子どもたち」を例に取り上げ、それぞれの休みが取れる事情を説明しています。会社で休暇が取れるという環境と学校が夏休みという状況を組み合わせて、「一緒に旅行ができる」という理由を補強しているというわけです。
いかがでしたでしょうか。
核となるトピック・センテンスを上記の肉付けし、5行エッセイからスタートして発展させることができます。このようにA4判の紙を1枚で自分の考えを思う存分伝えることができるようになります。「どこから何を書き始めたらよいのか分からない」という時、みなさんもこのフレームワークをぜひ使ってみてください。
【参考】グローバル時代を生き抜くためのハーバード式英語学習法(最終アクセス:2020年5月7日)
http://www.amazon.co.jp/dp/4798043176
pp.6-7、pp.31-37、pp.118-127