業界ウォッチ 2019年8月26日

教員のちょっと気になる「人工肉・代替肉市場」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今週は「人工肉・代替肉市場」を取り上げてご紹介いたします。

今年の5月に米ビヨンド・ミートがナスダック上場し、米国で人工肉・代替肉がブームになっているようです。米ビヨンド・ミートは、大豆などの植物性材料を使う人工肉・代替肉を販売しており、業績も伸びているようです。同様に植物由来の人工肉を提供する米インポッシブル・フーズ(未上場)も、米バーガーキングと協業するなど注目を集めているようです。

こうした、人工肉・代替肉など、食品に関わる課題技術で解決する企業を「フード・テック」、肉類に関しては「ミート・テック」と呼ばれているようです。

では、ビヨンド・ミートの業績はどのくらい伸びているのでしょうか。また人工肉・代替肉はどのくらいの規模で、米国以外でどのくらいの市場があるのでしょうか。実際に数字で確認してみたいと思います。


まず、米ビヨンド・ミートの売上高の推移を見てみます。四半期ベースでみても売上高が増加トレンドを示しています。2017年第1四半期は約620万ドルでしたが、’18年第3四半期から増加ペースが加速し、’19年第2四半期では6725万ドルにまで拡大しています。

次に、バーガー販売数量の伸びを、従来型バーガーと植物由来(植物ベース)のバーガー/サンドイッチで比較してみます。数量の伸びでいうと、従来型バーガーは、ほぼ横ばい・微減というトレンドですが、植物由来バーガー./サンドイッチは、’16年以降高い増加率を見せており、’18年、’19年では10%近い伸びを示しています。

国別に代替肉の市場規模を見てみると、やはり米国が最も大きく約12億ドルとなっています。次いで英国(約4億ドル)、ドイツ(約2億ドル)、イタリア(1.7億ドル)、フランス(約1.3憶ドル)と続きます。

こうしてみると、米国を中心として人工肉・代替肉の市場が伸びており、それに欧州主要国が続いているように見えます。とはいえ、日本でも、この分野でインテグリカルチャーといったスタートアップが注目を集めており、不二製油や大塚食品などの既存の食品関連企業でもこうした人工肉・代替肉分野に取り組を進めています。

スタートアップやイノベーションといえば、IT関連が注目されがちですが、それだけではなく、こうした食品・バイオ関連の分野にも注目していく必要がありそうですね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)