業界ウォッチ 2022年10月18日

【データから読み解く】ANYCOLORの時価総額比較

今回は「ANYCOLORの時価総額比較」を取り上げてご紹介いたします。

前々回は「メディア接触時間と広告市場」をとりあげ、前回は「地上波メディア企業の売上高構造」を取り上げましたが、今回は、VTuber(バーチャルユーチューバー)グループ「にじさんじ」を運営するANYCOLORに注目して取り上げてみたいと思います。

ANYCOLORは、6/8に東証グロース市場に上場し、一時時価総額が約2700億円とフジ・メディア・ホールディングスを上回り話題となりました。

最近メタバースや、VTuber、推し活といった関連するニュース・報道などを見かけるケースが多くなっています。IPO銘柄は、上場当初高値を付けたのち、株価が下落するケースが多く見られますが、ANYCOLORは上場後どのように推移しているのでしょうか。

地上波放送局の時価総額と比べてどのように推移しているのでしょうか。Youtuber事務所などの芸能関連類似企業と比べて、時価総額の推移にどのような違いがあるのでしょうか。

また、地上波、芸能事務所関連だけでなく、映画やモバイルコンテンツ企業の売上高や時価総額と比較するとANYCOLORにどのような特徴が見られるのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。

ANYCOLORの時価総額比較

まずANYCOLORの時価総額の推移を見てみます。6/8のIPO直後から急上昇し、6/16(終値時点)で時価総額2645億円(最高値時点では2700億円超)となり、フジ・メディアHDの時価総額2642億円(終値時点)と、フジテレビを超えた状態となりました。しかし、この日以降株価が下落に転じたため、時価総額も落込み7月19日時点では1700億円を下回る水準となっています。その後8月以降再び上昇トレンドに転じ、9月15日には時価総額2822億円と、再びフジ・メディアHDの時価総額(2560億円)を超え、翌9月16日には時価総額3272億円と、日本テレビHDの時価総額(3097億円)を超える水準に達しました。その後も増加トレンドで、10/17時点では3527億円となっています。

ANYCOLORに比較的近いエンタテイメント関連・芸能事務所系のエイベックス、UUUMと比較してみると、差が大きいことが分かります。エイベックスは600億~700億円前後で推移し、UUUMは350億円台から下降トレンドで10/17時点では180億円台となっています。

次に芸能事務所系、地上波、映画、モバイルゲーム関連企業の売上高と、時価総額を比較してみます。売上高を見ると、ANYCOLORは142億円と、比較した企業の中で最も小さい売上高となっていることが分かります。

時価総額を見ると、ANYCOLORは3272億円と、どの芸能事務所、地上波大手企業よりも大きくなっています。映画、モバイルゲーム企業と比較しても、東宝(9474億円)、サイバーエージェント(6289億円)を除くと、どの企業よりもANYCOLORの方が上回っていることが分かります。

こうしてみると、ANYCOLORは売上高が小さくとも、時価総額が大きく、成長することが高く期待されていることが分かります。また、地上波メディア企業だけでなく、主なモバイルゲーム会社、映画会社と比べても、高い評価をされていることが分かります。

VTuber事務所という意味では、Youtuber事務所としての先駆けであったUUUMの事業形態のVTuber版のイメージで見てしまうと、大きく見誤ることになりそうです。もしかするとVTuberという存在は知っているけど、オタク向けの小さなビジネスという認識で、ここまで大きなビジネスとして期待値が高くなっていることを知らない方も多いかもしれません。

VTuberビジネスとして、ANYCOLORの「にじさんじ」の他に、カバー(非上場)が運営する「ホロライブプロダクション」も注目を集めているようです。知らない業界・オタクビジネスと侮ることなく、注目されている業界とそのビジネスモデルは研究する価値がありそうですね。

出典:
SPEEDA
YahooFinance
日経会社情報デジタル
ANYCOLOR社IR