業界ウォッチ 2023年5月23日

【データから読み解く】インバウンドの動向

今回は「インバウンドの動向」を取り上げてご紹介いたします。

先月(5月17日)、日本政府観光局(JNTO)が今年4月の訪日外国人客(インバウンド)数を公表しました。同発表によると、4月のインバウンド数は194万9千人と、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年4月(292万6千人)と比べて、66.6%まで回復しています。昨年10月の新型コロナ水際対策が緩和されて以来、過去最高となっています。

確かに、新型コロナの影響が治まりつつあり、今年に入り外国人観光客を多く見かけるようになりました。統計が実感とも合っているように思います。

それでは、インバウンド客数はどのように推移しているのでしょうか。インバウンド客数の伸びはコロナ禍以降どの様に変化しているのでしょうか。インバウンド消費はどのように変化しているのでしょうか。

また、国・地域別でみるとどの国・地域からのインバウンドが多いのでしょうか。どの国・地域からのインバウンドが伸びていて、どの国・地域のインバウンドが停滞しているのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。
Inbound

まず、インバウンド数の推移を見てみます。コロナ禍前は250万~300万人の間ですいいしていましたが、2020年のコロナ禍以降4~7月の間は1600~3700人台にまで大きく落ち込んでいます。以降2022年2月まで概ね1~2万人台で推移しています。22年4月から10万人台に回復し、22年10月の水際対策緩和以降、急増し22年12月には137万人と100万人台を超えています。以降急増ペースが続き、23年4月には194.9万人とコロナ禍以降最高値となっています。

インバウンド消費の推移を見ると、コロナ禍以前の2018年1月は3618億円で以降概ね増加トレンドで2019年1月は4643億円と過去最高値に達しています。以降、新型コロナの影響で急減し、20年4月~22年7月までは400億円~600億円台ですいいしています。22年10月(1297億円)から急回復し、以下増加トレンドで23年3月に4027億円と、4000億円台にまで回復しています。19年3月(4164億円)と比べると96%回復していることになります。

次に、国・地域別のインバウンド数を見ると、23年4月で最も多かったのは韓国の46.7万人となっています。次いで、台湾(29.2万人)、米国(18.4万人)、香港(15.3万人)、タイ(12.1万人)、中国(10.8万人)と続きます。中国は、19年4月時点は72.6万人だったので、落ち込みが大きくまだ回復に至っていない状況です。

また、国・地域別のインバウンドの伸び率を見ています。コロナ禍以前の19年4月と23年4月を比較してみると、インドネシアで22.5%とコロナ禍以前よりも多い訪日客数となっています。次いでシンガポール(14.4%増)、メキシコ(13.1%増)、米国(8.0%増)、中東地域(3.4%増)と続きます。一方、コロナ以前と比較して落ち込みが最も大きい国・地域は、中国で85.1%減となっています。次いでロシア(68.1%減)、スペイン(40.1%減)、イタリア(35.2%減)、北欧地域(32.9%減)、台湾(27.7%減)と続きます。

こうしてみると、インバウンド数はコロナ禍以前の66%近くにまで回復しており、インバウンド消費は96%まで回復していることが分かります。回復のスピードも急回復となっており、このまま推移すれば、コロナ禍以前の水準に早い段階で達するものと考えられます。現在の日本円の円安状況が継続すれば、訪日客にとってメリットが大きいことも、インバウンドを後押しするものと考えられます。

また、国・地域別でみると、コロナ禍以前を上回るインパウンド数に達している国が5カ国存在している一方、中国・ロシアなど、コロナ禍以前と比べて70~85%近く落ち込んだ状態となっている国も度存在していることが分かります。

特に、コロナ禍以前は最大だった中国からのインバウンド数が、23年4月時点で85%落ち込んだ状態となっていることから、今後、中国のインバウンドが回復すると、インバウンド数全体、インバウンド消費全体も大きく回復することが予想されます。

今後、新型コロナとは異なる新たな感染症が広まるのか、国際情勢がどう動くのか、不透明な部分も大きいですが、インバウンドの回復傾向をリスクに備えつつ、しっかり事業機会を捉えたいところですね。

出典:
日本政府観光局(JNTO)
日銀統計