業界ウォッチ 2022年6月7日

【データから読み解く】国内スマートシティ市場

今回は「国内スマートシティ市場」を取り上げてご紹介いたします。

前回は世界のスマートシティ市場を見てみましたが、国内のスマートシティに関する動きも進んでいるようです。前回も少し触れましたが、トヨタのウーブンシティプロジェクトが注目を集めましたが、会津若松市のスマートシティの動きなども国内では注目を集めています。

国内では、政府がスーパーシティ構想を推進したり、2025年に100都市・地域でのスマートシティ(都市OS)の実装を目指すなど、行政が導入を主導し、そこに民間企業が参画する動きが強まっているようです。

それでは、国内のスマートシティ関連市場はどのくらいの規模で、どの位伸びることが予想されているのでしょうか。また、スマートシティ導入の際、データ連携基盤となる都市OSが実装されるそうですが、その都市OSは、どのくらい導入され、普及していく見通しとなっているのでしょうか。地方都市で、こうしたスマートシティが導入された際に、どのようなことが期待されているのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。
国内スマートシティ市場

まず国内のスマートシティプラットフォームの市場規模の推移を見てみます。野村総合研究所は、スマートシティプラットフォームを「都市における建物間の横断サービスを提供するための共通機能(個人人証など)やインフラ管理(保守、警備、清掃など)の効率化を、クラウドサービスなどを利用するソフトウェアサービスと、それに必要なセンサー(カメラなど)の総額」と定義して市場規模を推計しています。同社の調査結果によると、2020年は7849億円でしたが、そこから増加トレンドで2024年は1兆619億円と、1兆円を超え、2027年には1兆4412億円に達することが予想されています。

次に、都市OSの導入・普及数の粋を見てみます。矢野経済研究所が、地方自治体や特定エリア内などでスマートシティ事業を実施する主体等による都市OSの実装エリア数を推計しています。同調査によると、2019年度実績は0件でしたが、2020年度予測が9件となり、そこから増加トレンドで、2027年に累計115件と100件を突破し、2030年に累計335件に達することが予想されています。

更に、スマートシティ化することによって、その都市・地域の住民にどのようなプラス効果があるのか、大都市と地方都市で違いがあるのか見てみます。KPMGが5大都市(東京、大阪、名古屋、福岡、札幌)と、地方都市37都市(政令市、中規模都市、小規模都市含む)を対象に実施した調査結果を見てみます。

同調査によると、「スマートシティ・テクノロジーソリューションのプラスの影響」として上位に上がったものとして「電子決済テクノロジー/アプリ」、「交通機関乗換情報のオンライン化/アプリ」、「公共料金/公共サービス請求のペーパーレス化」が上げられます。

地方都市と5大都市で差が大きい買った項目としては、「電子決済テクノロジー/アプリ」、「交通機関乗換情報のオンライン化/アプリ」、「税務申告、納税のオンライン化」、「公共交通機関の決済システムの統一」が上げられます。このうち、地方都市のプラスの影響が大きかった項目としてあげられるのは、「電子決済テクノロジー/アプリ」、「税務申告、納税のオンライン化」でした。

こうして見ると、国内スマートシティ市場も成長する見通しで、行政主導もしくは、行政と民間が共同で主導するプロジェクトが多いことが見て取れます。

また、大都市だけでなく、地方都市でも導入が進む可能性も高いことが推察されます。大都市では交通分野でのプラスの影響が大きく、地方都市では電子決済関連分野や、公共料金のペーパーレス化、税務申告・納税のオンライン化など、フィンテック領域や、行政DX領域でのメリットが大きいことが分かります。

前回見た、「世界のスマートシティ市場」では技術領域、サービス領域を絞って見るとスタートアップにも十分参入余地があるようでした。国内ではスタートアップがスマートシティ参入する余地があるかどうかは、分野次第と言えそうです。電子決済・フィンテック分野や、大都市での交通領域、地方都市での行政DX関連領域などで可能性がありそうです。行政領域に強い大企業などと連携するのも良いかもしれませんね。

出典:
野村総合研究所「ITナビゲーター2022年版」
矢野経済研究所プレスリリース
「国内スマートシティ市場、都市OS実装エリア数を予測(2020年)」

KPMG「スマートシティ 地方都市における意識調査」