業界ウォッチ 2022年12月6日

【データから読み解く】消費者物価指数

今回は「消費者物価指数」を取り上げてご紹介いたします。

先日(11月30日)、日経の1面に「企業『インフレ手当相次ぐ』」いう記事が掲載されました。インフレ手当は、原料高による電気代や食品の値上げなど急激な物価高を受け、企業が従業員に基本給などに加えて臨時で支給する特別手当のことだそうです。

国内の消費者物価上昇・インフレは、今年に入り話題になることが多くなっています。ロシア・ウクライナ情勢の影響による、資源高、穀物をはじめとした食料品の物価高、米中対立による半導体供給不足などが背景とされています。更に、金融面で日米金利差などを背景とした円安による輸入物価高などの影響も指摘されています。

それでは、実際の国内インフレ率はどのように推移しているのでしょうか。最近の国内消費者物価指数がどのような伸びを示しているのでしょうか。どういった分野の物価上昇率が高くなっているのでしょうか。物価上昇率の高い分野・品目の物価はいつ頃から高くなっているのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。
消費者物価指数

まず、消費者物価指数の推移を見てみます。2018年1月から直近の2022年10月までの消費者物価の対前年同月比で、変化の傾向を見てみます。2018年は1%台でしたが、2020年にかけて概ね低下傾向にあり、2020年の新型コロナの影響で、物価上昇率はマイナスに転じています。2021年の後半から再び上昇トレンドに転じ、2022年10月には3.7%の上昇となっています。2014年5月以来の高い上昇率となっています。

次に分野別(10大費目別)の物価指数の変化を見てみます。2022年10月時点で、最も高い上昇率を示しているのは「光熱・水道」費で、14.6%の伸び率となっています。次いで、「家具・家事用品」6.9%、「食料」6.2%と続きます。

このうち、上昇率上位の分野などの内訳を更に細かく見ていくと、「光熱・水道」の中で大きな伸びを示している品目が「電気代」(20.9%)、「ガス代」(20.0%)となっています。「家具・家事用品」の中では「家庭用耐久財」(11.8%)となっています。食料品では、「生鮮食品を除く食料」が5.9%となっています。

更に、中分類品目の物価上昇率がどのように推移しているのか見てみます。「電気代」を見ると、2019年2月の7.7%から下降トレンドに入り、2021年7月頃まではマイナスのトレンドだったことが分かります。

「家庭用耐久財」は、2018年冒頭から同年末頃までマイナスの上昇率となっていますが、2019年からプラスの上昇率となっています。2020年に新型コロナの影響で再びマイナス成長となります。2012年の12月には再びプラスの上昇率へと転じました。

「生鮮食品を除く食料」の物価指数については、他の「電気代」や「家庭用耐久財」ほどの変動はありませんが、2021年7月から上昇トレンドへと転換しています。

こうしてみると、「電気代」「家庭用耐久財」「生鮮食品を除く食料」に関連する物価上昇率は、2021年後半~2022年前半にかけて(特に2022年以降)、高水準となっていることが分かります。また、品目で見ると、電気代・ガス代等のエネルギーや、家電製品、食品類の物価上昇が目立っています。

ウクライナの食糧危機が騒がれた今年の5-6月頃は、農業関連企業の株価が上昇しました。そのことから類推すると、電気代・ガス代に依存しないで済むようなエネルギー供給事業や、顧客のエネルギーコストを回避するようなサービスなどが今後の事業機会として考えられそうですね。

出典:総務省統計局
(総務省統計局)
(総務省統計局 eStats)