業界ウォッチ 2020年8月24日

教員のちょっと気になる「フォートナイト」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今週は「フォートナイト」を取り上げてご紹介いたします。

先日(8/13)、人気ゲーム「フォートナイト(Fortnite)」を開発する米エピックゲームズが、スマートフォンのアプリ配信・課金プラットフォーム(アプリストア)が独占に当たるとして、米アップルと米グーグルを提訴しました。有力ゲーム会社が、アップル等の巨大IT企業に反旗を翻したとして、話題となりました。

これを受けて、両アプリストア「AppStore(アップル、iOS端末)」、「Google Play(グーグル、Android端末)」からフォートナイトが削除される事態となりました。

一方、アップル側は、エピックゲームズが規約違反をしたとして反論しています。単にエピックゲームズとアップル/グーグルの対立というだけでなく、巨大ITとアプリ開発者側の力関係の変化、影響力の行方がどうなるのかという観点で、ゲーム関係者だけでなく、IT業界、ビジネス・経済関係者からも注目を集める状況となっています。

確かに、巨大プラットフォーマーの行方という観点で興味深い論点ですが、そもそもフォートナイトがどのようなゲームアプリなのかご存じない方も多いのではないでしょうか。対戦バトル型のゲームアプリではありますが、「バトルモード」だけでなく「ロイヤルパーティ」モードで音楽ライブイベントに参加できることでも話題になりました。日本ではミュージシャンの米津玄師氏がバーチャルライブイベントを行ったことで話題となりました。

それでは、フォートナイトは世界でどの位のユーザー数なのでしょうか。またどの位伸びているのでしょうか。ゲームでどの位の収入を得ているのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。

まずフォートナイトのユーザー(登録者数)の推移を見てみます。2017年8月時点では100万人でしたが、そこから増加トレンドで18年6月には1億人を突破し(1.25億人)、20年3月には3.5億人まで拡大しています。

次に、ゲーム収入の上位タイトルのランキングを見てみます。2019年のゲームタイトル別の収入をみると、Free to payゲーム(基本無料ゲームでアプリ内課金有も含む)では、フォートナイトがトップの18億ドルとなっています。次いで、Dungeon Fighter Online(日本では「アラド戦記」)、Honour of Kings(テンセントの「王者栄耀」、グローバル版・日本版は「伝説対決 -Arena of Valor-」)の16億ドルと続きます。ちなみに、Pokemon GO(Niantic)は6位の14億ドルとなっています。

ゲームが好きな方、詳しい方は知っている有名人気ゲームタイトルが並んでいるかもしれませんが、あまりゲームをしない方は、馴染みの少ないゲームタイトルが多いかもしれません。

また、アプリ収入の分配割合(開発者とApple/Google等プラットフォーマーの取り分)を見てみると、有料アプリやアプリ内課金の場合、開発者が7割、Apple/Googleが3割となっています。サブスク型有料課金の場合は、1年目は開発者7割、Apple/Google3割となっていますが、2年目以降継続した場合は開発者が85%、Apple/Googleが15%となっています。アプリ内広告やアプリ経由の物販の場合は開発者が100%の取り分となっています。

こうしてみると、フォートナイトの登録者数が3.5億人、収入規模が18億ドル(約1900億円)と大きいことが分かります。ゲーム収入規模が大きくなったものの、プラットフォーマーに30%手数料を取られるのは痛いことが、今回のエピックゲームズが提訴に踏切ったという解釈もされています。

また、ゲーム収入規模でみると、フォートナイト以外にも中国テンセント系のゲームが上位に入っていることも分かります。政治的に米中対立で、IT業界にも波及しているところに、中国テンセントは、今回のフォートナイトの動きをどう見ているのでしょうか。

今後のアプリ開発者とプラットフォーマーとの力関係の動向が気になるところです。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)