業界ウォッチ 2019年12月9日

教員のちょっと気になる「公共交通機関のバリアフリー化」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今週は「公共交通機関のバリアフリー化」を取り上げてご紹介いたします。

先日、国土交通省が、2018年度の公共交通機関におけるバリアフリー化の進捗状況に関する調査結果を公表しました。調査・集計結果によると、障がい者用トイレの設置が前年(2017年)より1.5ポイント増加しており、車両等においてはノンステップバスが約2.8ポイント増加するなど、バリアフリー化が着実に進捗しているようです。

確かに近年、東京都内の公共交通機関では障がい者用トイレ設置やエレベーター設置工事を進めている、もしくは完了した駅などが増えているようにも思います。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて増設しているのかとも思ったのですが、バリアフリー法などの関係もあるようです。

それでは、公共交通機関では実際にどの程度バリアフリー化が進んだのでしょうか。また、どの公共交通機関での進捗が進んでいるのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。

まず、駅・ターミナル等の「旅客施設」におけるバリアフリー化の推移を見てみます。

「視覚障がい者誘導用ブロック」は、バリアフリー法の基準に適合した施設は02年時点で72%でしたが、そこから増加トレンドで、90%を超えた07年以降は微増から横ばいトレンドとなっています。

スロープやエレベーター等を設置する「段差の解消」は、02年時点では39.3%でしたが、そこから増加トレンドで09年には77%に達し、2010年以降は緩やかな増加トレンドで推移し、18年は90.4%となっています。

「障がい者用トイレ」は02年時点では13%でしたが、以降急増しており09年には75%に達し、以降は緩やかな増加トレンドで推移し18年には86.7%となっています。

次に、乗り物(車両等)のバリアフリー化の推移を見てみます。

「航空機」は02年に24.5%でしたが、以降増加トレンドで13年には90%に達し、以降は微増・横ばいトレンドとなっています。

「鉄軌道」は、02年には19.4%でしたが、以降増加トレンドで、基準変更により06年に一旦落ち込んでいますが以降は増加傾向を取り戻し18年には73.2%に達しています。

「ノンステップバス」は、02年には6.5%でしたが、以降は増加トレンドが続き18年には58.8%となっています。

「旅客船」は、02年に2.1%でしたが、こちらも以降増加トレンドで18年には46.2%となっています。

こうしてみると、公共交通機関のバリアフリー化が着実に進んでいることが分かります。もしかしたら、まだまだバリアフリー化の導入水準が物足りないと思う人もいるかもしれませんが、16年前(2002年)の水準と比較してみれば、確実に進捗していることが分かります。

とはいえ、国内での設置基準での進捗にしかすぎませんので、来年の2020年の東京で開催されるパラリンピックでは、東京の交通機関のバリアフリー度合いがどの位の水準だとと評価されるのか気になるところです。これを契機として、日本のバリアフリー関連の施設整備水準・サービス水準を世界にアピールできるようにしたいところですね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)