業界ウォッチ 2023年1月24日

【データから読み解く】LVMHの時価総額・業績

今回は「LVMHの時価総額・業績」を取り上げてご紹介いたします。

最近、フランスの高級ブランドグループのLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンの株価・業績が好調なようです。新型コロナの影響や、その後のロシア・ウクライナ情勢、世界的なインフレ傾向によって、世界経済全体としては景気が停滞しつつある状況下で、高級ブランド企業の業績が伸びているようです。

その影響を受けて、世界のビリオネア資産額ランキングでも、テスラのCEOイーロン・マスク氏を抜いて、LVMH会長のベルナール・アルノー氏が昨年12月に世界トップに立ちました。

それではこうした、LVMH会長の資産額はどの位の規模感で、イーロン・マスク氏や、他のビリオネアと比べてどのくらいの違いがあるのでしょうか。また、LVMHの時価総額はコロナ前と比較してどの様に推移しているのでしょうか。他の高級ブランド企業と比較するとどのような違いがあるのでしょうか。また、LVMHの業績(売上)はどのどのように推移し、どの地域の売上が伸びてているのでしょうか。

実際に数字と事例で確認してみたいと思います。
LVMH

まず、世界のビリオネア上位10人の純資産額(1/23時点)を見てみます。トップは、前述の仏LVMH会長のベルナール・アルノー氏で1860億ドルとなっています。次いで米テスラのイーロン・マスク氏で1390億ドルとなっており、以降、インドのアダニグループ(港湾等)のゴータム・アダニ氏(1210億ドル)、米アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏(1200億ドル)、米マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏(1110億ドル)と続きます。

次に、LVMHの時価総額の推移を見てみます。コロナ前の1月第1週で1263億ユーロでしたが、そこから上昇トレンドとなり、2019年11月には2000億ユーロを突破します。ますが、2020年2月に入り、新型コロナの影響で大きく落ち込み、3月下旬には1566億€となりますが、以降再び上昇トレンドとなります。22年3月に、ロシア・ウクライナ情勢の影響を受けて、大きく落ち込みますが、以降は上下しながらも上昇トレンドに向かい、特に2023年に入り4000億ユーロ近い規模へと急上昇しています。

同様に高級ブランドのエルメスも、LVMHと時価総額規模の違いがあるものの、基本的にはLVMHと同じような時価総額増減傾向にあります。

更に次に、LVMHの地域別売上高の推移を見てみます。売上高の地域的分布を見ると、アジア(日本を除く)・日本の売上高のウェイトが最も大きく、次いで米国、のウェイトが大きいことが分かります。

売り上げ全体の伸びとしては、2020年に新型コロナの影響で大きく落込みますが、その後各種の対応をしてきた結果、過去最高の売上高となっています。22年12月期決算は、コンセンサス予想によると800ユーロに近い売上が立つものと見込まれています。

22年は、中国のゼロコロナ政策により、中国人需要が落ち込んだものの、ドル高・ユーロ安効果で、米国人の欧州旅行・欧州での高級ブランド購入が増えているという報道がなされています。

こうしてみると、高級ブランド企業の業績・時価総額の推移を見ると、特に昨年末から今年1月にかけて高い伸びを示していることが分かります。一方、最近の米IT大手企業などは、GAFAMも含めて従業員リストラに関する報道発表が多く見受けられるようになりました。テクノロジー業界に流れていったお金が、富裕層を当てにしたビジネスにお金が流れつつあるものと考えられそうです。

最近の世の中のトレンドとして、ネガティブな景気動向・経済の見通しに関する情報が多く見受けられます。しかしその陰で、高級ブランドが売れるなど、マクロトレンドだけでは分からない、伸びている業界・企業が存在しています。

こうした伸びている業界・企業を参考にすると、新たな事業機会に関するアイデアの質を高めていくことできそうですね。

出典:
Bloomberg Billionaires Index
SPEEDA
LVMH IR資料