業界ウォッチ 2023年2月7日

【データから読み解く】都道府県別人口移動・転入超過数

今回は「都道府県別人口移動・転入超過数」を取り上げてご紹介いたします。

先日(1/30)、総務省が2022年の住民基本台帳人口移動報告を発表しました。同報告によると、東京都の転入超過(転入者-転出者)が3.8万人と、超過幅が3年に拡大しています。人口の東京集中が再加速している形となっています。

2020年からのコロナ禍で、リモートワークが普及し、都心に通勤しなくても仕事ができるということで、大都市から郊外・地方への人口移動が進んでいました。しかしが、22年に入り、コロナ禍でも重症化リスクが低下したことらから、外出・通勤する人も増えてきたことが影響し、再び東京を中心とした大都市に人口が集中するようになっているようです。

それでは、三大都市圏の転入超過数はどのように推移し、コロナ禍以降の人口移動はどのように変化しているのでしょうか。都道府県別に見ると、どの都道府県に人口が集中していて、どの都道府県の人口流出が多いのでしょうか。また、政令指定都市で見ると、どの都市の人口流入が大きく、どの都市の人口流出が大きくなっているのでしょうか。

実際に数字を見て確認したいと思います。
the movement of people

まず、三大都市圏の転入超過数の推移を見てみます。東京圏(1都3県)の人口流入(転入超過)数は、2000年以降10万人を超える流入が続いており、リーマンショックで10万人を下回り2011年には6.3万人となっています。以降は人口流入数が増加トレンドとなり、2014年には再び10万人を超え2019年には14.6万人に達しています。20年のコロナ禍で再度人口流入が落込みましたが、21年の8万人から、22年は9.4万人と増加にてんじています。名古屋圏は、2000年代前半は人口流入がプラスでしたが、リーマンショック以降は概ね人口流出傾向が続いており、その傾向が加速しつつあります。大阪圏は、2000年代から人口流出が続いていましたが、2011-2012年で人口流入がプラスに転じたものの、以降は人口流出傾向が続いていますが、徐々にプラスに近づきつつある傾向となっています。

次に都道府県別の転入超過数を見てみます。2022年の転入超過(人口流入)は、東京都が最も大きく3.8万人、次いで神奈川県(2.8万人)、埼玉県(2.5万人)、千葉県(0.9万人)と続きます。東京都は2021年に0.5万人の人口流入でしたので、大きく増加に転じていることが分かります。22年の転出超過を見ると、最も流出数が大きいのは広島県で0.9万人、次いで愛知県(0.8万人)、福島県(0.7万人)、新潟県(0.6万人)と続きます。

政令指定都市の転入超過数を見ると、最も大きいのは東京都特別区部(23区)で2.1万人となっています。次いで、さいたま市(0.93万人)、大阪市(0.91万人)、札幌市(0.89万人)と続きます。東京都は2021年に1.5万人の転出超過(人口流出)でしたので、大きく転換していることが分かります。

22年の転出超過の政令指定都市を見ると最も大きいのは、神戸市の0.32万人で、次いで広島市(0.25万人)、北九州市(0.25万人)、岡山市(0.25万人)と続きます。

こうしてみると、確かに東京圏への人口流入、特に東京への人口流入が再び増加傾向に転じていることが分かります。また、大阪圏では大阪府・大阪市が人口を吸引し、その周辺の兵庫県・神戸市が流出超過となっており、大阪圏の中でも大阪市の吸引力が高まっていることが分かります。名古屋圏でみると、一番中心となるはずの愛知県・名古屋市が人口流出となっており、この名古屋圏全体の人口吸引力が弱まっていることが分かります。

リモートワークが定着すると、通勤が不要になり大都市・都心部に住む必要が無くなり郊外・地方への移住、人口移動が進むのではないかと指摘されていましたが、2022年はその傾向が止まったように見えます。一方、NTTがグループ会社約3万人について済む場所の制限をなくすなどの方針を掲げており、リモートワークを推奨する企業も増えています。

コロナ過・リモートワークといった地方移住を増やすチャンスを、地方が取り込めていないのだとしたら、なぜ人口を吸引できずに流出が加速するのか、しっかりと原因を解明していく必要がありそうです。そこに何らかの事業機会があるかもしれませんね。

出典:
住民基本台帳人口移動報告 2022年(令和4年)結果
人口、東京集中が再加速 昨年3.8万人転入超