業界ウォッチ 2022年2月8日

【データから読み解く】「推し活」市場動向

今回は「推し活市場動向」を取り上げてご紹介いたします。

2020年頃から「推し」や「推し活」という言葉を聞くことが多くなりました。20年に「推し、燃ゆ」(宇佐見りん著)が芥川賞を受賞することで「推し」という言葉への注目が集まりましたが、Z世代(概ね1990年代~2010年代初頭までに生まれた世代)を中心に「推し活」、「推し消費」が活発になっているようです。

「推し活」とは、アイドルや漫画・アニメキャラクターなどの自分が一番のお気に入りである「推し」を、応援し、周囲に広める活動(消費を含む)を指しています。数年前までは「萌え」や「オタク」消費と分類されていましたが、20年ごろから若い女性が中心となった活動となり「推し活」と称されるようになりました。

それでは、「推し活」には、Z世代でどのくらいの人が関心を持っているのでしょうか。「推し活」はどのような分野・ジャンルで行われているのでしょうか。「推し活」の市場規模はどの位で、どのように推移しているのでしょうか。
実際に数字を見て確認したいと思います。

推し活市場動向

まず、Z世代の「推し活」の関心状況を見てみます。既に「推し活」をしている人は35.6%で、「推し活」をしてみたいと思っている人は11.5%、「推し活」に興味がある人は13.1%となっています。実際に「推し活」を実施している人から興味がある人までを含めると約6割が少なくとも、何らかの関心を持っているということが分かります。

また、Z世代が「推し活」をしているジャンルを見てみると、最も多かったのは「アイドル」で29.4%となっています。次いで多かったのは「アニメ」で25.6%、以降「音楽バンド・グループ」(19.1%)、「ゲーム」(15.2%)、「漫画」(14.0%)、「K-POP」(12.5%)と続きます。

次に、市場規模を見てみます。矢野経済研究所が「オタク」市場規模に関する調査を行っているため、ここから「オタク」市場の分野別市場規模、推移を見てみます。

2021年度(予測)で、最も大きい分野は「アニメ」で2800億円となっています。次いで大きい分野は「アイドル」で1500億円、以降「同人誌」(800億円)、「プラモデル」(450億円)、「フィギュア」(330億円)と続きます。

矢野経済研究所では、上記5分野の他に「コスプレ衣装」、「プロレス」、「鉄道模型」、「ドール」、「メイドコスプレ関連サービス」、「ボーカロイド」、「トイガン」、「サバイバルゲーム」といった分野の市場規模も算定しており、13分野合計では6840億円(21年度)となっています。

ただし、13分野の大半は、どちらかというと「オタク」分野に近く、このうち「推し活」分野に近い「アイドル」、「アニメ」の合計で見ると4300億円(21年)の市場規模となっています。

各分野の市場規模推移をみると、「アニメ」は2017年度の2680億円から2019年度(3000億円)まで増加トレンドでしたが、新型コロナの影響で20年度に2750億円へと落込み、21年度に微増となっています。

「アイドル」は、2017年度の2150億円から19年度(2610億円)まで増加トレンドとなっていましたが、20年度には新型コロナで1400億円へと、約半分の規模にまで落ち込んでいます。21年は1500億円と再び増加トレンドに転じています。やはり「アイドル」市場は、新型コロナの影響でライブ・コンサート活動が制限されたことが、市場規模の落込みの大きな要因になっているものと考えられます。

ちなみに、ぴあ総研の「ライブ・エンターテイメント市場規模」では、19年(6295億円)から20年(1106億円)にかけて約80%の落込みとなっていることを考えると、「アイドル」市場は、ライブ活動以外の消費支出が多いものと考えられます。

また、矢野経済研究所「オタク」市場には表れていない、音楽バンド・グループ、K-POPや、2.5次元(2次元の漫画・アニメ・ゲームを原作とする3次元の舞台コンテンツ)といったジャンルがあることを考えると、「推し活」市場は「アイドル」、「アニメ」の合計4300億円よりも大きくなるものと考えられそうです。

更に、「推し活」は、既存の市場規模数以外に、同じ「推し」仲間との交流や、応援広告などに見られるような、新たな応援消費活動も行われているため、更に市場規模を押し上げるものと考えられます。

「推し活」「推し消費」は、分野横断的な市場・消費行動で今後も伸びることが予想されている領域であるため、新たな事業機会のヒントが多く見出す事が出来そうですね。

出典:
日経クロストレンド2022年1月13日「「推し活」Z世代の6割が興味、うち53%が「1万円以上使いたい」

矢野経済研究所プレスリリース「「オタク」市場に関する調査を実施(2021年)」

ぴあ総研「ライブ・エンタテインメント市場規模推移予測」