業界ウォッチ 2018年5月28日

教員のちょっと気になる「宇宙ビジネス市場規模」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今回は、「宇宙ビジネス市場規模」を取り上げてご紹介いたします。

ここ数年で、日本での宇宙関連ビジネスが話題に上がることが多くなっています。政府も宇宙開発のベンチャー企業向けに1000億円の支援枠を新設し、2018年度から5年間、日本政策投資銀行などを通じて投融資することを発表し、各種施策が動き出しています。

2017年度に政府が示した「宇宙産業ビジョン2030」では、現在の宇宙産業の市場規模約1.2兆円を、2030年に倍増の約2.5兆円規模にする目標を掲げています。

世界では、イーロン・マスクのスペースXなど、民間の宇宙事業が活発になっていますが、日本でも国家プロジェクト中心・官需中心の宇宙産業から、ベンチャーなども含めた民間ビジネスへとシフトしつつあります。

それでは、宇宙産業・宇宙ビジネスの市場規模が、実際に世界ではどのようなトレンドとなっているのか、どのような事業機会がありそうなのか。日本と世界の違いはどうなのか、実際の数字で確認してみたいと思います。

世界の宇宙産業(宇宙ビジネス)の市場規模を見ると2010年に約2770憶ドルでしたが、2016年には約3400億ドル(約37兆円)にまで拡大しています。そのうち衛星産業(衛星製造、打上サービス、地上設備サービス、衛星利用サービス等)は、2010年に約1680億ドルでしたが、2016年に約2600億ドル(約28.7兆円)に拡大しています。さらに、そのうちの衛星利用サービスは、2010年に約990憶ドルでしたが、2016年には約1280億ドル(約14兆円)へと拡大しています。

宇宙産業・宇宙ビジネスというと、ロケットなどをイメージする人も多いと思いますが、衛星利用サービス(通信・放送、観測・測位など)が大きなウェイトを占めていることが分かると思います。

日本の宇宙産業を見ると2016年は1.2兆円で、2030年に約2.5兆円規模に拡大させることが政府目標とされています。そのうち宇宙利用産業(通信・放送、測位、リモートセンシングなど)は2016年に約8000億円ですが、2030年には約1.8兆円規模にまで拡大させることが目標とされています。

この目標を見ると、宇宙機器(ロケット、地上装置、関連ソフトウェア)よりも、宇宙利用産業の方が大きなウェイトを占めていることが分かります。実際、日本政府も、宇宙の観測データのオープンデータ化などの施策によって、民間の宇宙データ活用ビジネスの拡大を目指しています。

話題性では、ホリエモンが出資するロケットベンチャー(インターステラテクノロジズ)や、イーロン・マスクのスペースXなど、民間ロケットが大きく取り上げられることが多いと思います。ですが、実際の宇宙関連ビジネスとなると、データで見るとわかる通り、衛星から送られる電波・データを活用したビジネスが大きいことが分かります。

宇宙ビジネスに関わるなら、ロケットなど「宇宙空間に出てみたい!」という憧れは尽きませんが、現実には電波・データ活用をした方がビジネスになりそうですね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)