業界ウォッチ 2018年11月26日

教員のちょっと気になる「中国の独身の日EC取扱高」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今回は、「 中国の独身の日EC取扱高 」を取り上げてご紹介いたします。

中国では、毎年11月11日がインターネット通販の大規模セール「独身の日」として盛り上がりを見せています。中国のネット通販最大手アリババ集団の今年の「独身の日」取扱高は、2135億元(約3.5兆円)と過去最高を記録しました。この金額は、2017年の楽天のネット通販“年間”取扱高(約3.4兆円)を超える金額を超える規模の取引が、「独身の日」の1日で達成されたことになります。

それでは、このアリババの「独身の日」の取扱高がどのくらい伸びているのか、楽天の年間取扱高と比較するとどのような違いがみられるのでしょうか。また、米国のネットショッピングが最も盛り上がるといわれる12月初旬のネット通販セール「サイバーマンデー」と比べると、どのくらいの規模感の違いがあるのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。

ここでは、中国(アリババ)、米国、日本(楽天)のEC取扱高を比較するためにドルベースに換算することとします。

まず、アリババの「独身の日」の取扱高の推移を見ると、2009年は約0.7億ドルでしたが、2012年には30億ドルを超え、2015年に約143億ドルと100億ドルを超え、2018年には308億ドルと高い伸びを示していることが分かります。

次に、楽天の年間国内EC取扱高(流通総額)を見ると、2009年は85億ドルで、そこから2011年まで順調に伸びますが、為替換算の影響があるものの2012~14年にかけてやや横ばい傾向となります。そこから2017年にかけて増加トレンドとなりますが、アリババ「独身の日」取扱高の増加トレンドが急激なために、差が徐々に詰まっています。このペースだと、2019年以降には楽天の年間取扱高と、アリババの「独身の日」1日の取扱高が逆転することが予想できます。

次に米国のサイバーマンデー(※)の売上高(取扱高)の推移を見てみます。これは、米国全体のオンラインショッピング(EC)のサイバーマンデー1日の売上高です。中国のアリババ1社と比較すると、2011年までは「サイバーマンデー」の売上高が上回っていますが、2012年にはアリババの「独身の日」の取扱高に抜かれ、以降は差が開くばかりとなっています。

このように、日本企業EC大手楽天の年間取扱高、米国全体のネット通販セール日「サイバーマンデー」と比較してみると、アリババの「独身の日」1日での取扱高のスケールの大きさがよく分かります。

前回もEC取引額の国際比較で、中国の大きさが確認できましたが、中国の「独身の日」は本当に「半端ない」ですね。

※サイバーマンデー:米国のインターネット通販の一大セール日。米国で感謝祭の翌週月曜日に職場からのネットショッピング利用が急増することから、「サイバーマンデー」と呼ばれるようになった。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)