業界ウォッチ 2022年9月6日

【データから読み解く】コロナ禍前後の生活時間の変化

今回は「コロナ禍前後の生活時間の変化」を取り上げてご紹介いたします。

先日(8月末)、総務省が「令和3年社会生活基本調査 生活時間及び生活行動に関する結果」を公表しました。同調査は、5年ごとに実施されており、1日の生活時間の配分などを聞いて集計しています。同調査結果を受けて、各種メディアが、男女間の家事・育児時間の格差や、増えた生活時間、減った生活時間など様々な観点から報道しています。

ここでは、生活時間のうち、一緒にいた人別に、コロナ前(2016年)とコロナ後(2021年)の違いを見てみたいと思います。

新型コロナによって、2020年当初より行動制限が緩和されたとはいえ、コロナ前ほど自由に活動しづらい環境下で、誰と過ごす時間が増えているのでしょうか。やはり学校や職場の人と過ごす時間が減少し、家族で過ごす時間が増えているのでしょうか。それとも一人で過ごす時間が増えているのでしょうか。また年代別に見た場合、何らかの違いが表れるのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。
コロナ禍前後の生活時間の変化

まず「一人」でいた時間の変化を見てみます。2021年で最も時間が長い年代は70-74歳の6時間51分で、次いで65-69歳(6時間49分)、60-64歳(6時間44分)と続きます。10-14歳は、まだ義務教育期間ということもあり、一人の時間は少ないですが、20歳代で一人時間が伸び、30歳代で一人時間が減り、40代以降再び一人時間が増加する傾向にあります。

コロナ前の2016年と比較すると、全般的に一人時間が伸びていますが、最も伸びが大きいのは25-29歳で1時間21分の増加となっています。次いで、20-24歳(1時間9分増)、30-34歳(1時間7分増)となっています。

次に、「家族」と過ごす時間の変化を見てみます。2021年で最も「家族」と過ごす時間が長いのは70-74歳の6時間8分で、次いで10-14歳(5時間57分)、75歳以上(5時間45分)と続きます。コロナ前の2016年と比較すると、全般的に家族と一緒にいる時間が少なくなっています。特に減少幅が大きかったのは、55-59歳で41分の減少となっています。次いで、25-29歳(37分減)、75歳以上(36分減)と続きます。

「学校・職場の人」と過ごす時間の変化を見てみると、2021年で最も時間が長かったのは10-14歳の5時間49分となっています。以降年代が上がるにつれ、過ごす時間が減少していく傾向にあります。2016年との比較で見ると、60歳以下の世代で概ね時間が減少しており、最も減少幅が大きいのは20-24歳で1時間9分の減少となっています。次いで、15-19歳(1時間)、25-29歳(59分)と続きます。

こうしてみるとコロナ前後の変化とは別に、10-20歳代は家族より一人で行動する傾向が強く、30歳代に入り、結婚などを契機として家族と過ごす時間が増え、子どもが成長し一人で活動するようになると家族で過ごす時間が減る。定年退職が近づく60歳代以降からは家族との時間が増え、職場の人と過ごす時間が一気に減少する傾向にあることが、グラフから見て取れます。

また、コロナ前後の変化で見ると、家族時間の減少は、概ね一人時間の減少と反対の動きをしている傾向にあると言えそうです。一人時間の増えている年代では、家族と過ごす時間が減少していると言えそうです。

学校・職場の人との時間の変化は、やはり学校での活動時間減少(部活、授業などを含む)や、職場という点ではリモートワークの普及、仕事帰りの同僚との交流の減少などの影響が大きいと言えそうです。

一方、一人時間の増加は、コロナ下で外出して人と会うこともあまりできないことから、自宅・部屋で過ごす時間が増えていることが影響しているものと考えられそうです。

こうした生活時間の変化影響を考えると、一人での活動を充実させるようなサービスへのニーズが高くなっていると考えられそうですね。

出典:
令和3年社会生活基本調査の結果(総務省統計局)