業界ウォッチ 2019年3月11日

教員のちょっと気になる「パスポート発行数・保有数」

 
執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 専任講師)


今回は、「パスポート発行数・保有数」を取り上げてご紹介いたします。

先日、外務省は2018年の旅券統計の集計結果を発表しました。同結果によると、2018年に発行されたパスポート総数は約433万冊(前年比5.3%増)となりました。都道府県別発行数では、東京が約73万冊と全国トップとなりました。また、18年末の有効旅券数は約2998万冊と、人口比で23.4%と、およそ国民の4人に1人がパスポート所持している計算になります。

それでは、パスポート発行数は伸びているのでしょうか、パスポートの保有率は、地域ごとにどのような違いがあり、世界と比較する土どのくらい違いがあるのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。

まず、パスポートの発行数を長期推移でみてみます。1955年に全国で約2.2万冊でしたが、そこから増加トレンドで96年に約623.6万冊とピークに達します。そこから横ばいし、2001年の米国同時多発テロ事件以降、減少し、2003年にはイラク戦争・SARSで90年代以降最低の272.1万冊となりました。以降は300~400万冊前後で推移しています。

パスポート保有率(全国平均23.4%)を都道府県別でみると、最も高いのは東京都で37.7%、次いで神奈川県(32.2%)、千葉(27.6%)と続きます。一方最も低いのは、秋田県で8.99%、次いで青森県(9.0%)、岩手県(9.7%)と続きます。上位に政令指定都市を持つ都道府県が並びますが、それ以外では奈良県(25.9%)、滋賀県(25.1%)が健闘していることがわかります。

パスポート保有率を国際比較でみると、日本の23.4%に対し、米国は42%、カナダ66%、英国76%となっています(※1)。世界的に見ると、日本のパスポート保有率はまだまだ低く、東京の保有率だけでみても米国平均42%を下回る状況です。

またパスポートの保有率を国内でみると、東京が最も高く、東北地域の低さが目立ちますが、世界と比べると、日本の低さが目立ちます。

このように見ると、パスポート取得ペースが2003年以降低位安定していることがわかります。

ちなみに、米国のパスポート保有者の大半は、隣接国カナダ、メキシコへの移動が多いようです。カナダは米国と隣接していますし、英国はEU離脱問題があるとはいえ、EU加盟国ですし、北アイルランドがアイルランド国と隣接しています。

日本のパスポートは事前ビザなしでアクセスできる国が多く、世界ランキングトップとの調査結果(※)もあるのですが、まだパスポートを持っていないひとが70%以上存在し、取得する人がさほど増えていません。

海に囲まれ、陸続きの隣接国がない日本は、意識して外に目を向けないと、国内比較だけで語っているうちに、世界の動きを見逃すことになるかもしれませんね。

※1:Forbes, “The Share Of Americans Holding A Passport Has Increased Dramatically In Recent Years”
https://www.forbes.com/sites/niallmccarthy/2018/01/11/the-share-of-americans-holding-a-passport-has-increased-dramatically-in-recent-years-infographic/#7617359a3c16

※2:Henley Passport Index, Global ranking – 2019
https://www.henleypassportindex.com/global-ranking

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)