業界ウォッチ 2019年11月4日

教員のちょっと気になる「スタジアム観戦市場」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今週は「スタジアム観戦市場」を取り上げてご紹介いたします。

先日、三菱UFJリサーチ&コンサルティングとマクロミルによる共同調査「2019年スポーツマーケティング基礎調査」の速報版が公表されました。同調査によると、2019年のスポーツ参加市場規模は約2.3兆円で、スタジアム観戦の支出額は年間4万6,509円と対前年比21%となっています。またスポーツ観戦が好きという人が増加しており、今年は日本のラグビーワールドカップの開催でラグビーに関心を持つ人が急増しているとされています。

確かに、今年のラグビーワールドカップの盛り上がりもあり、スポーツ観戦熱が高まっているようにも思います。また、野球などでも、DeNAや楽天、ソフトバンク等IT系のオーナーのチーム等の観客動員が増えています。

それでは、スタジアム観戦市場はどのくらいの規模で、どのようなトレンドになっているのでしょうか。スタジアム観戦では、観客は何にどのくらい支出していて、何の支出が伸びているのでしょうか。また、スタジアム観戦者数はどのくらいの規模で、年に何回程度スタジアム観戦をするのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。

まず、スポーツのスタジアム観戦、スポーツ用品の購入、スポーツ施設利用・会費・スクール料など、1年間のスポーツ活動への参加にかかる支出を対象とした「スポーツ参加市場」規模を見てみます。2005年は約3.2兆円でしたが、そこから拡大トレンドで’08年に4.1兆円とピークに達しますが、どこから縮小トレンドとなり、’17年に1.9兆円と底を打ち、翌年以降増加傾向に向かっています。

このうち「スタジアム観戦市場」を見ると’05年に約7700億円規模で、そこから横ばいから微減トレンドとなり、’16年に最小の約4700億円となるまで、概ね5000億円前後で推移しています。それ以降は、増加トレンドとなり’19年には約8500億円と過去最高を記録しています。

次に、スタジアム観戦の支出額(1回当たり)の推移を見てみます。’05年は1回当たりの支出額がチケット代・交通費・飲食費・グッズ等を含めて約8250円でした。その後、微減トレンドで、’11年に最小の約7000円のとなります。以降はおおむね増加トレンドとなり、’19年に過去最高の10,185円に達しました。支出項目では、チケット代、交通費、飲食費、グッズ等の順で割合が高くなっていますが、この数年(’17~19年)いずれの項目も伸びています。

次に、延べスタジアム観戦者数を見てみます。’05年に約9300万人で’07年に1億人を超えピークに達します。以降おおむね減少トレンドで、’16年に約5400万人と過去最低となりますが、以降は回復し’19年には約8300万人となっています。年間何回スタジアム観戦するのか計算してみると、概ね3~4回となっています。この数年(’17~19年)は4回を超えており、’19年には過去最高の4.5回となっています。

こうしてみると、この2-3年はスタジアム観戦市場、スタジアム観戦支出、観戦者数がいずれも伸びていることがわかります。特に、これから東京オリンピックという大きなスポーツイベントもあるため、今後もスタジアム観戦市場が伸びていくことが予想されます。こうしたスタジアム観戦に関連したビジネスを展開するベンチャーやIT企業なども多数登場しています。しばらくは、この周辺領域での事業機会を見出すことができるかもしれませんね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)