業界ウォッチ 2023年2月21日

【データから読み解く】ChatGPT/OpenAIの動向

今回は「ChatGPT/OpenAIの動向」を取り上げてご紹介いたします。

今年1月10日にマイクロソフトが米新興AI企業OpenAIに最大で100億ドル(約1兆3000億円)投資するという報道があり大きな話題となりました。同OpenAIが手掛ける対話型AIサービス「Chat GPT」の注目度が一気に高まりました。

ChatGPTは2022年11月末に一般公開され、無料で使えることに加えて、文章生成クオリティの高さからSNSで話題になっていましたが、マイクロソフトの報道があってからビジネス界でも一気に注目度が高まりました。ChatGPTの普及速度の速さ、質問に対する回答の質などから、Googleが「Code Red(非常事態)」を宣言したことも、注目度をさらに高める要因となっています。

それでは、ChatGPTの普及速度はどの位の早さなのでしょうか。他のこれまでのテクノロジー系のサービスと比べてどのくらい違うのでしょうか。また、ChatGPTを運営するOpenAIの資金調達額はどの位の規模で、他のAIスタートアップと比べてどのくらいの違いがあるのでしょうか。また、OpenAIのサービスを導入している産業はどの産業が多いのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。

まず、ChatGPTの普及速度を見るべく、ユーザー数1億人までの達成期間を、他の人気テクノロジー系サービスと比較してみます。

ChatGPTはユーザー数1億人達成までに2カ月と、他のサービスよりも最も短期間で達成しています。次いで達成期間が短いのはTikTokで9カ月となっています。以降、Instagram(30カ月)、Pinterest(41カ月)、Spotify(55カ月)、Telegram(61カ月)、Uber(70カ月)、Google Translate(78カ月)と続きます。1年未満で1億人に達したのは、ChatGPTとTikTokだけですが、それと比較しても断トツに短期間で達成していることが分かります。ちなみに、ChatGPTのユーザー数が100万人に達するまでに要した期間は5日間という数字も出ています。他のプロダクト・サービスと比較すると、iPhoneで75日、Instagramで2.5カ月、Spotifyで5カ月、Facebookで10カ月、AirBnBで2.5年、Netflixで3.5年との比較も提示されています。

次いでAIスタートアップの資金調達状況(2022年12月末時点)を見てみます。最も調達額が大きいのは、やはりOpenAIで約10.1億ドルとなっています。次いでScale AI(6億ドル)、Anyscale(2.6億ドル)、Inflection AI(2.25億ドル)、Weights & Biases(2億ドル)と続きます。この中で見ても、OpenAIがダントツの資金調達額となっていることが分かります。

次にOpenAIのサービス・ソリューションを導入している企業数が多い産業を見てみます。OpenAIは、ChatGPTで一気に有名になりましたが、その前から「GPT-3」などAI言語モデルの質の高さから、AI業界では有名で、多くの企業がOpenAIのソリューションを導入しています。

OpenAIのソリューションを導入している企業(機関)が多い産業は、テクノロジー業界で251社が導入しています。次いで多いのが教育業界で209社(機関)となっています。以降、ビジネス・サービス(98社)、製造業(89社)、金融(44社)、小売(35社)、ヘルスケア(24社)、政府・行政(18機関)、メディア・インターネット(17社)、建設(15社)と続きます。

こうしてみると、確かにChatGPTは、他の人気サービスと比較しても圧倒的に普及速度が速いことが分かります。また、資金調達額でも他のAIスタートアップと比べても格段に違うことが分かります。

マイクロソフトがOpenAIへの投資を加速していることで、Googleが対抗してAIサービスを発表するなど、言語・文章生成AIの戦いが激しくなっていくことが予想されています。業界に詳しい人でもOpenAIよりGoogleやMetaが今後上をいくのではないかといった意見や、OpenAIは正確ではないといった指摘もあります。

しかし、単なる企業同士のAIの戦いというより、AIを活用することで、失われる仕事・産業、新たに生まれる仕事・産業が何かを見通していくことが大切になりそうです。

まずは、使ってみて、どういう分野で利用できるか、活用方法を模索し実践した上で、今後人間がどういう役割を果たしていくべきかを考えていくことが大切になりそうですね。

出典:
“ChatGPT on track to surpass 100 million users faster than TikTok or Instagram: UBS”
“NFX’s Generative Tech Open Source Market Map”
“OpenAI Statistics – By Demographics, Products, Revenue and Growth”