今回は「ローコード/ノーコード開発ツール市場」を取り上げてご紹介いたします。
近年、企業のDXの取り組みの一環としてローコード/ノーコード開発ツールの導入が進んでいます。ローコード/ノーコード開発ツールは、プログラミングの知識がなくてもソフトウェアを開発できるため、導入企業にとっては内製化によるコスト削減などの利点があり、企業がDXを進める上で直面するIT人材不足の解消という側面からも注目を集めるようになっています。
国内でも大企業での導入事例なども報道されるなど、数年前から注目されていますが、最近では中小企業にも導入が進みつつあるようです。
それではこうした、ローコード/ノーコード開発ツールの市場規模はどの位で、どのように成長する見通しとなっているのでしょうか。また、どのようなメリットを得ようとしてローコード/ノーコード開発ツールを導入しようとしているのでしょうか。また、主なローコード/ノーコード開発ツールとして、どういう会社がどのようなツールを提要しているのでしょうか。
実際に数字と事例で確認してみたいと思います。
まず、国内のローコード/ノーコード開発ツールの市場規模推移をみてみます。
調査会社の株式会社アイ・ティ・アールによると2019年は415億円となっており、そこから増加トレンドで2022年には824億円、2023年には1030億円と1000億円を超え、2025年には1539億円になることが予想されています。ちなみに、世界的にも同ローコード開発テクノロジー市場が伸びており、米ガートナーによると、2023年は前年比19.6%増の269億ドル(約3兆6700億円)、2024年には319億ドル(約4兆3600億円)と高成長を継続すると予測されています。
次に、企業がノーコード/ローコード開発ツールにどのようなメリットを期待しているのかを見てみます(キーマンズネットの調査)。期待するメリットのトップは「開発スピードの向上」で59.1%の企業がメリットとしてあげていました。次いで「アプリケーションの開発コストの削減」(48.8%)、「開発の内製化の促進」(42.9%)、「業務プロセスの自動化」(39.9%)と続きます。
具体的なツールとしてどのような企業が提供しているのかを見てみると、米マイクロソフト(Power Apps)、米グーグル(AppSheet)、米セールスフォース(Lightning Platform)、米アマゾン(Honeycode)といった米国大手IT企業勢のツールの他に、カナダのショッピファイ(Shopfy)や、日本のサイボウズ(Kintone)などが上げられます。GAFAMとしては、この他に米アップルがClaris Connect(クラリスコネクト)というノーコードツールを提供しています。日本企業では、アステリア社が、IoT機器を使ったシステム構築をしやすくするGravioというツールを提供しています。
それぞれに、得意分野の特徴の違いがあり、必要に応じて使い分けることが求められます。ShopifyのようにECサイト作成など、用途を特定しているツールも出てきています。
なお米グーグルのAppSheetは、AppSheet社が提供したサービスを2020年に買収したものです。
こうしてみると、ローコード/ノーコード開発ツールは、企業のDX推進のため、自動化・業務効率化のためのアプリケーション開発ツールとして期待が高く、市場が伸びていることも分かります。また、世の中的にニーズがあり、成長する市場であるため、GAFAM等の大手ITもツール提供者としてこの市場に参入しています。
プログラミング(コーディング)することなく、アプリケーション開発することができるため、エンジニアでなくても取り組めるツールであるため、非エンジニア人材がDXに取組むきっかけ、リスキリングの機会として取り組むと、日本企業のDXも進展するようになるかもしれませんね。
出典:
ITRプレスリリース
ノーコード/ローコード開発ツールの利用状況(2022年)/前編
日経電子版「「ローコード」、AIで進化 知識なしでソフト開発」