業界ウォッチ 2019年8月19日

教員のちょっと気になる「ベンチャーキャピタル投資動向」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今週は「ベンチャーキャピタル投資動向」を取り上げてご紹介いたします。

先日の一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンターが2018年度ベンチャーキャピタル等投資動向(速報)を公表しました。

同速報によると、2018年度の日本に籍を置くVC等によるベンチャー企業への投資金額は2706億円と対前年度比36.9%の増加となりました。件数ベースでは、1660件と前年度比5.1%増となっています。

ここ数年、国内でもベンチャー企業/スタートアップへの投資が活発化していますが、実際にVC投資がどのくらい伸びているのでしょうか。また、どういう業種への投資が多くなっているのでしょうか。世界と比較すると、投資額はどのくらいの規模感なのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。


まず、国内VCによる投資額の推移(1999~2018年度)を見てみます。投資額全体で見ると、’00年度(2825億円)、’06年度(2790億円)、’18年度(2706億円)で2500億円超に達しています。最近では’14年度から4年連続で増加トレンドが続いています。また、’11年度以降国内投資向けの投資額の推移で見ると、’12年度以降6年連続増加となっています。

次に、投資先業種別構成比の推移を見てみると、IT関連の割合が最も高く’16年度は50%を下回りましたが、それ以外は50%を超えており’18年度は53.6%となっています。次いでバイオ/医療/ヘルスケアの割合が高く、’18年度は18.9%となっています。

VC投資を日本、米国、欧州、中国で国際比較してみると、やはり米国のVC投資額が最も大きく’18年は14.5兆円となっています。特に’17-18年が大きく伸びていることが分かります。米国に次いで中国の投資額が大きく、’18年は3.5兆円となっています。欧州は、米中と比べると投資額は小さくなりますが、’18年には1.1兆円と1兆円台を超える投資額となっています。日本は、それと比較すると’18年度で0.27兆円とかなり規模感が小さいことが分かります。

こうしてみると、日本のVCによる投資はIT関連を中心に伸びているものの、米欧中と比較すると、かなり小規模であることが分かります。日本のマーケットサイズの問題もあるのかもしれませんし、日本のベンチャー企業/スタートアップが小粒だからのかもしれません。いずれにしても、国内でももっとスケールの大きいVC投資が増え、世界に羽ばたくようなユニコーン企業が多数輩出されるようになって欲しいですね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)