業界ウォッチ 2020年12月8日

教員ちょっと気になる「世界の工業用金属価格の高騰」

今週は「世界の工業用金属価格の高騰」を取り上げてご紹介いたします。

今年の秋以降、工業用の金属価格が高騰しているようです。
米ウォールストリート・ジャーナル紙では、投資家が新型コロナウイルスのワクチンや、経済刺激策によって世界経済の回復化促され、生産活動が急増すると見込んでいるからだと指摘していました。


確かに、いわゆる金(ゴールド)や、原油といった商品先物価格(コモディティ)とは異なり、鉄鉱石、銅、アルミニウムなどの商品先物価格は、工業生産活動と連動するところがあるため、実需を見越した動きをしているとも考えられます。


それでは、こうした工業用の金属商品価格がどのような動きを見せているのでしょうか。また、原油やゴールドとの価格推移とどのような違いがみられるのでしょうか。世界の主要株価の推移とどのような違いがみられるのでしょうか。
実際に数字を見て確認したいと思います。


 まず、工業用金属の先物価格推移を見てみます。「鉄鉱石」の価格は2月時点で一度落ち込み、3月に再び落ち込んでいます。5月まで年初来-10%近い水準でしたが、そこから上昇トレンドに転じています。9月中旬に一度年初来36%の上昇となり、一旦落ち込むものの、12月に入ると急上昇し、年初来50%上昇の水準となっています。

「銅」の価格は、年初から3月(年初来-22%)まで下落トレンドでしたが、そこから上昇トレンドに転じ、秋以降上昇トレンドが加速し12月には年初来25%の水準となっています。 「アルミニウム」の価格は、概ね「銅」に近い動きを示しており、4月初旬(年初来-20%)まで下落トレンドでしたが、以降上昇トレンドに転じ、12月には年初来15%の水準となっています。

 次に、同じ商品先物である「原油」、「ゴールド(金)」価格の推移を見てみます。「原油」は年初から下落トレンドが大きく、4月下旬には年初来-68%にまで落ち込んでいます。以降上昇トレンドに転じるものの、年初来-40%近くで推移しています。秋以降、再び上昇トレンドに転じますが、12月初旬で年初来-28%の水準にとどまっています。


「ゴールド」の推移を見てみると、年初から3月初旬ごろまでは変動幅が小さかったのですが、3月下旬に年初来-5.3%と一度マイナスに転じます。以降上昇トレンドとなり、8月初旬には年初来28%と高値を付けましたが、以降は緩やかな下降トレンドとなり、12月初旬で16%となっています。


 新型コロナ・移動制限などの影響で、「原油」需要の落ち込みの影響と、経済危機時には「ゴールド」に資金が流れるという影響で、このような動きになっているものと考えられます。

 参考までに、世界の主要株式市場の価格推移と比較してみます。日経平均、米ダウ工業平均、英FTSE100の何れも、3月下旬に年初来-30%台と大幅に落ち込みましたが、以降は回復トレンドなっています。

英FTSEは回復の度合いが弱く、6月~11月にかけて加工トレンドとなりますが、11月以降上昇に転じるものの、12月初旬時点で年初来-14%となっています。日経平均、米ダウ工業平均は、3月以降上昇トレンドなっており、10月下旬以降急上昇しており、12月初旬には日経平均が11.9%、米ダウが5%となっています。

こうしてみると工業用金属の価格は、新型コロナの影響で3~5月ごろまでは、工業生産・経済活動が止まったことによる影響が大きかったものの、以降は回復傾向にあることが分かります。10月下旬以降の急騰は、実需だけでなく、金融緩和、ワクチン開発動向、米大統領選結果による株式市場へのマネーの流入に加え、商品先物に流れ込んできているものとも考えられそうです。


新型コロナの影響、ワクチンの実効性、米大統領選後の経済政策など、先を見通すのが困難な状況ですが、金融市場・マネーの動向に振り回されるのではなく、実体経済が回復に向かうことを願いたいところですね。