業界ウォッチ 2019年1月28日

教員のちょっと気になる「OECD諸国の平均年収」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今回は、「 OECD諸国の平均年収 」を取り上げてご紹介いたします。

厚生労働省は今年1月23日に、昨年18年11月の毎月勤労統計調査の確報値を発表しました。それによると、物価の変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比で0.8%増加ということでした。

厚生労働省の不適切調査問題で、再集計し調査結果を修正した後で名目賃金の下方修正などがあったものの、賃金伸び率がプラスであることには変わりはないようです。

とはいうものの、日本の賃金水準は高いといえるのでしょうか。日本の賃金水準が世界と比べてどのくらいの水準なのか、長期的な推移を見てどのくらいの伸びなのか、実際の国際比較統計を見て確認してみたいと思います。

まず先進国(OECD諸国)の賃金水準を年収ベース(購買力平価)で比較してみたいと思います。2017年の年収を比較してみると、OECD加盟国35ヵ国中、最も年収が高いのはルクセンブルクで約707万円(6万3千ドル)となっています。次いで2位スイスの約698万円、3位アイスランド(約693万円)、4位米国(約679万円)と続きます。日本は、18位の約458万円となっています。

それでは次に、日本の賃金水準(年収)が時系列でどう変化したのか、主要国と比較してそのトレンドを見たいと思います。17年の年収ランキング1位のセンブルク、4位の米国、日本と同様の工業国であるドイツ(13位)、日本と同じアジアの韓国(22位)のデータを、2000年から17年までの推移を比較してみます。ここでは、為替レート変動を除くため、ドルベースの購買力平価で推移を見てみます。

年収推移を見てみると。日本を除く、各国は2000年から2017年まで増加トレンドとなっていることが分かります。日本だけが、横這いで推移していることが分かります。ルクセンブルクが2000年に約5.3万ドルから’17年に約6.3万ドルへと約1万ドル年収が増加していますが、日本は2000年に約4.09万ドル、‘17年が約4.08万ドルとほとんど変化がありません。

このようにみると、日本の賃金・年収は前年比1%弱の伸び率程度で、伸びていると胸を張って言えるような状況ではないことが分かります。国内の統計を見て賃金・年収の増減を議論するだけではなく、国際比較をして日本の状況がどういう状況なのかを客観に見ていくことの重要性が分かりますね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)