業界ウォッチ 2023年3月7日

【データから読み解く】日米企業のAI利活用状況

今回は「日米企業のAI利活用状況」を取り上げてご紹介いたします。

前回、対話型AIサービス「ChatGPT」を取り上げましたが、今回は日米企業のAI利活用状況についてみてみます。

情報処理推進機構(IPA)が2021年から発刊している「DX白書」の最新版「DX白書2023」が今年2月に公開されました。同白書では日米企業アンケート調査結果から見える日本企業の課題と、DX推進の方法についてまとめられています。

その中で、AIの利活用の状況についても日米企業間の比較が行われています。

それでは、日本企業のAI利活用状況は米国企業と比較してどの位の水準なのでしょうか。AI導入の目的は、日米企業間でどのような違いがあるのでしょうか。またAI導入の課題として日米企業間でどのような違いが見られるのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。

まず、AIの利活用の状況で、日米企業間でどのような違いがあるのか見てみます。AI導入済み(全社で導入している+一部の部署で導入している)の割合は、日本が22.2%、米国が40.4%となっています。PoC実施(現在実証実験を行っている+過去に検討・導入または実証実験を行ったが現在は取組んでいない)は日本が13.5%、米国30.3%となっています。検討中(利用に向けて検討を進めている+これから検討をする予定である)は、日本が19.4%、米国11.4%となっています。予定なし(関心はあるがまだ特に予定はない+今後も取組む予定はない)は、日本44.9%、米国17.9%となっています。日本企業のAI導入状況は米国の約半分程度であり、「(AIに取り組む)予定なし」が約45%と半数近くとなっていることが分かります。

次に「AI導入の目的」について日米企業の違いを見てみます。日本企業で「AI導入の目的」として最も回答が多かったのは、「既存サービスの高度化、付加価値向上」で47.5%、米国企業は50.6%となっています。次いで多かったのは「業務効率化による業務負担の軽減」(日本企業42.5%、米国企業29.5%)で、以降「生産性向上」(日本39.2%、米国19.2%)、「ヒューマンエラーの低減、撲滅」(日本36.7%、米国22.4%)と続きます。米国企業の回答でAI導入目的として最も多かったのは「既存サービスの高度化、付加価値向上」で日本と同じですが、次いで多かったのは「新製品の創出」(米48.1%、日29.2%)、「新サービスの創出」(米43.6%、日29.2%)と続きます。

日本企業は業務効率化目的が多いのに対し、米国は新サービス・製品創出を目的とする傾向があるといった違いが見られました。

次に日米企業の「AI導入の課題」を比較してみます。日本企業で最も回答が多かったのは「AI人材が不足している」で49.7%(米国企業22.2%)となっています。次いで多かったのは「自社内でAIへの理解が不足している」で(日45.5%、米27.7%)、「AIの導入事例が不足している」(日34.8%、米15.5%)と続きます。米国企業で最も回答が多かったのは「顧客・取引先でAIへの理解が不足している」(日15.3%、米29.8%)で、次いで「運用費用が高い」(日27.3%、米29.5%)となっています。

こうしてみると、日本企業はAI導入に関して、業務効率化・品質・生産性向上を主な目的とし、AI人材不足、AI理解不足が課題となっていることが分かります。一方米国企業は、新製品・新サービスの創出・付加価値の向上を目的とし、顧客・取引先のAI理解、運用費用の高さが課題となっていることが分かります。日本企業のAI導入・利活用の遅れは、AI人材不足、AIの理解不足が主な要因となっているものと考えられそうです。

AIを効率化的な視点で見るのではなく、AIによってどの様な新サービス・新製品を創出できるのか、付加価値を向上できるのか、価値創出的な視点で見ることができるようになると、日本企業のAI導入が進むかもしれません。小さくても、具体的なAI導入による価値創出成功例を積み重ねていくことが大切になりそうですね。

出典:DX白書2023