業界ウォッチ 2019年7月8日

教員のちょっと気になる「国内冷凍食品市場」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今週は「国内冷凍食品市場」を取り上げてご紹介いたします。

先日(4月22日)、日本冷凍食品協会が、2018年の冷凍食品の生産・消費動向の調査結果を発表しました。同調査によると、‘18年の国内消費量は289万トンと対前年比1.3%の増加となっています。国民一人当たり消費量では22.9kgと前年の22.5kgを上回る消費量となっています。

確かに、最近冷凍食品に関するニュースを見かけることも多くなっており、共働きや単身世帯の増加で、需要が伸びているとの指摘も見られます。

それでは、冷凍食品はいつごろから、どの程度の伸びを示しているのでしょうか。また、家庭需要がどのくらい伸びていて、どのような商品が売れているのでしょうか。実際に数字で確認してみたいと思います。

まず、冷凍食品の総消費量と国産品・輸入品の内訳の推移を見てみます。1980年は国内消費量が70.3万トンでしたが、そこから増加トレンドで2006年に一度ピークの269万トンとなりますが、そこから‘09年の235万トンまで落ち込みます。以降は再び増加トレンドとなり、’18年の289万トンと過去最高の消費量となっています。

国産品と輸入品の内訳をみると、国産品は増加トレンドできましたが、‘90年代後半から横ばい傾向となっています。輸入冷凍食品では冷凍野菜が90年以降が増加しており、’18年には105万トンにまで拡大しています。

国産品の中では、調理食品の割合が高く、特にフライ類以外の調理食品が2011年以降増加トレンドとなっており、‘18年には105万トン、フライ類を合わせた調理食品は141万トンとなっています。

次に、国内冷凍食品生産量を、外食店などに向けた業務用と家庭用に分けた用途別のトレンドを見てみます。業務用は’02年に102万トンでしたが、そこから微減傾向が続き‘18年には89.9万トンとなっています。家庭用は、’02年は45.9万トンでしたが、増加トレンドが続き、‘18年は68.7万トンとなり、業務用に近づいてきています。

具体的な冷凍食品品目で何が多く生産・消費されているのか見てみると、‘18年はコロッケがトップの17.4万トンとなっており、うどんが17.3万トンで2位と肉薄しています。以下、炒飯(8.3万トン)、ギョウザ(7.7万トン)、カツ(6.5万トン)、ハンバーグ(6.5万トン)と続きます。

このように見てみると、冷凍野菜輸入を別にすると、家庭用冷凍食品で、フライ類以外の調理品が伸びていることがわかります。フライ類以外でいうと、うどん、炒飯、ギョウザ、ハンバーグ、スパゲッティ、ラーメン類などが上がってきます。

冷凍食品は、調理の手軽さや、保存が効くだけでなく、最近は味も良くなっているといわれています。昔の冷凍食品のようなイメージではなく、おいしいく手軽に長期保存できるものと捉えなおして、今後の生活者のライフスタイルを考える必要がありそうですね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)