業界ウォッチ 2019年4月8日

教員のちょっと気になる「 世界の飲食料市場 」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今回は、「 世界の飲食料市場 」を取り上げてご紹介いたします。

先日、農林水産省の政策研究機関である農林水産政策研究所が、主要34か国を対象とした将来の飲食料市場規模の推計結果を公開しました。同推計によると、世界全体で2030年に1364兆円となり、2015年の890兆円の約1.5倍に拡大する見込みとなっています。

世界的に、新興国を中心とした人口増加と平均所得の増加によって飲食料市場が拡大することは予想がつきます。ただ、数量ではなく、金額ベースの推計なので実際に新興国のウェイトが高いのかどうか気になるところです。

それでは地域別に見たときに飲食市場はどの位伸びているのでしょうか。また生鮮品、加工品、外食市場のそれぞれの伸びがどうなっていて、地域的な違いがあるのでしょうか。具体的に数字を見て確認したいと思います。

まず、地域別の市場規模推移を見てみると、アジアが2015年の424兆円から2030年の794兆円へと約1.9倍の伸びを示しています。アジア市場は’15年に世界の47.6%を占めていましたが、’30年には58.2%と更にウェイトを高めています。北米、欧州はそれぞれ‘15年223兆円、211兆円から、’30年の284兆円、242兆円と微増にとどまっています。南米・大洋州は‘15年32兆円から’30年45兆円と1.4倍の伸びを示していますが、世界全体から見るとウェイトが小さくなっています。

次に、生鮮品、加工品、外食市場それぞれで、主要国・地域の推移を見てみます。

生鮮品市場では中国がダントツに大きく、137兆円(‘15年)から243兆円(’30年)へと約1.8倍に伸びています。次いでインドが大きく、36兆円から80兆円へと2.2倍の伸びを示しています。

加工品市場でも中国が突出しており、95兆円(’15年)から204兆円(‘30年)へと2.2倍に伸びています。次いで欧州が大きいのですが、97兆円から105兆円へ1.1倍の微増となっています。

外食市場を見ると米国が突出しており、76兆円(‘15年)から118兆円(’30年)と1.5倍に伸びています。ついで欧州が大きく60兆円から75兆円へと1.2倍の伸びとなっています。

このように見ると、世界の飲食料市場が大きく伸びていますが、その大半がアジア(特に中国)の比重が高いことが分かります。生鮮品、加工品、外食別でみると、地域差が明確になり、飲食の加工・サービス要素が加わると所得階層の高い国・地域の割合が高くなることが分かります。

人口規模=胃袋数だけで見ればアジアが突出することは想定できますが、懐ぐあいを加味すると、付加価値・サービスの必要な加工品・外食では、まだまだ欧米市場の存在感があると言えそうです。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)