業界ウォッチ 2020年5月18日

教員のちょっと気になる「国内プレミックス市場」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今週は「国内プレミックス市場」を取り上げてご紹介いたします。

新型コロナの影響により、家庭内で時間を過ごす人が増えたため、家計の食品への支出が伸びています。これは、飲食店頭での外食が制限された分、家庭内での食事が増えたことが大きな要因だと考えられますが、中でもケーキ・パン材料や、ホットケーキミックスなどのプレミックスが売れているようです。

各種の報道などでは、親子でケーキ・パンケーキ作りを楽しむ人が増えているなどの指摘などがされています。また、店頭の小麦粉やホットケーキミックスの品薄状態が続いているとの報道もありました。さらに、調理家電のホットプレートの売れ行きが好調という報道も見かけます。

確かに、ホットケーキなどは親子で手軽に調理して楽しめる食品ですし、実際に3~4月ごろにスーパーに行ってみると、小麦粉、プレミックス商品の他、パスタなども品薄状態となっていることを見かけました。

それでは実際に販売が伸びている食品類はどのような商品で、プレミックスはどの位販売が伸びているのでしょうか。また、プレミックスの市場規模(生産量)はどの位の規模で推移しているのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。

まず、食品カテゴリごとの伸び率を見てみます。2020年4月で対前年同月比伸び率で最も高い伸びを示したのは「ケーキ・パン材料」で対前年比166.3%増となっています。次いで「プレミックス」が同139.9%増、「生クリーム」125.1%増、乾パスタ99.1%となっています。

3月時点では、「畜肉缶詰」同74.3%で最も高い伸び率となっており、次いで「みつ・シロップ」が69.7%増、「乾パスタ」69.4%増、「パスタソース」61.9%増と続きます。

長期保存が可能な食品類購入から、パン・ケーキなどのスイーツづくりで楽しめる食品類の購入へとシフトしていると言えそうです。

次に、プレミックスの市場規模(生産量)の推移を見てみます。

日本プレミックス協会の統計によると、プレミックスは「業務用」と「家庭用」に分けられます。さらに、糖類を使用するか否かにより、加糖プレミックス(ホットケーキミックス、ケーキミックス、ドーナツミックス等)、無糖ミックス(天ぷら粉、から揚げ粉等)とに分けられます。

実際の生産量(2019年)をみると、「業務用・加糖」が最も大きく18.1万トンです。次いで「業務用・無糖」12.3万トン、「家庭用・無糖」3.6万トンとなっており、「家庭用・加糖」プレミックスは、もっとも小さい3.2万トンとなっています。プレミックスは、家庭用よりも業務用の生産量が大きいことが分かります。

「家庭用・加糖」の生産量推移を見てみると、1990年の2.6万トンから微増トレンドで2010年に約3.99万トンとピークを迎えています。そこから減少トレンドなり、17年から再度微増トレンドに転換しています。

こうしてみると、プレミックスは、巣ごもり消費で家庭内消費需要が高まったものの、業務用生産が中心だったため、一時的に家庭用商品がスーパー等で品薄になったと考えられそうです。

今後、緊急事態宣言が解除され、飲食店頭の営業自粛要請が緩和されると、もしかすると巣ごもり消費の流れが変わるかもしれません。その一方、引き続き外出自粛を継続する人もいるかもしれません。なかなか先を見通しにくい状況ですが、外出であれ、家庭内であれ、人は食事に何らかの楽しみを見出そうとしているということは言えそうです。

こうしたところから、何らかの事業機会を見出すことができるかもしれませんね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)